さとみさんのレビュー
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アトム ザ・ビギニング2(ヒーローズコミックス)
手塚治虫, ゆうきまさみ, カサハラテツロー, 手塚眞 / 月刊ヒーローズ
ロボットの声は、聞こえた方が良いのか
3
前回から引き続き、ロボットレスリング決勝戦で戦うA106。
以前、日常生活中に襲われた経緯から、A106は襲ってきた理由を、戦いながら対戦相手のマルスに問い続けます。しかし、返答はなし。遂には、物理…的に追い詰められてしまいます。
絶対絶命か、と思われたところでA106がポツリ。ロボットにしか分からない発信で言ったのが「ひとりぼっちのまま、壊れてしまうんだな」。その呟きは、まるで人間。
伝馬さんもお茶の水さんもA106の自我システムはできそこないだから、感情もない、と思っています。が、以上のことから分かるのは、A106のAIは人間に近いレベルまで成長しているということ。
ストーリーの後半では、襲ってくるロボットと戦いながら、うれしいのか、悲しいのか、A106自身も自分の感情に戸惑いを覚えるようになる場面も。
科学に何を求めるか。人間と同じように動く、人間の代わりを求めていくのであれば、「感情を持たせること」はキーワードとなる。でも、それなら、人間とロボットとの区切りはどこに作るか。
ロボットの心の声が表面に出てきたときに、この問題も表面化するはずです。ロボットに心を持たせる、それは好奇心的にはくすぐられるところですが、科学の倫理としてはやるべきではないのかもしれない。ロボットの声は、多分聞こえない方が良い。そう思いました。
ぜひ、A106の切ない声を、この巻で聞いてほしいと思います。 続きを読む投稿日:2016.12.12
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アトム ザ・ビギニング1(ヒーローズコミックス)
手塚治虫, ゆうきまさみ, カサハラテツロー, 手塚眞 / 月刊ヒーローズ
彼のコンセプトは「心やさしき科学の子」
3
知っている度合いは違えど、誰もが知っているロボット「鉄腕アトム」。この作品では、その「アトム」が生まれるまでの道のりを、生みの親・天馬博士、育ての親・お茶の水博士の学生時代とともに描いています。
え…、手塚治虫さんは亡くなってるのに誰が作ってるの?と、私は思いましたが、企画監修にあたっているのが、ビジュアリストとして映画監督、映像クリエイターを務める手塚眞さん。手塚治虫さんの息子さんです。視点を変えて、親子二世代で物語を紡いでいく、おもしろい企画と感じました。
目に見えてロボット作りの才能をもつ天馬くんと、地味に見えて良い気付きが強みのお茶の水くん。二人は、日々人工知能を持つロボットA106の開発に励みます。
それは、まだ、人工知能を搭載したロボットが登場したばかりの頃のこと。機械に人の仕事を任せるなんて……と思う人もいる世の中で、二人は自分たちの作る「人の気持ちを分かる、心を持つロボット」をいろいろなところで試します。
仕事をさせる、ロボットレスリングという格闘大会に出してみる。A106はどう動くのか、何を思うのか。
読みすすめながら、こちらもロボットの作り手の気持ちになってみてしまう。所々で、私たちのアトム像にリンクする部分も出てきて、ノスタルジックな部分も持ち合わせた話です。(時間軸的には、こちらの方が昔の話になりますが)
ここから、どうA106が生まれ変わっていくのか、仲良し2人の関係はどう変わっていくのか(アトムでは、二人は敵対しています)。続きが楽しみな1巻でした。 続きを読む投稿日:2016.11.13
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聲の形(1)
大今良時 / 週刊少年マガジン
いじめられっ子と、いじめっ子に、救いはあるか。
3
好奇心のおもむくままに、日々を楽しくすごしていた主人公、将也。
それは、他人、例えば母が営む美容院に来客する大人から見れば、ただ小学生らしく遊んでいる子どもだ。しかし、その内実、友だちが嫌がる川の飛び…込みをしたり、ナメクジに塩をかけたり、遊び方はちょっと残酷。
それが耳の聞こえない転校生、西宮硝子が来たことで、遊びの対象が「西宮硝子」になってしまい、結果、いじめとなってしまう。いじめを擁護するわけではないが、きっと、「苦しめたい」と思ったわけではなかった。ただ、「これはどうだ!」「じゃぁこれは?」といった遊びが、人を苦しめ、いじめになっていた。彼には、自分がされたらどう思うか、という思いやりが欠けていたのだ。
先生は叱り、親による損額の実費支払い(将也は硝子の補聴器も壊した)、謝罪が行われる。そして、いじめの対象は自分自身になって返ってくる。小学生だって、ただ子どもじゃない。そこには、大人と同じように人間関係があり、闇がある。
ここまでは、当事者だったか、傍から見ていたかの違いはあれど、多くの人に経験がある「苦い思い出」(または現在進行系?)ではないか。主人公は以後、いじめっ子のレッテルを貼られたまま、高校生まで成長する。
いじめが返ってきた後、この物語では主人公が贖罪の生き方を選んでいる。バイトをして、母に損額金を返す。手話を勉強し、硝子に会いに行く。これが、この巻のラストシーンだが、私はここにきて初めて、この話の続きに興味を持った。
いじめがニュースとして日々取り上げられているが、いじめる側、いじめられる側との間で、一体どれだけ本当に和解がされているか。形式的な解決だけで終わっていないか。
そういった意味で、まだ続きは読んでいないのだが、この続きが重要だと思ったのだ。
ぜひ、続きも読んでみたい。 続きを読む投稿日:2016.09.25
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脳に悪い7つの習慣
林成之 / 幻冬舎新書
取り入れることから生まれる、独創性
2
この本で言われている、脳に良い生き方というのは、世の中に興味・関心を持ち、積極的に生きるということである。そうすることによって、脳の性質である統一性、一貫性を持たせようという能力が、記憶力や理解力を高…めるのだという。そして、多くの意見を取り入れることで、独創性が生まれる。
とても不思議だと思った。統一というとと、独創ということは対になるものだ、と考えていたからだ。
しかし、多くの意見、つまり要素を取り入れることで、幅が広がり独創的なものが生まれる、といういい分も理解できる。これは不思議な現象だ。
また、この本の読後、改めて本のタイトルを見てみる。なるほど、と思う。
興味を持ってもらうことの重要さを知っていたからこそ、あえて「悪い7つの習慣」だったのだ。
本の中には「~した方がよい」という風な表現の方が多かったように思う。うん、彼は心をはかるのが上手い。 続きを読む投稿日:2016.09.26
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アトム ザ・ビギニング3(ヒーローズコミックス)
手塚治虫, ゆうきまさみ, カサハラテツロー, 手塚眞 / 月刊ヒーローズ
「学習する」ロボット
2
この話が進む5年前のこと。
日本では、未曾有の大災害が起こっていた。
各地で発生した爆発災害。一晩で、死者は数万とも数十万とも言われたという。
しかし、この災害には不思議な点がある。それは、政府が調…査隊を出したにも関わらず、一切その結果が報告されなかったのだ。その秘密が隠された島を調べてしまったがために、謎の集団に追われるようになってしまった、天馬くんとお茶の水くん。1巻から小出しにされていた大きな事件が一気に存在感を出していく。
その一方で、天馬くんとお茶の水くんの方向性の違いは溝を深めていく。天馬くんが目指すロボットは、「自分で瞬時に判断までくだせる、人間を超越した、神のような存在」。お茶の水くんが目指すのは「心を持った、優しい友達」。
二人の思いがある中で、A106は壊れたロボットを自分と接続し、そのデータを自分の中に取り込んで知識を増やすという芸当を行ってしまう。
知識を増やす方法は、天馬くんたちから教えてもらったものだが、自分でそれを行ったのである。
人工知能を持つロボットは自分で学習する。これは、おそらく私たちにとっても身近なことだと思う。予測変換が出る、自分好みの商品を勧めてくる……。画面の中でなら便利だが、実際に動きを伴う、決定を伴う、と現実世界に影響を持ち始めたら、それはお茶の水くんの言うとおり、確かに不気味なのかもしれない。予測不能なものに対して人間は恐怖を覚えるものだし、天馬くんがいうレベルのロボットができれば、人間が制御できなくなることだってありえるかもしれないのだ。
こう考えると、アトムレベルまではいかずとも、現実世界でも「人間の代わりになる」ロボットは研究開発が進められているはずだ。それらは、どういう方針が立てられているのだろう、と少し気になってくる。
そんな私に、まずは今までの人工知能の歴史から知ろうね、と言わんばかりに分かりやすい変遷の付録が巻末に付いていた。
ますます楽しい……が、不安も渦巻いてくる3巻です。 続きを読む投稿日:2017.01.09
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ふつつかな父娘ではありますが(1)
長神 / シルフコミックス
ツンデレな父(?)が胸キュンポイント?
1
親戚に邪険にされながらも暮らしていた主人公が、ある日突然、財閥の息子と養子縁組を組まれ、親子(父と娘)の関係になってしまった、という話。
父・桐生馨は、当初なかなか心を開いてくれず、つれない態度をと…りますが、徐々に主人公に心を許すようになります。彼は、財閥の中で親戚の権力争いに揉まれて生きてきたからか、親密な関係での人付き合いが下手なところがあり、ツンツンした態度を多々とってしまいます。
本当は、主人公のことを思った、愛情を伴った行動なのに、正しく伝わらない、馨……! そう、この話は、主人公を通して見る、馨さんの変化を楽しむ話だと思うのです。
また、表紙のとおり父と娘と言っていいのか、という二人の雰囲気。今後二人の関係がどう変化していくのかも、楽しみなところです。 続きを読む投稿日:2016.07.01