六つの村を越えて髭をなびかせる者
西條奈加(著)
/PHP研究所
作品情報
直木賞作家の新たな到達点! 江戸時代に九度蝦夷地に渡った実在の冒険家・最上徳内を描いた、壮大な歴史小説。本当のアイヌの姿を、世に知らしめたい――時は江戸中期、老中・田沼意次が実権を握り、改革を進めていた頃。幕府ではロシアの南下に対する備えや交易の促進などを目的に、蝦夷地開発が計画されていた。出羽国の貧しい農家に生まれながら、算学の才能に恵まれた最上徳内は、師の本多利明の計らいで蝦夷地見分隊に随行する。そこで徳内が目にしたのは厳しくも美しい北の大地と、和人とは異なる文化の中で逞しく生きるアイヌの姿だった。イタクニップ、少年フルウらとの出会いを通して、いつしか徳内の胸にはアイヌへの尊敬と友愛が生まれていく・・・・・・。松前藩との確執、幕府の思惑、自然の脅威、様々な困難にぶつかりながら、それでも北の大地へと向かった男を描いた著者渾身の長編小説!
もっとみる
商品情報
- シリーズ
- 六つの村を越えて髭をなびかせる者
- 著者
- 西條奈加
- 出版社
- PHP研究所
- 書籍発売日
- 2022.01.11
- Reader Store発売日
- 2022.01.12
- ファイルサイズ
- 1MB
- ページ数
- 368ページ
以下の製品には非対応です
この作品のレビュー
平均 4.0 (25件のレビュー)
-
以前読んだ梶よう子さんの「噂を売る男」のシーボルト事件でちらっと出てきた最上徳内。シーボルトに蝦夷地の地図を渡したにも関わらずお咎めなしだったという話に、何か黒い繋がりがある人なのかとイメージしていた…が、全く違う人だった。
元々算術が得意で算術で身を立てるつもりだった徳内は、師の本多利明の影響で蝦夷地見分隊に加わる。その旅でその後の人生に大いなる影響を与えることになるアイヌの人々との出会いがある。
当時のアイヌの人々の置かれた状況には胸が痛む。松前藩と運上屋と呼ばれる一部の商人たちに徹底的に搾取され抑えつけられている。
アイヌの人々の訴えは、「農耕を行いたい」「和語(日本語)を覚えたい」「自由な民として独立したい」というごく当たり前のことだった。裏返せば、それすら許されない厳しい状況だった。
徳内は「本当のアイヌの姿を世に知らしめたい」「松前(藩)の軛(くびき)から放たれるよう手助けしたい」という思いで蝦夷地の各地を旅する。
だが彼の思いはなかなか実現しない。
松前藩の妨害もだが、将軍・家治の死による老中・田沼意次の失脚で彼らの文字通り命がけの蝦夷地見分は頓挫する。さらにはアイヌの人々の反乱(蜂起)後には上役の青島と共に入牢の憂き目にまで遭っている。
それにアイヌの人々と一口にいっても広い蝦夷地が様々なな顔を見せるのと同様、日本に近い者もいればロシア(赤人)に近い者もいて、一枚岩ではない。
徳内は士分でなかったためと師の本多らの助けにより釈放されたが、青島はついに帰らぬ人となった。
松前藩のように弾圧するのはもってのほかだが、では幕府が直轄地として蝦夷地を支配するのが良いことなのかとの葛藤も徳内にはある。
和語を教えることがアイヌの人々の言葉や文化を奪うことにならないのか、ロシア領となる方がアイヌの誇りが保たれるのではないかとすら考えたりしている。
現在のアイヌの人々の環境を考えれば、徳内のそうした葛藤も理解できる。
物語はこの辛い場面が山場となっているため、その後の徳内の働きについてはサラっと流される程度だったのが残念だった。出来れば松前藩によるアイヌの人々への弾圧がどうなったのか、アイヌの人々へ農耕を教えることが出来たのかなどを知りたかった。
アイヌ人の友人たちが魅力的だった。親友であり弟子であり弟のような存在であるフルウ、最初に出会った友・イタクニップ。
見た目こそ荒々しいが、中身はとても穏やかで争いを好まない優しい人々だった。文字は持たないが言葉は日本語にない発音がたくさんあるほど豊富だし、神話や昔話も多い。文明的だし知性もある。
それから徳内の妻ふでが豪快で素敵な人だった。師匠の本多始め算術仲間や青島始め見分隊の人々も役人らしからぬところもあって魅力的だった。
タイトルはイタクニップによる謎かけだった。それを知った瞬間が徳内がアイヌの人々や蝦夷地に掛ける思いが新たになった瞬間かも知れない。
なぜシーボルトに蝦夷の地図を見せてもお咎めがなかったのかという点についても分からないままだった。だが徳内がなぜ孫のような年齢のシーボルトに蝦夷地の話をしたのかは理解できた。蝦夷地やアイヌの人々の本当の姿を伝えたかったのだと思う。
蝦夷地探検というと間宮林蔵が有名過ぎて、最上徳内のことは知らなかったので、この作品で彼や見分隊に参加した沢山の役人たちのことを知ることが出来て良かった。
読書はこうしたきっかけや繋がりがあるから面白いし止められない。続きを読む投稿日:2022.07.27
江戸時代中期から後期にして、蝦夷地に9度渡り、蝦夷地のエキスパートとして人生を全うした最上徳内の半生記を描く。
この時代に極寒の未開の地である蝦夷地とその地に住むアイヌの人達に真摯に向き合い、これほ…どまでに彼の地や彼らを愛した人物がいたのだなぁと深く感銘した。幕府や松前藩の身勝手な思惑に翻弄され、有らぬ仕打ちを受けつつも諦めずに蝦夷地に向かおうとする彼の不屈の精神は凄い。フルウをはじめ、彼を慕うアイヌの人たちも魅力的に描かれ、彼の蝦夷地行きを陰ながらに援助する周りの人たちも皆、魅力的で、ただ半生記を綴っているだけなのに、1冊丸ごと面白く読めた。本書では4度目の蝦夷地行きが決まるところで終わるが、wikiによればこの後もなかなかの波乱万丈な様子(何たって9度も渡っているから)。晩年、シーボルト事件にかかわったり、82歳で生涯を閉じているところからして、彼が無事に長寿人生を終えているのが素直に嬉しく思った。続きを読む投稿日:2023.04.04
新刊自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
※新刊自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新号を含め、既刊の号は含まれません。ご契約はページ右の「新刊自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される「増刊号」「特別号」等も、自動購入の対象に含まれますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると新刊自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約・新刊自動購入設定」より、随時解約可能です続巻自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
- ・優待ポイントが2倍になるおトクなキャンペーン実施中!
※続巻自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新巻を含め、既刊の巻は含まれません。ご契約はページ右の「続巻自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される特別号等も自動購入の対象に含まれる場合がありますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると続巻自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約自動購入設定」より、随時解約可能ですReader Store BOOK GIFT とは
ご家族、ご友人などに電子書籍をギフトとしてプレゼントすることができる機能です。
贈りたい本を「プレゼントする」のボタンからご購入頂き、お受け取り用のリンクをメールなどでお知らせするだけでOK!
ぜひお誕生日のお祝いや、おすすめしたい本をプレゼントしてみてください。※ギフトのお受け取り期限はご購入後6ヶ月となります。お受け取りされないまま期限を過ぎた場合、お受け取りや払い戻しはできませんのでご注意ください。
※お受け取りになる方がすでに同じ本をお持ちの場合でも払い戻しはできません。
※ギフトのお受け取りにはサインアップ(無料)が必要です。
※ご自身の本棚の本を贈ることはできません。
※ポイント、クーポンの利用はできません。クーポンコード登録
Reader Storeをご利用のお客様へ
ご利用ありがとうございます!
エラー(エラーコード: )
ご協力ありがとうございました
参考にさせていただきます。