この作品のレビュー
平均 4.4 (28件のレビュー)
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数十年ぶりの再読。おもしろいーーー!
17歳のジェルーシャ・アボットは、生まれてから孤児院暮らしで他の生活を知りません。引き取り手も現れなかったので孤児院の手伝いをしています。
第一水曜日は憂鬱。だ…って評議委員のお偉い方々が個人を視察に来るんです。一番年上のジェルーシャは、何もかもを整えなければいけません。
でもその第一水曜日は違いました。ジェルーシャのユーモアたっぷりの作文を読んだ匿名の評議委員が彼女を気に入り、大学で学ぶ資金を全部出し、将来は作家になる手助けをしたい、と申し出たというのです。
突然降って湧いた将来への扉!
この評議員の条件は「手紙で近況を知らせること」。そこでジェルーシャ(ジョディ)は匿名の恩人を「あしながおじさん」と呼びかけて手紙を書きます。
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これは大人が読んで非常に面白い。
まずはジョディの前向きさ。生まれてはじめて孤児院から出たジョディには新鮮かつ見慣れないことばっかり。同級生たちが当然知っている常識も全く知らない。周りから驚かれたり、最初は自分でも距離を感じるが、それはこれから学ぶことが多いことだということ。勉強も楽しい、親しくなった友達との交流も嬉しい、そしてなにより本に出会った!ジョディは毎晩染み込ませるように本を読む。
このお話は大学の4年間だが、その間にジョディの考え方の成長ぶりや自立心が伺える。孤児院にいたときは、自分の周辺のことが全世界で、世界の広さを考えることはなかった。でも人と会話をして考えが深まることに喜びを覚えていく。
気の合う友達のサリー・マクブライトとその家族は、ジョディにとってごく普通のだからこそ素敵な家族だった。サリーの兄のジミーやその学友とは、大学生グループ男女として楽しく過ごす。
お嬢様育ちのジュリア・ラトリッジ・ペンドルトンとその親族は…あまり好きになれない。自分が恵まれているのが当たり前で何かを深く考えようとはしないから。でもその一族のジャーヴィーおじさま(ジャーヴィーぼっちゃま)だけは素敵な男性で、話も合う。ジョディはジャーヴィーとの話で社会への考えが広がっていく。
ときには嫌なこともあり、こっそりと嫌いな人を嫌いと言っているところもある。はっきり書かれないけれども孤児院時代の酷い扱いや、またこの時代の男尊女卑社会が垣間見えることもある。そして明るいジョディだが捨て子で孤児院育ちという自分の生まれ育ちを人に知られたくないという気持ちの強さも感じられる。
ジャーヴィーぼっちゃまと気が合ったのも、男性主権で貧富や階級の差のあることに疑問を持ち、女性だって公民であり、仕事と家庭を両立したっていいじゃないか、という考えに同調し、自分たちで社会を変えよう、改革者になろうという同じ方向を向き合うことができるからだ。
しかしそんな嫌なことや不合理なことがあるにしても、ジョディにとって毎日はキラッキラで、真っ直ぐ。自分が援助した少女からこんな手紙をもらったらそりゃー嬉しいよなあという、自分が「あしながおじさん」の気分。
手紙には挿絵も描かれているのだが(著者のウェブスター直筆)これがまた味があっていい!
<人の人格が求められるのは、人生で大きな問題が起こったときなんかじゃありません、誰だって、危機に直面したら、ぱっと立ち上がり、勇気を持って、悲劇に押しつぶされそうになっても乗り越えようとします。でも、日々のくだらない、つまらない出来事に、笑いを持って当たることーそれにこそ、精神力が必要だと思うんです。P77>
<人生で最も大切なものは、はなばなしい大きな喜びなんかじゃありません。ささやかな喜びの中に、多くの楽しみを見つけるkと尾がとても大事なんです。ーあたし幸せになるほんとうの秘訣を見つけました。おじさん、それはね、今を生きる、ということです。P206>
そして「あしながおじさん」。
※※※以下、「あしながおじさん」の正体がわかるような記載をしていますので、読んでいない方はお気をつけください。※※※
最初は反骨精神のある「あしながおじさん」が、孤児院に世話になっているのにユーモラスたっぷりにしかし辛辣に孤児院生活の内情を書いた作文に「おもしれー女」として興味を示しただけで会うつもりはなかったのかもしれない。それが手紙のやり取り、たまたま実際に会ってみたらどんどんと…ということなんだろうなあ。
私は彼が何者か知っていて読んでいるので、ジョディの手紙を読みながらも、彼がどんな気持ちで手紙を読んでいるのか、実際に何をしたのかが分かってまたまた面白い。さらになかなかのプレゼント攻撃仕掛けているし(笑)。
たまに「あしながおじさん」はジョディに行動を規制するかのような態度に出る。ジョディは楽しみを奪われた気持ちから、または自立しなければいけないという気持ちから、「あしながおじさん」に反発を見せる。
…でも読者は知っている。それは一心に勉学に励めというのではない、ただただヤキモチを焼いているんだよ(笑・笑・笑)
しかし明るいジョディは、けっしていつまでもくよくよしたり恨み言を言ったりはしない。
知り合った人たちの影響もあり徐々に社会での自分のあり方、考え方、将来のことを決めてゆく。
そして最後は素敵な出会いとなるわけで。
物語の最初は「憂鬱な水曜日」で、最後は「幸せな木曜日」になる。
水曜日は終わった、これからは自分たちで作る新しい日々。続きを読む投稿日:2022.04.01
素晴らしく気持ちのよい読後感。児童文学の名作っていいものですね…大学生の頃に読みたかったなあ。もっとより良く、生きていけた気がする…。大人になって読むジュディは可愛くて尊いです。
「日々のくだらない、…つまらない出来事に、笑いをもってあたることーそれにこそ、精神力が必要だと思うんです。」一番心に残っている言葉です!続きを読む投稿日:2024.01.17
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