誰も断らない こちら神奈川県座間市生活援護課
篠原 匡(著者)
/朝日新聞出版
作品情報
生活困窮者支援の取り組みで注目を集めている神奈川県座間市。「誰も断らない」をモットーに、官民がタッグを組み困窮予備軍にも救いの手を差し伸べている。人口13万人ほどの小さな自治体で奮闘する、型破りな職員たちの姿を追う渾身のルポ。
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商品情報
- 著者
- 篠原 匡
- ジャンル
- 教養 - ノンフィクション・ドキュメンタリー
- 出版社
- 朝日新聞出版
- 書籍発売日
- 2022.06.20
- Reader Store発売日
- 2022.06.20
- ファイルサイズ
- 3.9MB
- ページ数
- 272ページ
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この作品のレビュー
平均 4.0 (14件のレビュー)
-
「生活保護制度の存在は知っていたが、生活困窮者自立支援法という法律ができたことも知らなければ、生活保護とは別の第2のセーフティネットとして自治体が自立相談支援事業を進めていることも、自治体や民間団体が…困窮者の自立に向けて奔走していることも知らなかった。…無邪気に「知らない」「知らない」と書いているが、正確に言えば、「見えていなかった」ということだと思う。」
「今回、相談者だけでなく、支援する側のヒューマンストーリーを書き込んだのは、様々な思いを抱えて支援する人々の存在を伝えたかったためだ。同じような使命感を持って活動している人は大勢いるだろう。生活困窮の実態だけでなく、本書を通して、そういった人々にも目を向けるきっかけをつくれればと考えている。」
ー本書エピローグより
本書はタイトルにあるように、神奈川県座間市生活援護課の日々の奮闘、困った人を「誰も断らない」という信条のもと、NPO法人など様々な所と連携して支援している実態を取材したものである。
事例とともに、一つとして同じように困っている人はいない、不幸は一つとして同じ形をしていない、そのような家庭や事情を抱えた人々に対してどのような包括的な支援を行っているかが豊富に書かれており、非常に読み応えがある。
読みながら、自治体がこのような支援をすることができるのかと感動すら覚えた。このような自治体が増えれば、このような支援のあり方を模索する人たちがこれからも居てくれれば、生きていく中で希望が持てる。読んでいて、そうも思える。
また、支援する側が一方的に支援される側に与えるだけではない。
支援を受ける人たちから学ぶこともある。
座間市生活援護課の課長である林さんは、支援を受け、施設に通う若者と「なぜ働くのか」ということを話し合う機会があった。
その時とりわけ重い障害を抱える若者が言った言葉。「それが、僕の仕事だから」。
この言葉に、林さんは「人間には、それぞれ得意なことと不得意なことがある。何でも器用にできる人もいれば、一つのことに注力するのが得意な人もいる。今の世の中は生産性や創造性という言葉で人間の能力に優劣がつけられているが、それぞれの場所でできることに全力を尽くせばそれでいいはずだ。」という当たり前のことに気付かされる。
読んでいて、なぜか一番印象に残った言葉だ。
それぞれの場所でできることに全力を尽くす。
そこに全ての本質がある気がしたのだ。
最後の、座間市の林さんと、林さんが座間市の連携の形を作り上げるうえで参考にした滋賀県野洲市で活躍した生水さんとの対談も見逃せない。経験豊富で、福祉に全力を尽くしてきたお二人の言葉には含蓄がある。
このような方々がいることに、福祉に希望を見出すことができ、また福祉というものに以前にも増して興味が湧いた。
ぜひみなさん読んでほしい。
目次はブクログさんが紹介ページで書いてくれているので、今回は割愛させていただく。
もっと福祉について知りたい、学びたい。
そう思わせてくれる一冊なので、本当にぜひ読んでほしい。続きを読む投稿日:2023.06.20
弱者のための社会福祉を支える、市役所職員さんの静かなる闘争と、そして必死に生きる市民達の思いやそこに至る経緯がぎゅっと詰まったドキュメンタリーのような作品。公の機関では本当にいろんな事情の人を相手する…。その大変さに脱帽だし、わたしもちょうど生活保護を考えて自分の自治体の窓口に電話したけど、とても優しくて、心がすこしおだやかになった。いろんな話を聞いて、どんな人にもやさしく、本当に公的援助が必要か、必要ならどんな援助が必要かを判断しつつ、傾聴するのは対応をするのは大変だろうに、真摯に話を聞いてくれた。ドラマ「マザー」で冷たくあしらわれるイメージだった生活保護の現場のイメージを大きく変え、市民のために働くその先駆けとなった自治体ならではの作品。このマインドは、ぜひみんなで共有したい。共有できれば、世界は、日本は、もっと優しい国になるはず。続きを読む
投稿日:2024.03.06
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