私は今日、顔も知らぬひとのもとに嫁ぐ――。雨月智世(うづき ともよ)、20歳。婚約者の玄永宵江(はるなが しょうえ)に多忙を理由に結納をすっぽかされ、一度も会えぬまま今日に至ったのだ。初めて顔を合わせた彼は、恐ろしいほどに整った顔と、美しい黒曜石のような瞳を持つ美丈夫だった。智世を見つめる彼の目に浮かんでいたのは紛れもない歓喜。「嫁に来てくれて本当に嬉しい」――。何故宵江がここまで想ってくれるのか分からぬまま、智世は玄永家での生活を始めるが、宵江は相変わらず多忙らしく、すれ違い生活が続く。この結・・・
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新婚旅行以降、宵江との子どもを授かることを心待ちにしている智世。しかし、屋敷で「半妖の子どもが迫害されて苦しむ」という筋書きの芝居のビラを見てから、化け物を産み落とす悪夢を見るようになり――。
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帝都の平和を脅かす土蜘蛛一族との戦いを終え、穏やかで幸せな結婚生活を送る智世と宵江。けれど相変わらず忙しく任務に邁進する宵江の姿を見た智世は、自分も何か打ち込めるものを探したくなる。一方、宵江は智世に結婚指輪を渡すタイミングを計っていた。しかし機を逸したまま新婚旅行の日に・・・・・・。旅先の厳島周辺には、若い女性が神隠しに遭うという噂があった。女性たちは数日間行方不明になった後、決まってずぶ濡れで発見され、体に傷はないものの、行方不明になっている間の記憶が一切ないという。周辺には水神を奉る土着信仰があり、水神による神隠しだと信じられているらしい。 智世と宵江は穏やかに旅行を楽しむが、些細なきっかけで気まずい雰囲気に。指輪を渡すタイミングがわからず困っていた宵江の様子を智世が訝り、隠し事があるのではとショックを受けたのだ。智世は頭を冷やすため一人になるが、厳島にたくさんいる猿の中に、なぜか尾びれが生えている影がいくつかあるのを見つける。実はそれは「猿鬼(さるおに)」という、水神の使い魔だった。智世は猿鬼たちに連れ去られてしまい――。
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私は今日、顔も知らぬひとのもとに嫁ぐ――。雨月智世(うづき ともよ)、20歳。婚約者の玄永宵江(はるなが しょうえ)に多忙を理由に結納をすっぽかされ、一度も会えぬまま今日に至ったのだ。初めて顔を合わせた彼は、恐ろしいほどに整った顔と、美しい黒曜石のような瞳を持つ美丈夫だった。智世を見つめる彼の目に浮かんでいたのは紛れもない歓喜。「嫁に来てくれて本当に嬉しい」――。何故宵江がここまで想ってくれるのか分からぬまま、智世は玄永家での生活を始めるが、宵江は相変わらず多忙らしく、すれ違い生活が続く。この結婚について、そして自分のことを本当はどう思っているのか、何も話し合えぬまま、智世は不安な日々を過ごす。だが、宵江は常に智世に優しく、また玄永家の屋敷のものたちも智世に気軽に話しかけてくれるため、智世の心もほぐれ、新生活を楽しめるようになってきた。そんなある日、屋敷の書庫で智世は玄永家の秘密を知ってしまう。実は玄永家は人間ではなく狼の一族。先祖代々時の政権に仕え、国の平和を乱す異形に対処する「異形専門」の警察部隊だったのだ。しかも、そこには自分の生家・雨月家の家系図も。なんと雨月家は代々、神に仕える巫女――神凪(かんなぎ)の家系だったという。自分はもしかして、宵江に捧げられた生贄なのか・・・・・・。疑問が頭をうずまくなか、何も教えてくれない宵江に智世は不安を覚えるが、宵江の溺愛ぶりは全く変わらずで調子が狂ってしまう。その頃から、智世が嫁ぐ前から横行していた辻斬りが激しくなり、宵江の周りもきな臭くなり、智世は自分に出来ることはないか苦悩するが・・・・・・。これは、優しい旦那様と一生懸命な花嫁の、幸せな物語。イラスト/烏羽雨
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