軋み
エヴァ・ビョルク アイイスドッティル(著)
,吉田薫(訳)
/小学館文庫
作品情報
CWAニュー・ブラッド・ダガー賞受賞作!
同居していた恋人との関係が唐突に終わり、エルマは長年勤めたレイキャヴィーク警察を辞め、故郷アークラネスに戻った。
地元警察に職を得て間もなく、観光名所であるアークラネス灯台の麓の海岸で女性の不審死体が見つかる。所持品はないに等しく身元の特定が進まなかったが、数日後、妻が行方不明になったという届け出がある。死体はクヴァールフィヨルズルに住むエリーサベトというパイロットのものだった。
夫によると、エリーサベトは死体となって発見される前日からカナダ便に搭乗し、三日後に帰宅する予定だった。だが航空会社に確認すると、フライトの朝エリーサベトは自ら職場に病欠の連絡をし、行方をくらましていたという。さらにエリーサベトは子どもの頃アークラネスで過ごしていたが、なぜそこへ行ったのかがどうしても腑に落ちないと言った。
「妻はあの町に行くのを嫌がりました。いくら誘っても絶対に行かなかった。だから買い物に行くのはいつもレイキャヴィークかボルガルネースでした。アークラネスに行くほうがずっと便利なのに。異様なほどあの町を嫌っていた。憎んでいたといってもいい。」
エルマは過去を掘り始めた。
小さな港町ゆえの濃密な人間関係――時の堆積の中に深く埋もれていたエリーサベトの死の理由とは?
CWAニュー・ブラッド・ダガー賞(英国推理作家協会賞新人賞)受賞! 期待の新鋭による北欧アイスランド・ミステリの新たな傑作が登場!!
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この作品のレビュー
平均 3.6 (10件のレビュー)
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寒いっ アイスランドの閉塞感が漂う小さな港町。故郷に戻ってきた女性刑事がひた向きに奔走する #軋み
■あらすじ
幼年期から過ごした地元を出て別の街で勤務していた女性刑事だったが、とあるきっかけで故郷…に戻った。地元警察で職を得たが、間もなく殺人事件が発生。小さな街の観光地である灯台で女性の死体が発見される。
アイスランドの小さな村落の発生した事件を女性刑事は解決できるのか…
■きっと読みたくなるレビュー
アイスランドの小さな海辺の田舎町、寒く、寂しい舞台。
さらに犯罪の陰がずっと背景に見え隠れし、これも冷たい雰囲気をかもし出す。
寒っ! 冬は嫌いなんですよね。寒い寒い寒い。
とはいえ、小説は寒くないですよ。なかなか面白いです!
海外の警察小説といえば、やたら骨太な刑事が出てきて、凶悪な犯人による猟奇的殺人が発生する。主人公の刑事は警察内部と喧嘩しつつも、他の刑事にない圧倒的な強みを発揮して解決に導いちゃうのがありがち。
しかし本作の主人公は特段強みもない普通の刑事。むしろ人並みの家族や友人、悩みをもつ女性。そんな彼女が小さな街の大きな事件に翻弄されていく。
彼女が様々なことを思い悩みながらも、実直に事件に向き合っていく姿がめっちゃ可愛いの! ぐっと手に汗を握って応援しちゃう。
また彼女の周りにいる人たちも愛情あふれる人が多くて素敵なんですよね。
ただし犯罪の内容については、良いも悪いも不快感が抜群。
真相が徐々に見えてくるにつれ、腹立たしい思いで怒りに手が震えました。
北欧ミステリーらしい、全編通して暗い世界観で綴られた作品ですが、登場人物たちは温かい人々の描写も多く、しっとりと読める内容でした。
■推しポイント
事件発生!大規模な捜査網で解決! という感じでは、全くありません。
数人の刑事が小さな街の人間関係を紐といて、少しずつ真相に近づいていく。過去の出来事の魅せ方も上手く、じわじわ進行していくプロットが素晴らしかったです。
アイスランドの新人作家さんの作品とのことで、こんな本を読めてありがたい。翻訳者と出版社に感謝。次回作もあるようですので、引き続き追っていきたいと思いました。続きを読む投稿日:2023.02.07
このレビューはネタバレを含みます
あらすじ
レビューの続きを読む
主人公エルマは恋人との別れをきっかけに故郷アークラネスに戻り、警察の職を続ける。灯台付近で女性の死体が見つかる。被害者エリーサベトは幼い頃アークラネスに住んでいた。母親が酒浸りで辛い幼少期…を送っていたのに、なぜ戻ったのかが分からない。
地元名士の息子の妻マグネアのもとへエリーサベトは訪ねてきていた。さらに、彼女が幼い頃の友人サラは、幼いまま行方不明になっていて、名士夫妻の子供だった。
面白かったー。作者の初の長編。ちなみに作者は客室乗務員として働きながら、書き続けているそうだ。アイスランドの静かな雰囲気、さらに田舎町で、全員が顔見知りだったり、家族を知っている関係の中で起こる事件。捜査が難しそうだけど、捜査しているエルマも内面でいろいろ葛藤しながら表面はあまり感情的にならずに仕事していそう。
本国では他にも作品が発表されているようなので、ぜひ出版してほしい。続きを読む投稿日:2023.08.17
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