永遠の最強王者 ジャンボ鶴田<電子特別版>
小佐野景浩(著)
/ワニブックス
作品情報
<電子特別版>紙書籍に未収録の【電子書籍化に寄せて】を追加した電子特別版です。「普通の人でいたかった怪物」今でも根強い“日本人レスラー最強説”と、権力に背を向けたその人間像に迫る!天龍源一郎、長州力、川田利明、田上明、小橋建太、渕正信、秋山準、佐藤昭雄、和田京平、鶴田恒良(実兄)、池田実(日川高校バスケ部同級生)、鎌田誠(元中大レスリング部主将)、磯貝頼秀(ミュンヘン五輪代表)他、当時のコメントと多くの新証言をもとに、誰もが踏み込めなかったジャンボ鶴田の実像に、元『週刊ゴング編集長』小佐野景浩が初めて踏み込んだ大作。「鶴田の何が凄かったのか、その強さはどこにあったのか、最強説にもかかわらず真のエースになれなかったのはなぜなのか、総合的に見てプロレスラーとしてどう評価すべきなのか――などが解き明かされたことはない。もう鶴田本人に話を聞くことはできないが、かつての取材の蓄積、さまざまな資料、関係者への取材、そして試合を改めて検証し、今こそ“ジャンボ鶴田は何者だったのか?”を解き明かしていこう――」(著者より)【著者プロフィール】小佐野景浩 (おさの かげひろ)幼少期からプロレスに興味を持ち、高校1年生の時に新日本プロレス・ファンクラブ『炎のファイター』を結成。『全国ファンクラブ連盟』の初代会長も務めた。『週刊ゴング』創刊からは全日本プロレス、ジャパン・プロレス、FMW、SWS、WARの担当記者を歴任し、94年8月に編集長に就任。以後、同社編集企画室長、同社編集担当執行役員を務め、2004年に個人事務所『Office Maikai』を設立。フリーランスの立場で雑誌、新聞、携帯サイトで執筆。コメンテーターとしてテレビでも活動している。2006年からは、プロレス大賞選考委員も務めている。
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商品情報
- 著者
- 小佐野景浩
- ジャンル
- スポーツ・アウトドア - 格闘技
- 出版社
- ワニブックス
- 書籍発売日
- 2020.05.13
- Reader Store発売日
- 2021.06.25
- ファイルサイズ
- 31.9MB
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この作品のレビュー
平均 4.3 (12件のレビュー)
-
ジャンボ鶴田没後20年、その評伝が発刊。著者が週刊ゴングの元編集長・小佐野景浩という”プロレス界の住人”であることで、もうワタシの中では本書のヒットは読了前に確定した。
日本マット界史上最強のプロレス…ラーであると同時に、日本スポーツ史上最高のアスリートの一人であるとワタシが信じて疑わないジャンボ鶴田と同時代に生き、その全盛期をリアルで体感したことの幸せを、本書を通じてあらためて噛みしめた。
(もし著者が“住人”でない柳澤健あたりだったら、こんな読後感を持つことはなかっただろう。いや、そもそも著者が柳澤だったら、本書を手に取ることすらなかったに違いない。)続きを読む投稿日:2020.09.19
本の見た目の分厚さと、ページ数の多さ(592ページ)にたじろいではいけない。
なぜなら、プロレスに関して“ずぶの素人”の私のような者でも、デビュー前から引退までの間で次々と現れる鶴田の作り物でない本物…の伝説に読む手が止まらず、最後には「鶴田こそ歴代日本人最強レスラーだ!」という熱い思いを著者と共有できるようになったから。
そもそも私はプロレスに対する一定の考え方を持っていて、つまり、プロレスを「①スポーツ」「②ショウ」「③パンクラチオン(死闘)」を頂点する三角形のちょうど重心の位置にあるものと思っている。だからプロレスはスポーツではないとか、あれはショウだという議論は無意味だ。言い換えればどれにも当てはまると言える。つまり、3つのテリトリーの一部を含みつつも独立したジャンルがプロレスだと言えるのではないか。
こう考えると、アマレス出身の鶴田がデビューからしばらくはプロレスから少し浮いた中途半端な状態だったという記述も理解できる。なぜなら当初の鶴田はスポーツの方に寄りすぎていたということだ。だが鶴田が天才的だったのは、天性のパワー、センス、テクニックによってスポーツの枠を軽く越えて、「ショウ」と「パンクラチオン(死闘)」の領域を自分なりに取り込めたこと。(だと思う。)
一方で、私がプロレスをテレビで見ていた80年代は、プロレスが「ショウ」の方に片寄り出して一種の見た目の派手さ(いわゆるパフォーマンス)を競い始めた時期だったと思っている。だがそのころの鶴田はその恵まれた体躯からも実力者なのは間違いないものの、彼のプロレスの中に一種の「無難に置きにいったかのようなソツの無さ」を私は素人目で見ていた。
でもこの本を読んでよかった。鶴田のプロレスが無難だなんて大間違いだった。アグレッシブで、試合巧者。そして何よりも「観客に今ある最高のプロレスを見せるために自分がやれること」を流されることなく周到に体現できる人だったのだ。そして私がなるほどと改めて納得できたのは、鶴田の対戦相手の多くが鶴田を「疲れ知らず」とコメントしていることだ。もちろん疲れない人間なんて存在しない。では鶴田はどうしていたかというと、自分の攻撃によって荒れた息を何と相手の攻撃を受けながら整え、スタミナを回復させていたというのだ。攻撃の派手さが売りのレスラーの多くが試合後半に進むに従い疲労が蓄積するのとは逆に、岩盤が鉄板になるかの如くにマットの上で威容を強めていく鶴田の姿を想像してほしい。「怪物」と呼ぶに十分な資質ではないだろうか。
先にも書いたように、私はプロレスについては完全な素人なので、鶴田vs.長州、天龍、三沢、川田、etc.との具体的な戦いのほとんどが、今は記憶に残っていない。だが本書343ページからの「第9章 鶴龍対決」は一気に読めた。私が思い出したのはマンガ「柔道部物語」(小林まこと作)。主人公の三五とライバルの西野とが金鷲旗高校柔道大会での直接対決(再戦)で事実上の日本一を競うまでに至る一連の描写は、まさにジャンボ鶴田と天龍源一郎との闘いそのままでは、とも思えた。たとえば決勝大将戦で三五と西野とが無駄な組み手争いをせずに瞬時に組んだところは、鶴田と天龍とが見せたという「バシッというタイアップ(全日本の選手はロックアップではなくタイアップと呼ぶ)だけで迫力があった」という本書の描写にも重なる。そして三五と西野の双方が時には相手の意表を突いた技を仕掛けるなどの丁丁発止のやり取りや、最後の紙一重での劇的な勝利の瞬間など、「小林先生、もしかして、鶴龍対決を下敷きにしているのじゃないでしょうね?」と、ほくそ笑んでしまった。続きを読む投稿日:2024.03.08
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