生きるためのフェミニズム パンとバラと反資本主義
堅田香緒里(著)
/タバブックス
作品情報
私たちはみな、資本主義という恒常的な災害の被災者である。パン(金)も、バラ(尊厳)も、両方よこせ!女性の活躍、ケア労働、路上生活、再開発、生活保護...あらゆる格差、貧困、分断の問題を最新のフェミニズムの視点から読み解き、国内外の事例から日常的で具体的な抵抗の方法を探る。気鋭の社会学者、初の単著。目次はじめにI パンとバラのフェミニズム/私たちはみな、資本主義という恒常的な災害の被災者である パンとバラのストライキ――ローレンスの移民女性労働者たちのストライキ 「活」という名の妖怪――パンを食わせずバラ(のようなもの)を差し出すネオリベラリズム 魔女は禁欲しない――パンもバラもよこせ! パンデミックにおけるケアインカムの要求II 個人的なことは政治的なこと/路上、工場、周辺の場から 紙の味 現代の屑拾い 無菌化された労働力商品たちの夜 「声」をきくことの無理III ジェントリフィケーションと交差性/日常の抵抗運動 クレンジングされる街で 猫のように体をこすりつけろ 抵抗する庭 「開発」と家父長制 差別の交差性(インターセクショナリティ) 路上のホモソーシャル空間 夜を歩くために
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この作品のレビュー
平均 3.7 (7件のレビュー)
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「私たちはみな資本主義という恒常的な災害の被災者である」というフレーズに惹かれて。1,2部は著者の体験と理論が見事に複合されていて素晴らしいと思った。
しかし、3部についてはクエスチョン。
タネさんの…エピソード。タネさんの死が「犬死」であることの意義について著者は力説するが、それは決してタネさんの声ではない。著者とタネさんという人物との個人的な(書かれていないことも含めての)関係性に裏打ちされた記述なのだとは思う。それでも。「無駄な死なんてないと思い込もうとする心性を憐れむように死んだ」や、「誰よりも~」というような記述は過度にタネさんという人物を美化しすぎているとしか思えない。それを第三者である学者が書くという暴力性(著者は無論その点にも自覚的ではあるのだが)。
(ちなみに犬死に上等!という著者の「意見」には賛成。タネさんの人生にそれを語らせてはいけないとやっぱり思うけど)
その点、ヤスさんとのエピソードは極めて示唆に富み、インターセクショナル•フェミニズム/セーファースペースについて考える上でも重要だと思う。続きを読む投稿日:2023.03.01
タイトル通り、たしかに本書の通奏低音として「フェミニズム」が流れている。ただ、一読した感想としてはもう少し射程が広く、女性を含めた弱者全般を扱ってるといったほうが正確。実際、社会的成功をおさめたアッパ…ークラスの女性による、いわゆるリーン・イン・フェミニズムには「偽装フェミニズム」「多様性の名の下での排除」と厳しい。
政府が進める女性活躍推進法や少子化対策にも批判的である。それは女性への支援でも女性の活躍でもなく、国のために「活用」しようという話でしかない、といった具合に。
上で挙げた「リーン・イン」の著者はハーバード大を卒業しFacebookのCOOを務め、子ども2人を育てる女性である。ことさら女性に限定せずとも世界有数のエリートといっていいし、努力もしたのは事実だろう。ただその生活は、エリートとはいえない無数の女性たちに支えられているのも事実である。
「そいつらは努力が足りないからだ」というのは視野が狭く一面的で、弱肉強食のネオリベ的競争原理に支配されたものでしかない…。
男性社会のなかで女性が活躍する話はみんな好きだ。「みんな」というのは、それを称揚するひとたちも、それに対する過剰な反発をするひとたちも含めて。
しかし、著者が書くようにすべての女性が輝かしく働いて子どもを産み育て、社会で活躍したいわけではない。どちらか片方で充分という女性もいれば、バリバリ働きたくもないし子育てもしたくないという女性もいるのは当たり前である。それに、家庭環境や教育水準、先天的な個人的要因などの諸条件によっては、そもそも活躍する可能性自体がない場合もある。
そして資本主義と結託したフェミニズムは、それらのひとたちを排除する。「活用」できないからだ。
本書が女性だけに限らない弱者を取り扱うのは中盤以降に多くなる。主に書かれるのはホームレスのことで、これは上に挙げた諸条件にあてはまりやすい属性である。
内容としては学術書ではないのでむずかしくない。
なにより、著者の言語感覚が優れていて小気味好く読める。続きを読む投稿日:2023.05.05
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