春休みに出会った探偵は
大崎梢(著)
/光文社
作品情報
中学2年生の花南子は、父親の海外勤務によって春休みから一人暮らしを始める。その場所は曾祖母の五月さんが経営するアパート「さつきハイツ」。その矢先、五月さんがぎっくり腰で入院、心細い花南子のもとに宛先不明の謎の封書が届く。同級生男子とともにその謎を調べ始める花南子だが、偶然出会った“名探偵”の存在が、花南子の生活を大きく動かし始める・・・・・・。ちょっぴり切なくて、心にしみる極上の読後感をお約束します。
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商品情報
- シリーズ
- 春休みに出会った探偵は
- 著者
- 大崎梢
- ジャンル
- 小説 - ミステリー・サスペンス・ハードボイルド
- 出版社
- 光文社
- 書籍発売日
- 2024.03.30
- Reader Store発売日
- 2024.03.21
- ファイルサイズ
- 0.3MB
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この作品のレビュー
平均 3.0 (8件のレビュー)
-
ふんわり柔らかな感じのハートフルなミステリーをよく書く大崎梢さんの作品だから、今回もそんな感じかと思ったが、最後に「えーっ!」ってなった。
そんな展開にしなくてもいいのに…。そのままな感じで終わらせ…ればよかったのに…。時代に合わせたのか。
一般書というよりはYA向けかな。続きを読む投稿日:2024.04.25
p.267 あのとき今津さんは、「君たちの言う帰れるところって、いつでも子どもに戻れて、優しい親が待っている家なんだろうね。心配しなくていい。ほとんどの人が持っていないから。家があったとしても寛容な…場所とは限らない。灼熱の砂漠とか酷寒の荒野かもよ」と言った。
今津さんがお母さんの弟ならば、「寛容な場所とは限らない」とは、北海道の自分の家を指しているのだろうか。そこはお母さんの実家でもある。
灼熱の砂漠や酷寒の荒野を魔えにするような、とても居心地の悪いところだとしたら、お母さんは離婚した後、どうしていたのだろう。
p.270 がとても難しい。
「うまくしゃべれなくて。今何か言ったら、ひどいことを言いそう。自分で自分がすごく嫌いになりそうな、ひどい言葉。だから何も言えなくて」
「無理して言わなくてもいい。取り繕った上辺だけの言葉を聞かされる方がしんどい」
「そうかな」
「そうだよ」
「でも、いつまでも黙ったままじゃいられないでしょ。今にもこぼれそうな縁まで盛り上がったコップの水を、手に持って歩いている気分」
根尾は橋の欄干から流れゆく水面をじっと見つめ、しばらくしてから言った。
「コップを大きくすればいい」
「どうやって」
「安住さんも勉強しなよ。いろんなことを学んで、本を読んだり人と会ったりしていると、たぶんコップは大きくなるんだ。飛んでも跳ねても水はこぼれなくなる」花南子は欄干の上に自分の両手を出した。重ねた左右の指の間に、小さなガラスのコップが見えるような気がする。受け止め切れない、もしかしたらの現実が、なみなみと注がれている。
ニュースや漫画などの創作物でしか見たことのない身体的特徴、それについて自分は偏見は持ちたくないと思っていたし、そういう人がいても分け隔てなく接するつもりだった。心ない言葉を投げつけるような人間を嫌い、つねに公平でありたかった。
思うのと実際の行動はたぶんちがう。心もちがう。他人事と自分事でも大きくちがう。
今の自分は小さな小さなコップしか持たず、今すぐ川面に叩きつけたい衝動をこらえるのがやっと
だ。
「安住さん、おれたちまだ十五歳だよ。変われる余地だけは山ほどあるよ。少なくともおれは、春休みの前と後ではずいぶん変わった。来年の春休みまでにはもっと変わっているかもしれない。今がすべてじゃないよ」
「私も変われる?変われば・・・・・・」
今津さんのことをもっとちゃんと考えられるようになるだろうか。
春休みになるまで、今津さんとは口を利いたこともなかった。一•二号室に引っ越してすぐ五月さんが入院してしまい、直井さんの件で初めて関わりを持った。そのあと庭先に不審者が現れたので花南子が不安を訴え、解決に一役買ってもらった。川端さんのときは中学生コンビを危ぶんで、今津さんの方から事件の詳細を調べてくれた。
もしかしたら向こうからすると、予定外に近づきすぎたのかもしれない。それで五月さんが退院してすぐアパートを出た。そっと静かに離れていくつもりだったのに、火事が起きて危険な部屋に飛び込まざるをえなくなった。花南子と呼びかけ、母親について話してしまった。その直後から行方がわからない。
今津カホルという名前を使っていたわりに、徹底して関わりを避けていたのは、正体を知られたら娘は母親を失うとわかっていたからか。
娘。あの人にとって自分はどういう存在だったのだろう。
自分は母親をなくすのだろうか。
p.272 花南子はあきれたり笑ったりして、重ねていた左右の指をぱっと開いた。イメージの中のガラスのコップは川面に落ちることなく、放たれた鳥のように羽ばたいていく。
いつか両手で、父親ではないもうひとりの親を掴めるだろうか。南に咲く花のように強くたくましくなって。
自分はなくさない。自分の中の大切なものを。続きを読む投稿日:2024.05.17
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