笑い神　M-1、その純情と狂気

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  ABAKAHEMP

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  M-1という呪縛と魔物

  2010年M-1決勝のせり上がりの時のエピソード。
  スリムクラブの真栄田はガチガチに緊張している時、相方の内間から思わぬ言葉をかけられる。
  
  「こんなポンコツの俺のために‥‥」
  
  内間は舞台…袖から、きらびやかなステージや豪華な審査員を目にし、あらためて感謝の念がこみ上げてきたのだ。
  一瞬、解散を切り出されたのかと怪しむ真栄田。
  さらに内間は「俺だけ見ててくれたら、絶対笑ってるから」と相方を励ます。
  ただ真栄田の緊張が本当に解れたキッカケは、この感謝の言葉や励ましではなかった。
  あんないいこと言って、いざステージに向かう際に内間が自然とズッコケたからだった。
  
  「あの瞬間、ふっと力が抜けましたね」
  
  マイクの前に立ったとき、二人の表情が幸福感に満ちたものになっていたのは、そのようなことがあったからだった。
  
  漫才をノンフィクションにして面白いのか?
  例えば野球なら「江夏の21球」のように、リアルタイムで観戦した者であっても、山際の文章からその試合を追体験できるかもしれない。
  これまでにM-1で爆笑をさらった、数々の大ネタの面白さを文章化して、果たして同じように笑えるだろうか?
  ケンドーコパヤシに言わせれば「止めときなはれ」となるのだろう。
  
  ただ、漫才を終えた時に芸人が感じた手応え、M-1という魔物に振り回される重圧と苦闘、裏方で奮闘するABC局員など、舞台袖で視聴者には窺い知れないエピソードは堪能できる。
  それでもエピローグは、長過ぎるし余計だった。
  M-1自体が10年間でもたらしたものの総括に当てるべきなのに、笑い飯のコンビ仲や、なぜ彼らが同志である千鳥のような全国区の人気を獲得できなかったのか、その分析にページが費やされてしまった。
  
  確かに笑い飯の印象は強烈だ。
  千鳥のノブが受けたファースト・コンタクト時の笑い飯からの洗礼のエピソードは面白い。
  正規ルートから外れた「地下芸人」。
  かたやジョン・レノンだし、かたや軍服の彼ら。
  華やかな世界を想像していたのに「キモいおじさん」にしか見えない。
  
  「あの人たち変すぎて怖い」
  
  しかしノブのツッコミは笑い飯によって鍛えられる。
  集まれば大喜利が始まり、面白さを競い合う。
  ボケ合戦と、容赦のないダメ出し。
  まさに虎の穴。
  本書では、笑い飯と同時代を生きてしまった芸人たちの迷いや挫折も描かれる。
  ある者はそれまでのスタイルを変える。
  M-1がもたらした逆転現象。
  人気がなく不遇な時を過ごしていた者たちにスポットライトが当たった。
  
  毎年恒例M-1名物の審査員を審査する、お茶間テレビ視聴者の総審査員化現象は描かれていない。
  「あの点数はおかしい」「彼らの方が面白かったのに」など。
  審査の基準も大会ごとに揺らいでいる。
  どちらが面白いのかではなく、どちらがふさわしいか。
  あるいは一番笑いをとった方なのか、これまでない斬新な新しさを評価するのか。
  ただ実は、出場している芸人たちは、会場のうねりを感じてハッキリと勝敗の行方を悟ることの方が多い。
  ネタを見ていなくても、遠くにいても、肌で感じれる。
  それほどまでに容赦なく残酷に、己のテンカウントを耳にする。続きを読む

  投稿日：2024.02.15

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  stkmdf

  笑い飯を間接的に産んだのがおぎやはぎだったとは初めて知った。
  トータルテンボスが爆発した回のオールザッツは生で観ていた。
  ケンドーコバヤシの著者に対する「あんたのやってることが1番寒いですよ」という言…葉がなんの冗談でもない強い言葉だったんだろうなと思った。
  読み応えありました。
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  投稿日：2024.05.18

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