青年
森鴎外(作)
/岩波文庫
この作品のレビュー
平均 2.3 (4件のレビュー)
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森鴎外が夏目漱石の三四郎に触発されて書いた長編小説。
作家志望の青年を主人公に据えて、著名な作家の元を訪れたり、懇意になった未亡人に影響を受ける話。
森鴎外といえば擬古体で書かれた舞姫が特に有名で、そ…の印象があり、非常に読みにくい作家というイメージがあります。
一方 、本作、青年は言文一致の「である調」で書かれていて、森鴎外作品としては比較的読みやすいのですが、それであっても分かりにくい、親しみにくい作品だと思います。
また、三四郎に影響を受けて執筆した作品ではありますが、「三四郎」とは似ても似つかない内容で、真面目、というか純粋培養が過ぎて世間知らずで夢はあるが行動はしない青年の、物理的な欲望から悩む物語となっています。
主人公は小説家を夢見て東京に出てきた「小泉純一」という青年で、彼が紹介状を持って大石路花という著名な文士の元を訪れるところから始まります。
序盤はそうして友人との出会いや文士との会話を中心にページが進むのですが、中盤、劇場で坂井れい子という未亡人と知り合います。
学者の未亡人だった坂井の家には本がたくさんあり、いつでも遊びにおいでと言われたため、ある日純一は坂井の家を訪れます。
そこで坂井と懇意になったことが彼の日記で記載されます。
作中、坂井は驚くほど小説を書かず、親が資産家のような記述があることから働かずに上野をブラブラしたり、こうして未亡人と懇意になったりします。
個人的には森鴎外の小説は面白みもなく、文章も先にも書いた通りわかりにくい、大した内容でもないのに妙に権威を主張した、持って回った言い回しをした書きっぷりをする作家だと思っています。
本作も、端的にいうと楽しむことができませんでした。
展開が分かりにくく、今起きているこのシーンが一体何の意味があるのか伝わらず、何より純一の思想、キャラクターに魅力が感じられなかったです。
序盤は内輪ネタが多く、自身である森鴎外や夏目漱石、そして正宗白鳥や木下杢太郎をモデルにしたと言われている人物が登場します。
そういった文学家達と近づくことで、純一の創作意欲が沸くかというと、そういうわけでもなく、淡々と日々を過ごします。
そして未亡人との出会い、三四郎では恋心は非常に淡く、情景描写と余韻からひょっとしてこの二人は実は引き合っていたのではないかと想起させるような書き方をしていたのとは対象的に、本作では純一が数ページ前で出会った未亡人と屋敷で行った艶めかしい出来事を日記に書き、以降はその煩悶が大きなウェイトを締めることになります。
その後、頭から離れない奥さんを追って箱根へ向かうのですが、個人的にはそんなことをしていないで、とりあえず小説を書きなさいよ、あるいは同年代の友人を見習って働けよと思いました。
そういったとこを考えないあたり、「青年」らしい純粋さの表れなのかとも思えるのですが、やはり純一の若さを感じるシーンというか、懊悩するシーンは多々あるものの、女々しさや無鉄砲さを感じるところもなく、私的には本作は何だというところがやはりつかめないままでいます。続きを読む投稿日:2019.08.11
小説家を目指して上京したのに全然書こうともせずに、時間をたっぷり使って暮らしている。自分は何者にもなってはいないのに、他人をいろいろ評価し綺麗な女中と並の女中とか思う。青年期とはそういうものなのだろう…。自分の内面をも冷静に観察できるのは作家を目指しているからなのか。それにしても必要以上にフランス語が入ってわたしは邪魔に思った。続きを読む
投稿日:2023.08.15
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