マッキンゼー CEOエクセレンス 一流経営者の要件
キャロリン・デュワー(著)
,スコット・ケラー(著)
,ヴィクラム・マルホトラ(著)
,マッキンゼー・アンド・カンパニー・ジャパンシニアパートナー・CEOエクセレンスグループ(監訳)
,尼丁千津子(訳)
/早川書房
作品情報
世界の輝かしいビジネスリーダーたちに共通する「マインドセット」と「6つの行動習慣」とは? 21世紀のCEOに不可欠な「卓越性=エクセレンス」の正体が明らかに! ニューヨーク・タイムズ、ウォールストリート・ジャーナル ベストセラー ベストなCEOを他と分かつものとは? 21世紀のトップリーダーに不可欠な「CEOエクセレンス」のすべてが詰まった究極のビジネス書。「・・・・・・本書は上場、非上場、非営利にかかわらず、どんな組織のリーダーにとっても有用な指南書になりうると考えている。さらに、本書で紹介している成功につながるマインドセットと行動習慣の多くは、自身のベストを目指したい若き将来のリーダーたちの成功を下支えすることは間違いない。この本のすべての読者が、自ら誇りに思え世界から感謝される、伝説的なリーダーシップを身につけるべく、本書から知識と刺激を得られることが、私たちの最大の願いである」――本文より
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この作品のレビュー
平均 3.7 (3件のレビュー)
-
このレビューはネタバレを含みます
マッキンゼーのCEOアドバイスを行うチームがまとめた本。
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今年、というか過去500冊超の中で、もっとも付箋を貼った本。備忘録につけたいことがありすぎる。とっても良書で、これならこの値段(定価2,700円)も安く感じる。
備忘録。
・特に日本では、各CEOによる無手勝流経営が多い。
・上位2割の高パフォーマンスCEOが在任期間中に実現する総株主利回りは、一般的なCEOの2.8倍。企業の財務的な成功を決定づける要因の45%はCEO。
・CEOの6つの責務。方向を定める、組織を整合させる、リーダーを動かす、自身のパフォーマンスを最大化する、ステークホルダーと連携する、取締役会を引き入れる。高パフォーマンスCEOは、6つの中の優先順位はTPOに応じてつけるものの、同時に全てに注意を払っている。
・大したことを生み出さないことには余計な時間を費やさず、CEOにしか出来ないことに集中する。
・人材紹介会社の調査では、CEOの1年目は上々で、翌年は2年目のジンクス、3年目から5年目は回復するが、6年目以降は気が緩む、と。
・著者らが話を聞いたCEOのほぼ全員が、CEOの役目を担う準備が万端だと思っていたが、実際はそうではなかった、と語っている。CEOのプレーブックは存在しない。事前に学べる場はない。成功する方法は何通りもある。
・CEOの役目とは、ありとあらゆる矛盾の交差点。短期的成果と長期的成果、過去の尊重と破壊的イノベーション、などなど。これらに見事な折り合いをつけるのがベストなCEO。
・成功を収めたCEOたちは、成功の定義や、勝利が何かについての見方を変えてきた。マスターカード社の「現金を絶滅させる」、ネットフリックス社の「映画配給会社のためのグローバルな配信サービス会社」、ベストバイ社の「生活を豊かにするための案内人」、アディダス社「アスリートがより良い成果を出すための商品やサービス提供」など。これらは「純利益を倍にしたい」というのとは周囲の受け止められ方が違う。
・流行りのビジョン、使命、パーパスとかは大事だが、それぞれの言葉の意味の違いを、ベストなCEOたちは気にしていない。ベストなCEOたちが大事にしているのは、わかりやすい言葉ではっきりと描かれた会社の北極星。
・平均すると、ベストなCEOたちは、年間一件のM&Aを行っている。利益創出において中間レベルのCEOたちは、大胆な取り組みを行わないか、任期終盤にしか行っていない。大胆な取組みを複数行うほど、上位レベルのCEOになる確率が高くなる(大胆な取り組みは百発百中無理)。
・ベストなCEOたちは、取締役会で「大丈夫なんですか?」とか聞かれがち。あるベストなCEOは、「本当に大丈夫なんてことは言えません。確実かを確かめる方法などないのだから。だからこそ不安や情報を隠さずオープンにして議論する」と。
・書斎にじっと座っててもひらめきは生まれない。あちこちに足を運んで、一見関連性のない事柄の組み合わせから、何か新しい何かを考える。
・大胆さと無謀さは違う(難しい‥)。下振れシナリオはしっかり考えておく。最悪のシナリオが起こった時でも大丈夫かどうかを考えておく。そして、自社のオーナーになった気持ちで考える。
・CEOが組織を大きく動かそうとしても、組織は少ししか動かない。一見見当違いと思われるほど極端な方向にポジションを取ることで、ようやく組織はCEOが望むレベルで動く。
・会社における全体最適とはF1のチームのようなもの。ドライバー、エンジン、タイヤ、スポンサー、などなど。全体で最大の速度を出せるかどうか。
・一生懸命作った計画でも、達成できるのはそのうちの3分の1程度、というのが多くの研究の結論。成功の阻む要因の72%は人や文化に関するもの。
・組織を変えるには、率先垂範、主語は「私」ではなく「私たち」。
・大胆な社内組織変更は大概失敗している(成功しても長続きしない)。ある作家によれば、「混乱、非効率、士気消失、前進している錯覚をもたらす」と。価値を生み出すためのコアな部分、肝の部分の変更に注力すると良い。
・優秀な人材に固執しない。適材適所の方に拘る。価値の高い役割がどこなのか明確にする。過去の功労者だが今は低パフォーマーの人の交代を遅らせたことを後悔しているCEOが多い。幹部の交代は思いやりを持ってやらないと、周りはそれをよく見てる。
・新任CEOは、しばらくは自分の仮説を検証したいだろうが、組織を変えられるチャンスは着任した時のボーナス期間が最大。
・キャタピラーのCEO「私に猛烈に反対すべきと思っているのにそうしない人は反省すべき。そしてそうさせている私自身も反省が必要」。JPモルガンのCEO「貴方が何も尋ねなかったから言わなかった、は許されない。問題があることこそ発信すべき」。
・問題を解決するのに最も適したタイミングは、問題を認識した時。
・大胆なほどの透明性を選択する。
・資生堂のCEO。CEOと取締役の関係は新幹線。CEOは時速300キロで走る。異常があれば即座にストップできる。
・人が働く目的の類型。自分自身への金銭的及び非金銭的な報酬、帰属意識、会社のため、お客様のため、世の中のため、の5つ。大半の人はこの全てに意義を見出しているが、優先順位などは人それぞれ。
・HP、目標は達成できるもの、戦略は実行できるもの。パーパスは永久に追いかけるものであって決して到達はできないもの。パーパスは変化しないが、変化を促す。
・CEOこそが、組織と企業外部を結びつけるキーマン。ステークホルダーとの相互連携を担え。利益を作るのは企業の外(社内で利益は生まれない)。ステークホルダーの「なぜ?」の理解に努めよ。全てのステークホルダーに対して一貫して同じメッセージを伝えよ。その時にしっかりと自信を示す。事実を明確にして希望を与えることだ。
・CEOはチームを率いない。チームの報告を受け、全体最適で判断する。余力を持ち、その時間で未来に向けて何をすべきかを考え続ける。
・本当の自分を曝け出すのはいいが、その結果周りが不快に思うことはよくない。
・CEOのフィードバックのもらい方。「より良くなるにはどうしたらいい?」「変えるとしたらどこでしょう?」「半年前よりよくなったのはなんですか?」「CEOが知っておいた方が良いのに、おそらく知らないと貴方が思うことはなんですか?」などは良い。ダメのは「できはどうだったかな?」とかで、良い反応しかきようがない。
・CEO就任直後のリスニングツアー。あらゆるステークホルダーに話を聞く。やめた従業員も。相手の話を聞く。軽はずみに約束をしない。数字もよく確認する。投稿日:2023.02.15
世界で最も数多くのCEOと接しているであろうマッキンゼーによる「エクセレンスCEO」分析に関する著述。公正かつ厳密な基準に基づいて200名の「ベストCEO」を選定しヒアリングを行い、ベストなCEOに必…要となる要件を炙り出そうという意欲的な試みだ。肝心の内容といえば項目列挙的かつ帰納の粗さも気になる。冒頭にあるエピソード「CEOにとって3つの大切なこと」より、ある程度絞られたものが提示されると思ったら6区分×4項目=24個の要件となっている。その詳細もベストCEOのスーパーマンエピソードに近い。また体系化や図表化もなく読みにくさを感じる。本分析を持ってCEO基準としてマッキンゼーはコンサルに有用となろうが読者にとってはやや辛い。500ページ弱の大書でテーマも面白いので次回のCEOエクセレンスグループの著書に期待したい。
※エクセレンスCEO:「方向を定める」「組織を融合させる」「リーダーを動かす」「取締役会を取り入れる」「ステークホルダーと連携する」「自身のパフォーマンスを最大化する」->項目としてはCEOのメンタリティを示す「自身のパフォーマンスを最大化する」が最も参考になった。CEOも一人の人間であり精神力は自律と鍛錬によってもたらされることがよくわかる。続きを読む投稿日:2023.05.15
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