歴史の定説を破る あの戦争は「勝ち」だった
保阪 正康(著者)
/朝日新書
作品情報
日清・日露戦争で日本は負け、アジア太平洋戦争では勝った! いま最も注目されている近現代史研究の第一人者が常識の裏側を照射し、歴史の真実を明らかにする。「新しい戦前」のなか、逆転の発想による画期的な戦争論。待望の一冊。
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商品情報
- 著者
- 保阪 正康
- ジャンル
- 教養 - ノンフィクション・ドキュメンタリー
- 出版社
- 朝日新聞出版
- 掲載誌・レーベル
- 朝日新書
- 書籍発売日
- 2023.04.13
- Reader Store発売日
- 2023.04.13
- ファイルサイズ
- 5MB
- ページ数
- 232ページ
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この作品のレビュー
平均 3.0 (7件のレビュー)
-
著者の作品は多く読んだ事があり、いつでも解説内容や考えは明確でわかりやすい。だからこそ好き嫌いが分かれるものだが、勿論戦争礼賛でも努力を伴わない様な待ってるだけの極端な平和主義でもない。戦後多くの戦時…のエリートに取材を重ねた事からも、偏った考え方でもないから戦争(特に太平洋戦争までの道のり)の流れを掴むには丁度良いだろう。
歴史は繰り返されるというが、人間の身体的な能力も新しい技術を生み出す智力もどこの国であってもそれ程は変わらないだろう。だから二国間の戦争も内戦も多数の国家が巻き込まれるような大戦であっても繰り返されるものと感じる。もしか圧倒的な力の差や、破滅的な殺傷力のある兵器を日常的に用いる技術・生産力げあったなら、いずれか若しくは双方、そして複数または全体が死滅するはずであるから、戦争は2度と起こらなくなる。歴史は繰り返されないはずだ。日本を中心に見た場合でも、日清、日露、第一次大戦、そして第二次大戦と大きな戦争をなん度も繰り返した。局所的に見れば膨大な戦利品を得た勝利かもしれないが、次につながる流れ、その結果と順を追って見ていけば、最終的に日本がボロ負けした太平洋戦争に繋がるので負けたとも取れる。戦争と戦争の間の戦間期の社会は突然ながら前の戦争の結果を引きずるだろうし、全く繋がらないという事はあり得ない。
人々の心理、社会の発展(武器になる技術力向上など)、軍隊の強さなどは戦争によって変わり、次の戦争に繋がるのが普通だ。有名なところでは第一次大戦からヒトラー登場後の第二次大戦は明らかに原因として深く繋がっている。
そうして流れ自体を異なる時間的なスケールで切り取れば、勝ち負けの捉え方は大きく変わる。軍事的な勝利が必ずしも戦略的な勝利とイコールにはならず、その逆のあの時戦闘に負けたから、次の勝利に繋がる教訓が得られた、といった考えになる。そして最後には今の状態がある。日本は今経済的には発展してGDPは中国に抜かれインドにも追い越されるのも時間の問題だが、それでも先進国中の先進国だ。今を見れば過去の戦争の後に出来た平和憲法やアメリカの力を盾に経済発展を遂げた日本は勝利者と言える。歴史にifはないが、もし太平洋戦争で日本がドイツと共に勝利し世界を支配していたら。私はきっと今でも安心して寝てられない戦時にあったと思う。戦争と戦争の間の戦間期に勝利や敗北を元に人は考え、未来へと行動を起こす。反省か勢い任せかは、前の歴史の上に決める分かれ道のような物だ。
何度もいうが、歴史を長短様々な長さのスケールで見れば勝ち負けの判定など無用かつ不可能、意味がない。歴史がそういう物だと理解して読み進めれば、本書は違和感なく読める。
本書のあの戦争は「勝ち」だったというタイトルに、どの戦争?どの時点の判定?と質問しながら読み進める事になるだろう。それを自分なりに流れで掴んであぁなるほど、このシーンでは確かに勝ちだな、と理解できれば楽しく読める。続きを読む投稿日:2023.04.28
●=引用
●戦後は左翼的な物言いををしていると、インテリと思われたりするから安心だった。逆に右翼的とレッテルを貼られたら大変なことになった。私でさえ、軍人たちを取材していると言うと「お前、右翼か」と…責められた。こういう左翼か右翼かでしか物事を見られない人は、日本の歴史や社会を正確に見ることができない。(略)日本の侵略や残虐行為について中国政府は日本政府に「謝罪」を求めているし、中日友好協会の人も私から何か謝罪的な言葉を聞きたかったはずだ。しかし、一市民の私が「ごめんなさい」と言っても気休めでしかないし、日本の軍国主義は誤ってすむ問題でもない。私たち市民にできることは、政治思想的なイデオロギーではなく、あくまでも人間として戦争の歴史を語り継ぐこと、そして反省し、教訓を生かしていくことだ。つまり、歴史的な反省と政治的な謝罪とは別次元にある。(略)あえて宿命という言葉を借りるなら、私たちが持っている宿命は、記憶を父とし、記録を母とし、教訓という子どもを生むことだ。歴史の中から得られる教訓を永く語り継いでいく。それが歴史や社会を正確に見るうえで必須の構えなのだ。政治的解釈や行動は、そのあとなのである。
●私と同年代の西ドイツ出身の人に話を聞いたことがある。彼は戦後、小学生のうちにヒトラーが何をやったか、学校で徹底的に習ったそうだ。だからヒトラーに対して強い憎悪を持っている。その所業について「本当に恥ずかしい思いがする」と言っていた。私も日本の軍事指導者の所業を恥ずかしいと感じる。ただそれと同時に、そうせざるを得ない状況やそういう教育を受けた影響があったのだから、同情と言わないまでも、個人よりも状況や教育のほうを批判しなければならないだろうとも思う。(略)歴史上の国家の罪について、「すみません」と今を生きる私たちが謝る必要性をどう考えるべきか。謝ったところで何の解決にもならない。ただし、徹底的に自分の考えを説明する必要がある。それで相手が納得するかどうかは別の問題で、説明し続けることに意義がある。そのためにも戦争の歴史をきちんと継承しなければいけないのだ。
●中国人から第二次世界大戦について意見を求められた時、どんなふうに説明したらいいのか。個々人の歴史観からくる選択の問題ではあるが、受けてきた教育や政府を含めて社会の中にある考え、自分自身の考えなど、様々なものから選択して説明するべきだ。そのことを自覚する必要がある。しかし、戦争の歴史を継承する姿勢において日本は甘いところがある。たとえば、ドイツ人に比べて日本人は「加害の歴史」をぼんやり見ているのではないか。(略)歴史の継承に関する甘い姿勢は、大きなつけとして将来的に払わさられるものだ。その意味ではドイツも心配だが、日本の場合、現実にもう悪い影響が出てきている。これはやはり大きな問題である。続きを読む投稿日:2024.02.18
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