コンテクスト・マネジメント~個を活かし、経営の質を高める~
野田智義(著)
/光文社
作品情報
組織とは、1人ではできないことを成し遂げるための装置であり、経営とは、人を通じてよりよいことを持続的になすことだ。では、人と組織の力を最大限に発揮するために、経営者リーダーが果たすべき役割とは何だろうか。ハーバードビジネススクールの経営政策プロセス学派は、その答えを、企業コンテクストのマネジメントに見出す。コンテクスト・マネジメントを切り口に、過去50年の欧米組織戦略論の知見を統合する渾身の一冊。
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この作品のレビュー
平均 4.0 (2件のレビュー)
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経営学のハウツー的な本ではなく、企業独自の制度などがなぜできたのかというプロセス(文脈)を追いかけ、本質的なナニカを語ろうとしている。
遠回しな表現が多いが、本質を掴みにいくための過程が重要であり仕方…ないのかも。例によって規模がめちゃくちゃでかく、コングロマリット事業を営む企業群が調査対象になっているため鵜呑みにできないことも要注意。
◯コンテクスト・マネジメントとは
組織による意思決定と行動を考察するフレームワークのこと。
意思決定と行動のプロセスを分けて考え、デザインし、運営し、その中に魂を吹き込むことらしい。
▼個人的な解釈
企業コンテクスト(文脈、歴史)によって引き出された要素から、経営管理すること。
経営にはあらゆる組織に当てはまる普遍解はなく、オリジナルの固有解を追求すべきであり、コンテクストなしであれこれ戦略や制度を考えるのは有意ではない。
◯概要
・トップは、カルチャーの定義・醸成・定着に情熱を燃やし、執着するべきというのが全ての結論である。
・経営者がおうべき変数は、マッキンゼーの7Sによって明らかにされている。目に見える経営要素だけでなく、インビジブルな要素も着目すべきである。
・戦略の決定は、事実上ミドルが行っている。実行するのはミドルだから。だからこそ戦略実行について経営層は進捗を追い、実行とPDCAを見守らなければいけない。
・経営者は実行にある程度無力である。ミドルマネージャーを巻き込み最善を考え、行動しなければいけない。
・戦略もなにかも、実行するのは人である。ということは、実行に耐えうる知識やスキルをもった人を、組織的に育成しなければいけない。現場レベルのDoは現場で強制的に学べるが、それ以外は狙って「学習する組織」をつくらなければいけない。
・コントロールだけ考えてはいけない、組織固有のコンテクストを理解し、コンテクストにあっているのかを見るべき。
◯デカくなる企業の共通点
・社会に対する大胆な理念を掲げている。
・個に成長機会と自己実現の機会を与えるプラットフォームになりえている、そのように見せている。
・個と個の結びつきを、機会や仕組みで図っている。
◯学習する組織
・学習する組織とは、知識を創造、習得、移転する能力を有し、新しい知識や洞察を反映させながら既存の行動様式を変革できる組織。
・「他社他者から貪欲に学ぶ」「失敗から得た教訓を未来の行動に反映させる」「過去にとらわれず環境変化に迅速に対応する」「組織内で水平・垂直に学習を共有する」。
・学習する組織の基本は、対話である。なぜを繰り返す対話、雑的な対話、学習移転できる対話の時間をとれ、学習影響力が高い人物を評価できる制度があるかどうか。
・学習する組織の良い悪いは明確に図れる。事業を作れる人材の輩出率を見るべき。事業を創り出せる人材を、目標にするのも一手。※あくまでも普遍解はないためコンテクストに従うべき。
・学習するチームのドリームチーム(コミュニティではない、学習影響力の高い人材がいるドリームチームである)こそ、会社で最も称賛されるチームであり、経営者や幹部に据える人材はそこにいる。
トップはどんなパーパスや戦略的方向性、目標を掲げているか。情報共有システムや人事評価システムはどうなっていて、失敗からの学びを全体で共有できる仕組みはどの程度整っているのか。
行動規範はどのようなものが定められていて、トップの言動は、現場やミドルの率直かつ誠実な行動をどのくらい促せているのか。これら一連のことを考える必要がある。
◯7S 3つのハードな経営資源と4つのソフトな経営資源
戦略(Strategy) :ある一定の目標を達成するために立てられる企業の限られた財的・人的資源の配分を目的とした一定期間の計画ないし行動方針
構造(Structure):組織のしくみの特徴(機能的である、分権化している、など)
システム(System):一定の報告パターンおよび会議形式のようなルーティンな方法
スタッフ(Staff) :企業内の人員を重要な職種・特質別に分類・配分すること(たとえばエンジニア、企業家型、管理のプロなど)。ライン対スタッフといった意味合いではない
経営スタイル(Style):経営幹部が組織の目標をどのように達成するかという特徴、およびその組織の文化的特質
経営スキル(Skills) :経営の中心人物ないし企業全体の持つ顕著な能力
共通の価値観(Shared Value):組織がその構成員に植え付ける理念あるいは指標となるような概念続きを読む投稿日:2024.01.06
このレビューはネタバレを含みます
コンテクストというのは、組織風土やカルチャーに近いものかと感じた。
レビューの続きを読む
プロセスや体制を外形的に整備するだけでなく、なぜこのようなプロセス・体制になっているのか、それを通じてなにを成したいのか、トップが絶…えず社内に発信することで初めてカルチャーとして定着する。
トップの主な仕事は、このカルチャーの醸成・定着であり、それを成すだけの熱量や想いが必要ということなのだろう。続きを読む投稿日:2023.11.24
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