現代語訳 暗黒日記―昭和十七年十二月~昭和二十年五月
清沢洌(著)
,丹羽宇一郎(編集・解説)
/東洋経済新報社
作品情報
大東亜戦争は非常なる興亡の大戦争である。筆を持つ者が、後世のために、何らかの筆跡を残すことは、その義務である。すなわち書いたことのない日記をここに始める。将来、大東亜外交史の資料とするためである。神よ、日本を救え。
昭和十八年十月一日 清沢 洌
***
日本人はもう二度と戦争などするはずがない。恐らく日本人のほとんどはそう考えているだろう。しかし、その確信は極めて頼りない、むしろ大きな勘違いであることは、清沢洌の『暗黒日記』を読めばわかるはずだ。
清沢の日記に綴られている戦時下の日本人とその社会の姿は、驚くほど現代と似ている。まるで我々の現在のありさまが清沢に見透かされていたかのようだ。相手変われど主変わらずというが、何かひとつきっかけを得たならば、日本人はたちどころに、戦前のような好戦的な国民になってしまいかねないという危惧さえ覚えずにはいられない。
戦争というのは、どこまで行っても手段のはずだ。それも非常手段だ。目的ではない。にもかかわらず、戦時日本では、いつの間にか手段であるはずの戦争が目的となってしまった。
なぜ我々は、いや権力者は、殺し合いの決断をしてしまったのか。なぜ我々は戦争国、神の国日本への橋を渡ってしまったのか。なぜ300万人を超える犠牲者を出すまで戦争をやめることができなかったのか。そして、今の我々日本人のどこがその後変わったと言うのだろうか。問題の答えも、また『暗黒日記』の中にある。――はじめにより
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この作品のレビュー
平均 5.0 (2件のレビュー)
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暗黒日記の前史
昭和十七年十二月~昭和十八年十二月
─日本はなぜ勝ち目のない戦争に突っ込んでいったのか
昭和十九年一月~九月
─政治の強権化と情報統制に逆らえないメディア
昭和十九年十月~昭和二十年五…月
─現実とかけはなれた銃後の国民意識
暗黒日記の後の日本続きを読む投稿日:2022.01.06
戦前、アメリカ留学を経験し、新聞記者として働いた後、フリーランスの外交評論家活動した清沢洌がこっそり書いていた、昭和17年から20年にかけての日記です。
その時代と言えば太平洋戦争真っ只中なわけです…が、私たちが想像する戦時中となんか違う。
むしろ、国内を覆う空気感とか政治家の言動とかが、コロナ禍の日本とあまりにも似ていてびっくり。
日記と言っても、ニュースや身の回りの出来事に対する愚痴や感想といった感じで、私たちがTwitterやFacebookに普通に書いているものと大差ないだけに、この人の目を通して、当時の世の中が今の世の中と重ね合わさって感じられるのです。
それだけに、何か些細なきっかけ一つで、あの時代をまたやってしまいそうな、他人事でない感覚になります。続きを読む投稿日:2022.01.19
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