シン・論 おたくとアヴァンギャルド
大塚英志(著)
/太田出版
作品情報
庵野秀明の「シン・」シリーズは、「おたく」の歴史を踏まえた自覚的な「つくり直し」である。その方法と美学の出自を探る、挑発的芸術論。
戦後の「おたく」表現のフェティシズムや美学の出自は、戦時下に狂い咲いたアヴァンギャルドが、戦後、政治的にウォッシュされたものであるというのがぼくの一貫した主張だが、「シン・」シリーズは、
その美学や方法を「正しく」運用し直し、戦後おたく表現を「修正」する試みなのだ。成田亨ウルトラマンの初期デザインの採用などその際たるものだろう。しかし、それは「特撮」とか「アニメ」とか
戦後のジャンルに必ずしも閉じたものでなく、もう少し広い。その「広さ」が重要だ。 (「あとがき」より)
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この作品のレビュー
平均 2.5 (2件のレビュー)
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基本的に、読んで自分として受け入れられなかったものについては投稿しないようにしているのだが、あくまで自分の頭の整理として。
シン・論。
エヴァブームについて、私は元ネタを知っている、はっきり言って浅…いよね、ということを力説し続けているだけの本。ざんねんながらそれが私の感想。
大塚さんの他の本はもっとおもしろかったように思うのだがなあ、、、
いや、例えば、「第三村」がキャンベルの神話理論で読み解ける、とか非常になるほど感がある。また、諸星大二郎のマンガが巨大化綾波に与えた影響なんかも知的興奮をそそられる。エッフェル塔の造形、その撮影技法の元ネタなんかも実におもしろい。
が、著者は、自分の論考が顧みられず、ネットに素人考察が満ち溢れていること、そしてその人たちが庵野氏ほか製作者と楽しく響き合っていることがおもしろくないらしい。お前ら浅いぞ、と言いたくて仕方ないらしいのだ。
おそらく、これは私の思い込みではないと思う。著者はこんな書き方をしている。
「庵野秀明を含む1960年前後生まれのポピュラーカルチャーの創り手の教養の幅はその程度の広がりはあり、(以下略)」(p18)。
前後の文脈がなくても、この著者の上から目線は明瞭だろう。自分の「教養の幅の広がり」はもっとずっと広い、と思っていなかったら「その程度の」なんてそうそう書けるものではない。
では著者の教養の広がりとは何か。
「、、、『シン・エヴァ』が「成熟」を主題とするある種のビルドゥングス・ロマンだという議論を散見するが、そうであればまず必要なのは、その「ビルドゥング」のアニメーション史的な意味合いである。当然、その議論は「物語」の水準でなくアニメーションの表現の水準でなされるべき問題であるのは言うまでもない。」(p182)
え、どうしてそうなる?
ビルドゥングスロマンであることを考える上でなぜまずアニメーション史から入らないといけないのか?
そしてなぜ、議論の立脚点が物語でなくアニメーションの表現でないといけないのか。「言うまでもない」ってほど自明か?
この辺、素人にはいささか不親切なのだ。
と、思って読み進めると説明なく著者が持ち出すのはやっぱり手塚治虫。どうしても自分が詳しい、エヴァ好きの若者が知らない土俵で相撲が取りたいらしい。
手塚はこうだったああだった。そこまでさかのぼらないと意味がない。
これが著者の「教養の広がり」なのだろうか。
、、、という疑問に対し、著者が取っている基本的な立場は「言わずもがなのことを語らねばならない時代なのが難儀なのである」(p252)、というもので、こんなこともわからない奴らが考察とか、、、やれやれ。が、要するに著者の言いたいことなのである(と、私は解釈せざるを得なかった)。
アニメを分析的に読み解く上で、深く歴史を遡るという本来エキサイティングなはずの営みが、なにかこう虚ろになってしまうのは、たぶん著者が書きながらワクワクしていないからだろう。そんなことを思った。
続きを読む投稿日:2022.08.16
書名と副題に惹かれて手に取ったが、そういううっかりした読者をぷいっと拒絶する本だった・・><
これは「シン・・の考察本」ではないそうである。
というわけで全然さっぱりわからなかったが、ひたすらローアン…グルの鉄塔について書き続けられてたり、著者は手塚治虫研究者だけあって引用されている手塚の言葉に興味深い部分あった。
P185・193 ビルドゥングするジャングル大帝レオ ビルドゥングするゴジラ(最初は蛭子ヒルコだったシン・ゴジラ)
ビルドゥング=ここでは成長・成熟・形成・変形・・・・続きを読む投稿日:2022.08.09
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