この作品のレビュー
平均 3.0 (1件のレビュー)
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・河添房江「紫式部と王朝文化のモノを読み解く 唐物と源氏物語」(角川文庫)は書名そのままの書である。「本書では、紫式部が体験した王朝文化の世界を、特に唐物とよばれる異国のモノを通じて」 紹介するもので…ある。だから「源氏物語」からの引用が多くあり、更に「枕草子」等のさま ざまな王朝文学からの引用もある。本書の原題を「光源氏が愛した王朝ブランド品」といふ。 この書名からして、一般受けを ねらつた書であるらしい。それを内容に即して改題し、文庫化したのが本書なのであらう。第一章「紫式部の人生と唐物」に始まり、第十六章「舶来ペットの功罪」で終はる。最初だけは モノではなく人である。ここを読んだら、後は自由に適当に読めば良い。香から猫まである。実に様々である。紫式部の身の回りは唐物、今少し広く言ふと舶来品に取り囲まれてゐたのだと知れる。そんな書であるが、個人的にはかういふ文体と次を予告するやうな章の進め方には違和感を覚える。それを気にしながら読んでゐた。
・平安時代の唐物といつても私はほとんど知らない。ネコといつても、現在のネコと同じか違ふのか、ここから分からない。 すべてがさうである。第十五章 は「王朝の紙の使いみち」である。紙がなければ王朝文化がかうして残つてゐるのかと思ふのだが、しかし、その紙はいかなるモノでいかにして作られてゐたのか、つまり紙の使用以前の状況を私は知らない。使ふ人がゐれば作る人がゐる。平安時代は、「平城天皇の大同年間(八 〇六〜八一〇)は朝廷の製紙所である紙屋院(『かんやいん』とも)が、図書寮の別所として、紙屋川のほとりに設けられ、多くの紙が生産されてい」(238頁)たさうである。この先は書いてないが、しかし、どうやらこの時代にも紙屋院の紙が使はれてゐたらしい。「美しかった紙屋院の紙」(251頁)にその一端が見える。国産の紙が美しかつたのなら唐物の紙はどうであつたのか。唐の紙 とは「狭義の意味では、北宋から輸入された紋唐紙とか、具引 雲母刷紙とよばれる鮮やかな色 彩と雲母刷りが特徴の紙をさ」(242頁)すさうで、これは 「おもに竹を原料とした紙の表面に胡粉を塗り、さらに唐草や亀甲などの文様を刻んだ版木を用いて、雲母で型文様を摺り出した美しい紙で」(同前)あつた。こんなモノだから、「唐の紙の格調の高さ、そのフォーマル度は万能で(中略)まさに贅沢品であり、唐物らしい威信財(スティタス・シンボル)としての使われ方」(238頁)をされた。つまり、美しい写本にはこれが使はれてゐる。これ以外には高麗紙があり、これは「高句麗・新羅・百済の三国時代から、中国の諸王朝への朝貢品で」(248頁)あり、これも日本に輸入されてゐた。更に は地方製造の紙もあつといふから、貴族に紙の選択肢は結構あつたと思はれる。だからこそいくつもの写本が残り、その紙もその作品に合はせたりしてあつた。かういふことを私は知らなかつた。いろいろな紙の写本があるのは知つてゐたが、唐や高麗からの紙もあり、地方でも作つてゐたとはである。本書にはかういふのが多い。ガラスもある。私の知るガラスではあるが、さすがに現在とは違ふ。「『瑠璃壺』は唐物を代表する品で」(115頁)あつた。この頃、日本で作ることができたのはせいぜい「蜻蛉玉といわれるガラス玉」(同前)であつ た。かうしていたらきりがない。書きたいモノはいくつもある。といふより、知らないから皆書きたくなるのである。それではきりがない。「王朝ブランド品」は実に豊富であつたと最後に書いておく。その豊富さを眼前に見せてくれるのが本書である。おもしろいことはおもしろいが……。続きを読む投稿日:2023.12.16
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