本屋のない人生なんて
三宅玲子(著)
/光文社
作品情報
出版不況と言われて久しいものの、「本」という形態のメディアは決して不要となったわけではない。しかし、ネット書店で本を取り寄せる習慣は私たちの生活に定着し、本を「買う」場所は激変した。商店街のちいさな書店はもはや当たり前の風景ではなくなっている。しかし、それでも新しい「本屋」を開く店主たちがいる。いま、なぜ本屋なのか――。北海道から九州まで。全国の気骨ある書店を訪ね歩いたノンフィクション。
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商品情報
- シリーズ
- 本屋のない人生なんて
- 著者
- 三宅玲子
- ジャンル
- 教養 - ノンフィクション・ドキュメンタリー
- 出版社
- 光文社
- 書籍発売日
- 2024.03.30
- Reader Store発売日
- 2024.03.21
- ファイルサイズ
- 7.4MB
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この作品のレビュー
平均 3.0 (5件のレビュー)
-
本屋さん大好き、こんなステキな書店があるよ!っていう本とはちょっと違って、有名書店などの経営者や関係者の半生、書店のあり方や経営について取材したものだった。
著者の方はすごく書店と本が好きなんだと思う…。
多分、お客さんとして読むのと、出版社の人が読むのと、書店員が読むのとで、かなり受け取り方が違いそう。
この本の感想というより、出版業界へのグチが入ってるかも…?
私は書店員として読んだので、店主の方々が生活のほぼすべてを本に費やしているからこそ成り立っていることに、逆に書店の経営の厳しさを感じてしまう。
選書のために本を読むことはまあ趣味だしいいとしても、結局いろんなことが、本が好きな人に喜んでほしいっていうボランティア精神からきてて、好きなことを仕事にするっていうのはそういうことなのかもしれないけど、成功例として出してほしくないかも…。(それにこの中には結局今は閉店した書店もある。)
書店はどこも経営が厳しくなっていく一方だから、どんどんスタッフの数は減っていて、それなのに残業禁止など働ける時間も削られていっている。
だから私も、本の内容を確認したりおすすめ文を書いたりPOPを作ったり、したいことほど、時間を気にしなくてすむように退勤後にしている。(もちろん製作費なども自腹。これらは勤務書店に負担をかけたくないからでもある)
多分有名書店員さんのほとんどは、時給制なのに時給の発生しないところでお店を作っている。
あと、芸術書などは特に、おすすめな本ほどお客さんに中をみてほしいけど、お客さんが思いっきり開いたり片手で持って読みあとをつけたりして本が傷むと、その本は売れなくなるという葛藤がある。
心からいいと思える本を選んで買い切りで仕入れる、それをまるで書店のプライドのように言われると、その前に、お客さんが本を消耗品のように扱うという問題があるのに、そうやって汚損されたらその損害はすべて書店が被るのに、書店側の心意気だけの問題じゃないからモヤっとする。
お店の本を(というか多分そういう人は自分の本でも気にしないんだろうけど)あんなに雑に扱う人がいると思わなかったな…。
とにかく、今やずっと安泰なんていえる書店はないし、本を売る方法うんぬんより、本だけを扱っていては経営が成り立たない、本の利益率の低さがそもそも問題なのじゃないか…?続きを読む投稿日:2024.03.21
ううむ、思っていたのと違う…というのがいちばんの印象。確かに本屋さんのお話なんだけど、少し変わった本屋さん(というか店長さん)が各方面で挑戦するお話だった。たしかに【本屋のない】(本のないじゃない)だ…もんな、と少し納得したり。あまりにも退屈なお話が多くて、途中で読むのを諦めようかと思ったけど、我慢して読んだ…ドキュメンタリーを見てる感じで、ドキュメンタリー苦手人間からしたら少し辛い読書体験だった。
p.39 有吉佐和子『恍惚の人』
p.62 五所純子『薬を食う女たち』
p.113 シャワー効果って知っていますか?と、友則はこんな話をしてくれた。昭和の頃、書店はテナントとして人気の業種で、例えばデパートでは上階に書店を誘致することが多かった。
来店客の足はまず書店のあるフロアへ向かい、上階から下階へと下りていく。シャワーのように階下に向かって客足が広がっていくことなのだという。
「書店業界には、書店は文化の知りだから特別扱いしてほしいという人たちがいます。僕はそれはおかしなことだと思っています。書店だって他の小売業と同じですよ。でも、書店がなくなると、地域への打撃は大きいです。何より、地域の文化の質が変わります」
p.322
「本を読むことで人は他者と距離をとることができる」と言ったのは渡辺だった。親や自分きまえ飯騰をおいて他者として見ることによって、人は精神が大人になる。自分を客観的に見て自分を愛することができるようになる。田尻は本を読み続けることで自身や置かれた環境を距離をとって見る術を身につけたのではないか。
痛みを知る田尻は、弱い立場に置かれた人や傷を負った人を察知し、その人が求めれば、黙って本を差し出し、泣きたい人には窓際の席を案内する。
p.324 やはり渡辺は才能を発見する名人だ。
理不尽な人生を自分の思うように生きようとするとき、本は力になる。ただし特効薬ではない。読み続け、考え続けていった時間の経過が、その人の人生を支えている。そのことが、あるときわかるのではないかと思う。
田尻は自身が読むに値すると思えた本と読みたい本だけを橙書店に並べている。小さな声で書かれた本と声の小さな人の側に立った本ばかりだ。
p.336 あとがきより
ひとりで本と向き合うために、書店はなくてはならない場所だ。言わずもがなのこのことについて、骨の折れるテーマの取材をしていると身に沁みる思いがしている。事実を明らかにしづらい取材では最後は書き手が責任をとって見たものを検証して書かなくてはならない。
自分を追い込み、たったひとりだと思わされるとき、それでも突き進むための背骨を支えてくれる、そして、具体的な知恵や手法が頼みになる、それが本だ。長い年月を通して読まれてきた本や、長い時間をかけて書かれ、編まれた本には、肚の力をつけるためのヒントが折り重なるように詰め込まれている。そしてなにより、先人や仲間がいるという安らぎを感じさせてくれる。
いうまでもなく、人はひとりで生まれてきてひとりで死んでいく。横並びの平均値ではなくいろんなひとりひとりがいるのを認めるのが民主主義だとすれば、私たちの暮らす世の中にはたくさんの歪みがある。その歪みを声を小さくされた人の立場から教えてくれる本を取り揃えて待っている、そんな書店ばかりを取材した三年だった。
取材した十一の書店には民主主義の手触りが確かにあった。ひとりである自分を肯定し力づけてくれる、それが書店という場所だと思う。
続きを読む投稿日:2024.04.19
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