ジュリーがいた 沢田研二、56年の光芒
島﨑今日子(著)
/文春e-book
作品情報
60人超の証言者が語る、沢田研二ノンフィクションの決定版
1970年代。音楽、ファッションが革新を遂げ、ポップスが花開く。その中心には必ず、彼がいた。
バンドメンバー、マネージャー、プロデューサー、共に「沢田研二」を創り上げた69人の証言で織りなす、圧巻のノンフィクション。
「週刊文春」人気連載、単行本化。
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商品情報
- シリーズ
- ジュリーがいた 沢田研二、56年の光芒
- 著者
- 島﨑今日子
- ジャンル
- 教養 - ノンフィクション・ドキュメンタリー
- 出版社
- 文藝春秋
- 掲載誌・レーベル
- 文春e-book
- 書籍発売日
- 2023.06.12
- Reader Store発売日
- 2023.06.12
- ファイルサイズ
- 4.7MB
- ページ数
- 384ページ
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この作品のレビュー
平均 3.7 (8件のレビュー)
-
ジュリーの歌手活動56年の歩みを読みながら、こと音楽に限って言えば、良い時代に生まれたんだなぁと思った。
ナレーション風に語れば…
かつて、我が国には歌謡曲という大衆音楽が存在していた。抒情や哀愁を…帯びた歌、道ならぬ恋を哀切に歌い上げる演歌、フォークやロックをあくまでもパーツとして取り込んだ歌…。多種多様な音楽ジャンルを丸ごと飲み込み、噛み砕いた音楽家たちはこれまでの大衆音楽の既成概念を蹴散らすような勢いで次々と斬新な曲調の流行歌を創り、それは巷に溢れた。歌謡曲、それは大衆音楽の器であった。(ナレーション終了)
というように歌謡曲はEXPO70がファンファーレよろしく70年代に一気に花開き、たちまち全盛期迎える。街には歌が溢れ、口ずさんだ。売れっ子の歌手は3ヶ月に1枚新譜をリリースし、大晦日の日本レコード大賞は今とは比べるまでもなく威厳があり、こぞって1等賞を目指し、受賞者は帝国劇場から紅白歌合戦のオープニングに間に合うべく滑り込んだ。
その中心に居続け、牽引し続けたのがジュリー。1967年にザ・タイガースのボーカルとしてデビューするやいなやブレークしGSの頂点として君臨、1971年に解散し、テンプターズのリードボーカル ショーケンこと萩原健一とツインボーカルスタイルのロックバンドPYGを結成するも、1年足らずでフェイドアウト。同年『君をのせて』でソロデビュー。以後10年音楽チャートランキングトップ10にチャートイン。まさに歌謡曲全盛期の申し子であり、寵児であった。
本書は『流行歌手ジュリー』を創り上げた音楽家・バンドマン・歴代マネージャー・プロデューサーら69名の証言で織りなすノンフィクション。
中でも、内田裕也・久世光彦・阿久悠・加瀬邦彦・蜷川幸雄・長谷川和彦・井上尭之・大野克夫・早川タケジ…との関わりにページが割かれ、エピソードが明かされる。
例えば、内田裕也は沢田研二という原石を発掘したにもかかわらず終始純情な眼差しを注ぎ、久世光彦は視聴率より沢田研二が光る作品を創ることに一途になり、阿久悠は沢田研二に気障と痩せ我慢の美学を見い出し、加瀬邦彦のプロデュースぶりは体重管理にまで及び献身の一言に尽きる。
プロデュースがあってこそ光りを放つジュリーと異なり、ライバル関係にあったショーケンは、役者として生きると決めるや、映画スタッフの一員となったり、自ら企画を立て、脚本に意見を述べ、演技プランを練り、時にはスタイリストを兼ねるなどセルフプロデュースに長け、高橋和巳や小田実を読む読書家であり、役者として生きる道を切り拓いていく。
本書はジュリーへの直接取材は叶わなかったが、当時の関係者やメディアの記事により、ジュリーの魅力と来し方を炙り出していく。
『勝手にしやがれ』で念願のレコード大賞受賞、80年代の『TOKIO』に象徴される派手なコスチュームを纏い華美で中性化へのリノベーション時代、田中裕子との出会いと再婚、流行歌手の座から落ちた1990年代、懐メロ歌手への拒絶、そして齢75となり、肉体と美貌の衰えをもろともせずステージで飛び跳ね、変わらぬ美声を届けるジュリーの現時点までを綴る。
人への評価に『あの人は富士山みたいな人』というのがある。これは褒め言葉ではなく、酷評に値する比喩。遠くから見たときは綺麗でも、近寄ってみれば汚い醜いという語義だけど、ジュリーにおいてはそれは該当しない。仰ぎ見ても、接してみてもジュリーはずっとジュリー。
それを証明するのが、本書登場する関係者の大半は男である。才能に溢れ個性が強く一家言ある男たちが、ふらふらになるぐらい一様にジューリーに魅了されていく。
そう、『皆んな大好きジュリー』状態。自己主張をせず常に従順の姿勢を示し、沢田研二というキャンバスを提供する。スターとして『売れる』ことに真摯に取り組む姿勢に、ますますアーティストたちは創作意欲を駆り立てられ、絵に描いたイメージをぶつけ、ジュリーは誠実に体現していく。
伊集院静の著書『眺めのいい人』という言葉が浮かんだ。また盟友 岸部一徳は『“ジュリー”に負けなかった沢田研二』とも評した。
最後に、今なおライブ活動を精力的に行ない現在進行形なのに、なぜ『ジュリーがいた』という故人を偲んだみたいなタイトルをつけたのか…。その謎は巻末の『連載を終えて』で明かされる。それはここでは申しません。野球と空手大好きな沢田少年が皆んな大好きジュリーになるまでをしっかり読み終えた後、その下りを読んでみてください。膝を叩くでしょう。続きを読む投稿日:2023.08.05
ジュリーを追うことによって日本の音楽シーンのあれこれを多方向から振り返ることになり、結果、重なる記述がとても多くなっている印象。
まあ、とにかくジュリーが特別な人だということはよくわかる。
投稿日:2024.04.21
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