諸葛亮 <上>
宮城谷昌光(著)
/日本経済新聞出版
作品情報
ずいぶん『三国志』について書いてきた。だが、そこに登場するひとりを選んで、大きな構想に移植するのは、これが最初であり、最後となろう。そのひとりとは、諸葛亮以外に考えられなかった――(日本経済新聞連載開始にあたっての「作者の言葉」より)
大河小説『三国志』全12巻完結からはや10年。この「作者の言葉」に、宮城谷作品ファンのみならず、日本中の歴史小説愛好家が期待をふくらませているに違いない。
「三国志」にはあまたの個性的な名将、名臣が登場するが、日本で最も名を知られるのが諸葛亮(孔明)であろう。冒頭の「作者の言葉」はこう続いている。
――かれの人気は、おそらく劉備や関羽などをしのいでおり、たぶんどれほど時代がかわっても、最高でありつづけるにちがいない。通俗小説である『三国志演義』が、諸葛亮を万能人間、いわば超人にまつりあげてしまったせいでもあるが、そういう虚の部分ををいでも、多くの人々の憧憬になりうる人物である――
「三顧の礼」「水魚の交わり」「出師表」「泣いて馬謖を斬る」「死せる諸葛、生ける仲達を走らす」といった名言・名句はそのままに、諸葛亮の実像に迫ろうとするこの作品の冒頭はこのように始まる。
――春を迎えて八歳になった。かれは景観から音楽を感じるという感性を備えている――
乱世に生きながら清新さ、誠実さを失わない、今まで見たことのない諸葛亮がここにいる。
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商品情報
- シリーズ
- 諸葛亮 <上>
- 著者
- 宮城谷昌光
- 出版社
- 日経BP
- 掲載誌・レーベル
- 日本経済新聞出版
- 書籍発売日
- 2023.10.20
- Reader Store発売日
- 2023.10.20
- ファイルサイズ
- 1.2MB
- ページ数
- 328ページ
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この作品のレビュー
平均 3.7 (9件のレビュー)
-
中国後漢〜三国時代。世は乱れ、群雄が割拠し覇を競っていた。
これは、群雄の1人、劉備に仕えて蜀漢建国に尽力し、三国鼎立実現の立役者となった諸葛亮の生涯を描いた伝記ロマン作品である。
なお…上巻で描かれるのは、父と兄に薫陶を受けた8歳頃から劉備の軍師として主君の益州入りを整える 30 歳頃までの諸葛亮である。
◇
亮は落日を見ていた。いつにも増して大きく美しい日がゆっくり沈みゆくさまに典麗な音楽を感じつつ佇んでいると、朱色の光の中に現れた黒い影が近づいてくるのが見えた。兄の瑾だ。
瑾は、学問をしに洛陽に行くことになりそうだと亮に告げた。張りのある声からは意欲と希望が溢れている。
亮より7歳上の瑾は今年15歳になり、志学の年齢を迎えた。父の珪も昨年から長男の留学についていろいろ考えていたようだが、兄に洛陽留学を勧めたのは叔父の玄だと亮は気づいた。瑾は現在、叔父に学問の手ほどきを受けている。
いよいよ瑾の出立の日。遠ざかる兄の姿を見送りながら亮は、自らの旅立ちの日を想像してみるのだった。
諸葛家の期待を背負い、瑾は洛陽で勉学に励んでいた。真面目で物堅い性格の瑾にとって、花の都での日々は充実したものになるはずだったが、翌年この都で一大事が起こった。きっかけは霊帝の急な崩御だった。(第1話「旅立ち」) 全15話。
* * * * *
宮城谷昌光さんの清冽な文章が好きで、三国志のファンでもあるため、ワクワクしながら上巻を読みました。
宮城谷さんは、『三国志』同様に、この『諸葛亮』についても正史を紐解くことで筆を起こしているため、『三国志演義』主体の吉川英治『三国志』のような派手さはありません。
だから、豪傑たちの超人的な活躍も名軍師たちの神懸かり的な深謀遠慮も出てこないのです。
それだけに却って、「三顧の礼」や「水魚の交わり」といった故事成語を生み出したエピソードにはリアリティを感じましたし、孔明が農業に高い関心を寄せる描写も納得いくものでした。
最も印象的だったのは、孔明が劉備軍について、腹心の斉方に語ったことばです。
「武功を誇らない家臣団」と「功を上げた者を激賞しない主君」という劉備軍の奇妙さについて尋ねた斉方に、孔明は次のように説明します。
劉備軍は、「主従関係」というよりも、「親子・兄弟の関係」が発展したものなのだと。
つまり、「御恩と奉公」のような論功行賞で結びつく関係ではなく、全員が一丸となって家長を支え家の繁栄に尽くす家族の絆で結ばれている関係。それが劉備軍であるというのが、孔明の見解なのでした。
確かに、劉備と関羽・張飛の関係は義兄弟だし、糜竺は劉備にとって「金持ちのじいちゃん」のような間柄だし、孫乾は劉備の面倒を細々と見てくれるおじさんのようだし、後に加わった趙雲や孔明も劉備の甥っ子のような身近な存在になっています。
領土を持たぬ主君が一国一城の主になるまで支え続けた旗揚げメンバーには、自分が劉備を1人前にしてやるぞという強い思いがあったと、宮城谷さんは言いたかったのだと思います。
劉備の死後、声高に功を主張する家臣が増え、自身の扱いに不平不満を募らせる魏延のような輩が出てくるのを見ると劉備の偉大さがよくわかります。
少し残念だったのは、史実として残っている関羽千里行や張飛が長坂橋を大いに騒がしたエピソードが紹介されていなかったことでした。
孔明とは関係ないので省略されたのかも知れませんが、趙雲の阿斗君及び甘夫人救出については触れられているので、何か不公平な気がしました。
(つまらないグチです。ごめんなさい)続きを読む投稿日:2024.03.22
最近は漫画の主人公になる程、日本では
絶大の人気の諸葛亮孔明!
ただ、宮城谷さん作品の三国志では
厳しく書いていた印象だった。
しかし、この作者さんは作品によって
人物像が変わる場合もあるので少し…期待
したが、、、、
なんか愛が感じられない。
物語が淡々と進んでいる感じ。
下巻を読むか迷ってしまう。。。
続きを読む投稿日:2024.05.22
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