未完の敗戦
山崎雅弘(著)
/集英社新書
作品情報
なぜこの国は人を粗末に扱うのか?
その根本原因に迫る!
コロナ対策、東京五輪強行開催、差別やハラスメント、長時間労働、低賃金・・・・・・。
日本の組織はあまりにも人間を、人の命や暮らしを、軽視していないか?
こうした状況と酷似するのが、先の戦争中の日本社会だ。
本書では、大日本帝国時代の歴史を追いながら、その思考の構造を明らかにし、今もなおその精神文化が社会のあちこちはびこる事実を数多くの事例を通して検証。
敗戦で否定されたはずの当時の精神文化と決別しなければ、一人一人の人間とその暮らしが尊重される「民主」社会は実現しない。
仕方ない、という思い込みとあきらめの思考から脱却するためのヒントと道筋を提示する書。
【「はじめに」より】
日本人は、なぜ死ぬまで働くのか。
日本の経営者は、なぜ死ぬまで社員を働かせるのか。
弾薬や食糧などの補給物資を送らずに「目標の達成」を前線の兵士に要求した、先の戦争における大本営(戦争指導部)と、給料を上げず休息も十分に取らせずに「成果」を現場の社員や労働者に要求する、現代の(すべてではないにせよ、無視できないほど多い)経営者たちの間には、同じ思考形態が共有されているように見えます。
それは、外国人技能実習生と呼ばれる低賃金労働者と、戦争中の東南アジア植民地で徴用した「労務者」との共通点にも見られます。
彼らは共に、日本という国や日本企業の利益のために、苛酷な労働環境で道具のように酷使され、搾取される存在です。
こうした現代における社会問題を解決・改善する糸口として、本書は先の戦争における「大日本帝国型の精神文化(思考法)」に現代の視点から改めて光を当て、さまざまな角度から、その精神文化の構造を読み解いていきます。
(中略)
大きな「全体」のために奉仕や犠牲を強いられることなく、一人一人の人間が大事にされる社会を創るために、本書の論考がお役に立てれば幸いです。
もっとみる
商品情報
- シリーズ
- 未完の敗戦
- 著者
- 山崎雅弘
- 出版社
- 集英社
- 掲載誌・レーベル
- 集英社新書
- 書籍発売日
- 2022.05.17
- Reader Store発売日
- 2022.05.24
- ファイルサイズ
- 3.5MB
- ページ数
- 304ページ
以下の製品には非対応です
この作品のレビュー
平均 3.9 (8件のレビュー)
-
サブタイトルは「この国は、なぜ人を粗末に扱うのか?」。本書の主張は「大日本帝国」的な、国・会社・集団の都合を第一に考えて、個人を尊重しない考え方が、長時間・低賃金労働などの現代の日本の悪状況を作り出し…ている、ということ。会社のために低賃金・長時間で働く過労死は「特攻」となんら変わらない。
その根本原因は今でも残る「大日本帝国」的な精神。ドイツがナチスを完全悪として消し去ろうとしていることと対象的に、現代でも「特攻」を軍指導部の狂った作戦と同調圧力による犠牲ではなく、国を守る英雄的な行為と考える人が一定数いる。大日本帝国の信奉者だ。まさしく敗戦が完結していない、ということだろう。次は本書からの引用だが、現代でもよく見られる。
目的を達成できるか否かという「可能性」が、その目的を達成するための「努力」にすり替わり、目的を達成する「努力の尊さ」が「その努力において自分を犠牲にすることの尊さ」にすり替わる。
それらの大日本帝国的な精神論・考え方は単なるイデオロギーにとどまらず、批判的な考え方の欠如・権威への盲目的追従となり、現実的に、日本の発展の妨げとなり競争力・国力を削ぎ続け、失われた30年(もっと続く?)となっている。 大日本帝国時代(1889-1945)の57年よりも日本国時代(1947-2022)の76年ほうが、はるかに長い。いいかげんに現代に適応しないといけない。
憲法が「日本国憲法」から「大日本帝国憲法」に変わろうとしている、今こそ読んでおくべきかもしれない。続きを読む投稿日:2022.06.05
このレビューはネタバレを含みます
子どもにとっては脅迫に近い情緒的「平和教育」のせいで日本近代戦争史に関わると祟られるようで恐ろしく、エンタメにしても読み物にしても全般的に避け気味だったので、目から鱗の情報ばかりで面白かった。
レビューの続きを読む
まさ…か朝鮮戦争によるアメリカの圧力で戦後日本の民主主義形成が阻害されたとは。あれが1950年だから、つまり、たったの5年間しか「大日本帝国」の支配層が表舞台から追いやられていなかったわけか。これはショック。てっきり昭和天皇のラジオ放送のあと日本人全員で反省してすべて刷新したのだとばかり思っていた。
戦時中の徹底した人命軽視の方針も、「日本古来の考え方」でも「サムライ魂」でもなく、軍国主義国家をうまく回すために1930年代に新たにでっちあげた教義だった。そして、天皇を守るために死んだ楠木正成を過剰に祭り上げたり、それまで忘れられていた『葉隠』を都合よくトリミングしたりして、「お上のために命を積極的に犠牲にするカッコいい武士」のイメージがいつのまにかできあった。まるで歴史ファンタジー創作か新興宗教の教義ようだ。
なのに、漫画『シグルイ』など読んでいると、かつての武士はみんなマゾヒストだったのかと思ってしまう。あれこそ被虐趣味のファンタジーであるのに、どこかで本当であったような気がしてしまう。これもまた今の日本人の意識に大日本帝国型の精神文化が温存されている証拠だろう。
靖国神社があれほど問題視される理由も理解できた。単なる神社ではなかった。「敵を倒したら英雄」を「死んでこそ英雄」にすり替えるための装置として戦時中利用されていた。つまり、非人道的滅私奉公の象徴なのだなと。そりゃ問題視しないと危ない。
「死んでこそ英雄」がまかり通れば、いくら死人を出してもトップは責任を問われないで済む。責任逃れに全力を尽くして本末転倒になってしまう日本人トップらしい方法だ。税金を使って育てた前途有望な若者たちをどんどん使い潰して廃人を量産するブラック企業と同じ無責任さと独善性を感じる。
敵国人捕虜およびアジア人労務者の扱いも同様にむごい。ジャングルの鉄道建設のためにたったの1年3ヶ月間で 9万8千人も死者を出している。満足な通訳も食事もなく、1日あたり215人死亡するジャングルの工事現場とはどんなだったろう。そこら中死体だらけか。戦時中で神経が麻痺してるとは言え想像すると気が遠くなる。
こういう、金も権力もない人たちの命が物のように扱われる点で、大日本帝国型の精神文化と新自由主義は真逆なようでいて、実は親和性が高いのではないか。定期的に死人を出して隠蔽するアマゾン倉庫を思い出す。
国内(既得権益の保持および増強)と国外(多国籍企業および海外資本家への市場の開放)の思惑が一致しているからこそ、自民党の議員が靖国神社を参拝するのでは?命など惜しむな、人権意識も捨てて命ぜられるまま働けと。もちろん、美しい日本を守るやら大日本帝国の栄光云々なんていうのは信者向けのファンタジーでしかない。そもそも、戦時中と違ってこのご時世では非現実的かつ空疎に響く。
現代の自称「保守」が全然保守主義ではなく、薩長藩士から続く「革新」路線を受け継いでるとか、日本会議が日本国憲法を目の敵にしている理由なども、色々と分かりやすく説明してあり面白かった。
ただ、日本人が論理よりも情緒や空気を優先しがちなのをすべて教育のせいにするのは違うのでは。むしろ日本独自の社会構造によるものが大きいと思う。確かにGHQの占領下で作られた文部省の『新教育指針』による民主主義教育がそのまま継続されていれば、今よりは多少マシな民主主義社会ができていたかもしれないが、多国籍企業が国家を越える権力を持つような時代では、単純に民主主義を各自で標榜するだけでは弱いのでは。何かもっと有効な方法はないものか、いやもう遅いのか、とまたしても最後には頭を抱える読書だった。続きを読む投稿日:2023.07.24
新刊自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
※新刊自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新号を含め、既刊の号は含まれません。ご契約はページ右の「新刊自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される「増刊号」「特別号」等も、自動購入の対象に含まれますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると新刊自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約・新刊自動購入設定」より、随時解約可能です続巻自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
- ・優待ポイントが2倍になるおトクなキャンペーン実施中!
※続巻自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新巻を含め、既刊の巻は含まれません。ご契約はページ右の「続巻自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される特別号等も自動購入の対象に含まれる場合がありますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると続巻自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約自動購入設定」より、随時解約可能ですReader Store BOOK GIFT とは
ご家族、ご友人などに電子書籍をギフトとしてプレゼントすることができる機能です。
贈りたい本を「プレゼントする」のボタンからご購入頂き、お受け取り用のリンクをメールなどでお知らせするだけでOK!
ぜひお誕生日のお祝いや、おすすめしたい本をプレゼントしてみてください。※ギフトのお受け取り期限はご購入後6ヶ月となります。お受け取りされないまま期限を過ぎた場合、お受け取りや払い戻しはできませんのでご注意ください。
※お受け取りになる方がすでに同じ本をお持ちの場合でも払い戻しはできません。
※ギフトのお受け取りにはサインアップ(無料)が必要です。
※ご自身の本棚の本を贈ることはできません。
※ポイント、クーポンの利用はできません。クーポンコード登録
Reader Storeをご利用のお客様へ
ご利用ありがとうございます!
エラー(エラーコード: )
ご協力ありがとうございました
参考にさせていただきます。