決定版 皇室論 - 日本の歴史を守る方法 -
倉山満(著)
/ワニブックス
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旧皇族の男系男子孫の皇籍取得はどうすれば実現できるか?皇室の歴史は日本の歴史そのもの。先例を学べば答えはみつかる、日本を守るために何をすればいいかがわかる一冊。皇室についてお話をする際には、大原則を共有しておく必要があります。さもないと無限大に会話が通じなくなりかねません。最低限の価値観を共有していないと話ができません。そこで最初に、皇室について話をする際の大原則を、四つ確認しておきます。第一に、「本来、他人の家について語るのは失礼である」ということ。第二に、「皇位の“安定的”継承など、絶対に子供が生まれる技術が存在しない限りありえない」ということ。第三に、「皇室について語る際は先例に基づくべし」ということ。第四に、「日本国憲法の条文と通説の範囲内で論じる」ということ。■皇族が一人もいなくなる危機があった■「日本の歴史が終わる!」という危機感の中で・・・・・・■なぜ「女系天皇容認論」が飛び出したのか■悠仁殿下はお命をも狙われている!■有識者会議でどのような議論がなされたか■秋篠宮家から皇位継承権を取り上げたい人々■知っておくべき皇室の系図■Yahoo!コメント欄で好き勝手言って良い話ではない■秋篠宮家バッシングの本質■誰も注目しなかった秋篠宮殿下のご発言■「警告する権利」「激励する権利」「相談を受ける権利」■男系は直系に優先するのが皇室の伝統■何十年も先の話を今から必要とする皇室■「五世の孫」の原則 ■「旧皇族の男系男子孫の皇籍取得」への五つの反論
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倉山満 (くらやま みつる)
憲政史研究家。1973年(昭和48年)、香川県生まれ。(一般社団法人)救国シンクタンク理事長・所長。1996年、中央大学文学部史学科国史学専攻卒業後、同大学院…博士後期課程単位取得満期退学。在学中より国士舘大学日本政教研究所非常勤研究員を務め、2015年まで日本国憲法を教える。2012年、希望日本研究所所長を務める。主な著書に、『ウッドロー・ウィルソン全世界を不幸にした大悪魔』(PHP新書)『検証検察庁の近現代史』(光文社新書)『嘘だらけの日米近現代史』などをはじめとする「嘘だらけシリーズ」『13歳からの「くにまもり」』(いずれも扶桑社新書)、『大間違いの太平洋戦争』(KKベストセラーズ)、『バカよさらば プロパガンダで読み解く日本の真実』『若者に伝えたい 英雄たちの世界史』『救国のアーカイブ』(いずれもワニブックス刊)など多数。現在、ブログ「倉山満の砦」やコンテンツ配信サービス「倉山塾」や「チャンネルくらら」などで積極的に言論活動を行っている。
かつての日本には、不敬罪という犯罪もあり、日本では明治十三(一八八〇)年から昭和二十二(一九四七)年まで運用されていました。現在は多くの君主国で、「不敬罪は、さすがにやりすぎではないか」ということで、廃止される傾向にあります。不敬罪があるから王室に対する敬意が育まれるわけでもありません。逆に、変な運用をすれば反発が余計に広がることもあります。私も決していい法律だとは思いません。戦前には、政府が国民を従わせるために皇室の名前を濫用し、反抗的な人々を牢屋にぶち込んだ、という事例すらありますから。
本来は、誰であろうと、他人の家の事情について語るのは、失礼なのです。ただし、皇室は、日本の歴史を背負っておられる家系として続いてきました。皇位継承問題は、日本の歴史において、常に政治の最も重要な問題であり続けてきました。現に今も、政治問題となっています。だからまったく何も言わないわけにはいきません。 つまり、皇室について語る、皇位継承問題について語る、ということは、「日本の歴史を続けるか否かという問題を語る」ということなのです。日本の歴史を続けるか否かの問題だからこそ、本来ならば失礼にあたる他人の家の事情について語る、ということが求められているのです。まず、この価値観を共有したいと思います。
ちなみに、女系天皇と女帝(女性天皇)は、まったく違います。歴代八方(十代)の女帝がいらっしゃいます。なぜ人数と代数が違うかといえば、二度天皇になられた方が二人おられるからです( 重祚 と言います)。そのすべての方が、男系女子です。 男系継承は女性差別である、男女平等の観点から女系継承を容認しようという議論があります。これは皇室の歴史を知らない人の議論です。男系継承は、民間人の男を皇室に入れない、男性排除の理論です。先の図をもう一度見てください。藤原氏の誰も、皇族にはなれませんでした。どんなに権力を持っていても、男系で天皇の血をひかない一般人の男は、皇室に入れない。男性排除の論理なのです。
今の皇太后陛下、皇后陛下、秋篠宮妃殿下は、もともとは正田さん、小和田さん、川嶋さんという名字の民間人の女性でした。 このように民間人の女性が皇族になった例は無数にありますが、民間人の男性で皇族になった例は日本の歴史上、一度もありません。一時期、女系継承が容認されて小室圭さんが「圭殿下」になるのではないかという噂が流れたことがありますけれども、そのようなことにはなりませんでした。
この議論に、男女平等(最近はジェンダー平等と呼ぶのが正確か?)の問題はまったく無関係です。それを言うなら、男系継承というのはむしろ男性差別だという議論が成り立つという考え方もできてしまいます。より正確に言えば、そもそも皇室ができた時点において、男女平等(ジェンダー平等)といった考え方はとっていません。もしも皇室が歴代を女系で継承していたならば、私は絶対に女系継承を守れと主張したでしょう。「男系を今後も守っていくべきだ」という議論は、男女平等(ジェンダー平等)とは何の関係もなく、一度も例外なく続けてきた日本の歴史を守るか守らないかだけの問題です。
海外を眺めると、「女系容認」「男女関係なく長子優先」の制度の国もあります。それが日本と何の関係があるというのでしょうか。国際社会においては、歴史の長いというのは、伝統があるので偉いのです。古い方が新しい方に従う理由はないのです。日本の皇室が世界最古最長不倒である以上、参考程度に外国の王室を研究するのは構いませんが、盲目的にそれに合わせる必要はありません。
皇位継承において今、皇室に次世代の皇族が少なすぎることが問題とされています。だから見えにくいのですが、子供が多すぎても争いが起きて皇位継承が不安定となるのが日本の歴史です。外国の歴史をみてもそうです。王位(帝位)継承者が多すぎて、それが常に騒乱の種になってきました。 そうした争いを避けるために「五世の孫」の原則というものがあります。「五世の孫」の原則とは、皇室の直系から遠い皇族は、五世以内に皇室から出ていって民間人となる、つまり臣籍降下しなければならないという原則です。したがって桓武天皇(七三七~八〇六年)の五世以内に平氏ができました。桓武天皇の曾孫(四世)の 高 望 は臣籍降下して平の姓を 賜って 平高望 と名乗り、桓武平氏の祖となりましたが、平氏は君臣の別により皇族とは扱われません。また、清和天皇をはじめとする天皇の五世以内に源氏ができたりしました。
第一に、「本来、他人の家について語るのは失礼である」ということ。第二に、「皇位の〝安定的〟継承など、絶対に子供が生まれる技術が存在しない限りありえない」ということ。第三に、「皇室について語る際は先例に基づくべし」ということ。第四に、「日本国憲法の条文と通説の範囲内で論じる」ということ。 どうすれば、日本の歴史を続けることができるのか。次章より皆様に提言いたしたいと思います。
岩井克己氏は、朝日新聞出身のジャーナリストですから女系論の人ではあるのですが、「今、女系論を言うとまずいのではないか、とはいえ旧皇族の皇籍取得にも問題がある」という立場です。「悠仁殿下がおられるのに内親王が継承権を持たれるのはいかがか」ということを言っているわけです。皇位継承の女系拡大と旧皇族の皇籍復帰と、両方に反対というのは、悠仁親王殿下に男子が生まれ、その男子にも男子が生まれ、ということになるのであれば、先送り的に最も正しいという結果になります。
本書は日本国憲法の範囲内で議論すると最初に断っています。つまり皇室の伝統と日本国憲法を調和させようということです。しかし古川氏の議論は、日本国憲法で皇室の伝統を否定しようとの議論です。まったく違います。
綿矢りさ氏は女帝に賛成したというのでいわゆるネトウヨに思いきり叩かれていた人です。公開された公文書で綿矢氏の発言を読めば、ネトウヨ諸君は敵味方識別装置が壊れていたとの評価しかできません。 綿矢氏は、「天皇陛下は、余りにも幅広い役割を担っておられる」とし、「国民として知ろうと思わなければ、必ずしも日常の中で直接的に実感する機会は少ないのではないかとも思う」と述べ、「中学生の頃、百人一首のカルタをしているとき、女性天皇である持統天皇の札を見て、女性の天皇もいらっしゃったのかと思ったことが、彼らは今も強く印象に残っている」と言っています。この部分が「女性天皇容認だ」と報じられ、叩かれたのですが、次の部分を読んでいないのでしょう。
《カラカウア家のリリウオカラニ女王》 ハワイ王国唯一の女王であり、最後の国王。在位一八九一~一八九三年。一八七二年にカメハメハ五世の死去で初代カメハメハ大王の直系が絶えたことで二代目の選定王となったカラカウアの妹である。健康を害したカラカウア王に代わって一八九〇年に摂政となり、翌一八九一年、兄王の死に伴い女王となった。 リリウオカラニは王位復権に尽力した女王である。一八九三年、その旨を明らかにした憲法を公布しようとするもアメリカ併合論者たちの武装蜂起を招き、リリウオカラニは女王を退位させられた。一八九五年に王位奪還を目指すが失敗。一八九八年、ハワイはアメリカ領となった。ここにハワイ王朝は断絶した。 なお、リリウオカラニ女王は「アロハ・オエ」の作曲者としても知られる。
天皇のみならず、皇族は義務だけあって権利がない存在です。日本国憲法が記す人権の中で完全に認められているのは、命を奪われない権利と心の中で何を考えても良い自由だけと言っても過言ではありません。他はまったく権利がないか、大きく制約されます。
ただ、淑子内親王におかれては婚約者が亡くなり、結局、誰とも結婚せずに桂宮家は断絶した。女性宮家は決して吉例とは言えない。 そもそも女性宮家は皇位継承とは関係のない話であるから、無理やり採る方策ではない。「さあや」のニックネームで知られる紀宮清子内親王は、平成十七(二〇〇五)年に結婚されて黒田清子さんとなられた後、平成二十四年四月から平成二十五年十月まで伊勢神宮の臨時祭主を務められた。皇族を離れても伊勢の斎宮を務めてくださっているのである。 無理やり女性宮家を創設するくらいなら、旧皇族の方々、伏見宮系統の男系男子孫に対して親王宣下した方がよほど効果は高いだろう。男子に伊勢の斎宮はできない代わりに、皇室会議への出席に性別は関係ないので、ならば女子に出席してもらえばよいという考え方もできる。重ねて言っておくが、こうした議論は、男女平等問題とは関係がない。
仮に天皇が政治の最高権力を握り続けたら、歴代権力者の誰かがその地位を奪ったかもしれません。外国では、権力を手放さない君主の地位を奪う歴史です。ところが日本の天皇は権力を持たないがゆえに、その地位を奪われることはありませんでした。 このように「准じる」形で先例を柔軟に時代に合わせてきたので、皇室は残ってきたのです。
皇位継承問題の議論において不思議なのは、女系容認論者が、「そのような先例はない」という言い方をすることです。申し訳ありませんが、女系という先例のない方策を主張している人がなぜ、先例がないということを理由に批判を行うことができるのでしょうか。二重基準(ダブルスタンダード)な御都合主義、甚だしい。
もっとも、女系容認論者は旧皇族の男系男子孫の皇籍取得の問題点をあげつつ、一般国民の男を皇族にしようなどと日本の歴史に一度も先例がないことを主張するので、どういう基準でそうなるのかと疑問に思いたくなるのですが。女系容認論者は、男系よりも直系を優先するすり替えを行うので、よほど皇室史に詳しくないと信じてしまうでしょう。
素朴に「男系が絶対だ」と結論だけ言っていれば済む話ではない、皇室はそんな単純な世界ではないのは、ここまで本書をお読みいただければ、おわかりでしょう。
何をやれば皇室が危なくなるのかを知ることは、何をすれば皇室を守れるのかと同じ話です。ですから本書は日本の歴史を守りたい人にとって、必読書のはずです。続きを読む投稿日:2024.04.11
正しい知識を持って、皇室、日本の歴史を守っていくのがいかに難しいかが分かった。
最終あたりの敬宮様が東久邇宮野方と結婚なさって男子をお産みになるのが〜みたいな意見には少しギョッとした。
皇室とはいえ、…今の世の中ではちょっと厳しいかもしれない。お互い両思いとかだったらいいんだけど。
皇室には自由なんてないんだからって感じだったけど、結婚まで自由ないのもな〜ってなんかモヤッちゃう。
貴族漫画とかでよくある「子を成すのが貴族の義務」みたいなのが今の日本にあるとは…って改めて思った。
やっぱり旧宮家の方々に復帰していただくのが今のところ一番丸く収まりそうな気がするなー。続きを読む投稿日:2023.03.27
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