まくらたかさんのレビュー
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このユーザーのレビュー
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読書狂の冒険は終わらない!
三上延, 倉田英之 / 集英社新書
マニア同士の会話は、楽しい。そして「本」はおもしろい。
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まえがきにも書いてあるのですが、この本は「王道のブックガイド」ではありません。
本好き同士が、それぞれに読んできた本や気に入っている本について話し合っているものです。
なので、話題にあがる本の中には多…くの人が見向きもしないような、絶対に売れないような本もあります。
しかし、それがおもしろい。
名作やベストセラーなんかは自ずと目に入ってくるので何となく知っているものですが、そういったマニアックな本というものはこのような機会でもないと知ることができません。
素直に「本の世界って深いなぁ……」と感嘆することしきり。
またそれらの本について話し合う様が楽しそうで、こちらまで楽しい気持ちになってくる。
自分が知らない作家や本についての話でも、読んでいて楽しい気持ちになってしまうので、本好き同士の話しというのはスゴいものだなぁと思います。
電子書籍の書店レビューに書くことではないのかも知れませんが、この本を読んでいると、
「やっぱり電子書籍じゃなくて、紙の本を買おうかなぁ」
という気持ちになってきます。
電子書籍には電子書籍の良さがあって、私はいろいろ思案した挙げ句電子書籍に移行したのですが、お二人の話を聞いているとやはり紙には紙の良さがあって、
古本には古本の良さがあって、
そして町の本屋さんには町の本屋さんの良さがあるのだと思わされます。
この本を読んで、私は自分が気がついていなかった「本のおもしろさ」というものを知りました。
「本」が好きな人なら、読んで損はない本だと思います。 続きを読む投稿日:2016.03.15
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おかあさんの扉
伊藤理佐 / オレンジページ
比類なき育児エッセイマンガ
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マンガ家の伊藤理佐さん。
同業の吉田戦車さんとご結婚されて、晴れて40歳でご出産されました。
この作品は、伊藤さん吉田さんご夫妻の、一筋縄ではいかない育児四コママンガです。
なんと言うか、大変なんでし…ょうが、その大変さを伊藤さん流の笑いに変えてるところが素直におもしろいです。
もちろん育児が中心なのですが、それ抜きにしても伊藤さんと吉田さんと、周りのひとたちがおもしろい気がします。
子育て経験者も、未経験者も分け隔てなく楽しめる作品だと思います。 続きを読む投稿日:2016.02.23
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Spotted Flower 1巻
木尾士目 / 楽園
ある意味、憧れの夫婦生活。
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オタクなダンナと、そうじゃない奥さん。
奥さんは現在、妊娠中。
安定期に入って「夜の生活」も大丈夫なのだけど、ダンナさん、妊娠発覚以来1回も手を出してこない。
そのことがどうにも気になる奥さん。
あの…手(コスプレ)この手(ダンナさんがプレイ中のアダルトゲームに便乗する)で何とかそういう方向に持って行こうとするのだが、はたして……。
そんな感じの作品です。
「オタクあるある」と「妊娠中あるある」の両軸で進む、大人のラブコメかと。
ダンナさんをその気にさせようとする、奥さんの頑張りがかわいらしくて仕方ありません。 続きを読む投稿日:2016.02.24
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いとしのムーコこどもばん【むりょうばーじょん】
みずしな孝之 / イブニング
こどもががよめるって、だいじです。
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テレビアニメも放映されてるので、原作の漫画に小さいお子さんも興味を持つかと思います。
けれど原作は、ムーコの台詞以外(人間の台詞)は普通に漢字で表記されてるんですよね(振り仮名もない)。
何となく雰囲…気で分かるものの、やっぱり全部読めた方が楽しいに決まってる。
なので、この「こどもばん」はよい試みかと思います。
でもまぁ、一番よいのは、元の作品の方に全部振り仮名を付けてくれることだとは思うのですが。 続きを読む投稿日:2016.03.06
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櫻子さんの足下には死体が埋まっている 骨と石榴と夏休み
太田紫織 / 角川文庫
私は彼女のことを、誤解していたのかも知れない。
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前巻を読んだときには、正直「九条櫻子」さんについて、好きになれそうにないなと思った。
わがままで、自分勝手。
僕こと「館脇正太郎」くんの迷惑省みず。
(骨やご遺体に関する趣味については、まぁ、ちょっと…いいなあと思うけど。)
美人なのかも知れないけど、「ちょっとなぁ……」というのが正直な感想だった。
だった、のだが、この巻に収録されている「第壱骨 夏に眠る骨」「第弐骨 あなたのおうちはどこですか」を読んで、少し、彼女に対する見方が変わった。
意外と優しく、熱い。
特に第弐骨、意識のない者に対する彼女の呼びかけは、胸を打つ。
その場にいたら、涙をこぼしてしまっていたのではないかと思うほどだ。
彼女はただ単に、死体を愛するだけの変人(?)ではなかった。
「僕」と一緒で、今まで私は、彼女のことを少し誤解していたようだ。
この巻を読んで、快い方向で、誤解が解けた。
誤解したままで終わらずによかった。
彼女たちのことをもっとよく知るために、もう少し、この物語に付き合ってみようと思う。 続きを読む投稿日:2013.11.07
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アンモラル・カスタマイズZ
カレー沢薫 / 太田出版
まさかの「文化庁メディア芸術祭マンガ部門審査委員会推薦作品」! ……なんでだ?
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この作家さんの作品の中では、最も「一般向け」な作品です。
女性ファッション誌を創刊することになった、「グリズリー出版」。
しかし会社には男性しかおらず、女性誌のことなんかとんと分からない。
仕方なく他…誌を研究しつつ出版するが、売り上げが伸びない。
やはり女性誌なのだから、女性がいないとだめだ。
男性だらけの出版社に、紅一点の女性が加わり、さて雑誌の売り上げはどうなることやら……。
ざっくりとストーリーを紹介すると、なんだかテレビドラマにもなりそうな感じです。
しかし、そこはさすがのカレー沢薫氏。一筋縄ではいきません。
ちまたに溢れかえる「女子力」や「モテ」などの風潮を、独自の言い回しでバッサリ。
そのストレートな物言いは、当事者である女性も、「女性って大変だなぁ」と他人事のようにぼんやり思っている男性も、激しく同意してしまうこと請け合いです。
世の中の「美人至上主義」「恋愛至上主義」を厳しく激しく皮肉りつつも、それに惑わされざるを得ない「女性の業」を一刀両断した本作は、自分自身を「ブス」と自覚し苦悩してきた女性作家・カレー沢薫さんだからこそ描ける作品。
個人的には、女性誌の読者である20代30代の女性は必読だと思いますが、「気がつかなければよかった……」と思うようなことも多数描かれているので、寧ろ最も読んじゃいけないのかも知れません。
「彼女が流行に敏感で、おしゃれで困ってる」という男性は、買って彼女にプレゼントしてみては如何でしょうか(自己責任でお願いします)。 続きを読む投稿日:2016.06.05