神の子どもたちはみな踊る(新潮文庫)
村上春樹(著)
/新潮文庫
作品情報
1995年1月、地震はすべてを一瞬のうちに壊滅させた。そして2月、流木が燃える冬の海岸で、あるいは、小箱を携えた男が向かった釧路で、かえるくんが地底でみみずくんと闘う東京で、世界はしずかに共振をはじめる・・・・・・。大地は裂けた。神は、いないのかもしれない。でも、おそらく、あの震災のずっと前から、ぼくたちは内なる廃墟を抱えていた――。深い闇の中に光を放つ6つの黙示録。
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商品情報
- シリーズ
- 神の子どもたちはみな踊る(新潮文庫)
- 著者
- 村上春樹
- 出版社
- 新潮社
- 掲載誌・レーベル
- 新潮文庫
- 書籍発売日
- 2002.03.01
- Reader Store発売日
- 2020.12.18
- ファイルサイズ
- 2.2MB
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この作品のレビュー
平均 3.7 (549件のレビュー)
-
全て良かったです。蜂蜜パイが特に好き。
積極的でリーダーシップを取る高槻は自分から淳平に声を掛け友達になった。淳平は暇があれば部屋で本を読んでいるような人見知りするタイプ。そして同じように高槻は淳平を…伴って小夜子に声を掛け、いつも三人は一緒だった。
この短い頁に、友情、恋愛、性が濃く描かれていた。三角関係と言ってしまっては安っぽくなってしまう。
甘酸っぱく、ほろ苦い、青春(人生)というのは、こうもうまく噛み合わないのだろう。もし自分が先に告白していたらとか。ああだったらこうなっていたかという、タラればは誰にでもあるし、それが人生の醍醐味にもなっているはず。
しばらく、頭の中でこの曲が流れた。
伊勢正三さんの「君と歩いた青春」。
君と始めて出会ったのは僕が最初だったね。君と歩いた青春が幕を閉じた。君はなぜ男に生まれてこなかったのか。
1995年、阪神淡路大震災を絡めて描かれている短編続きを読む投稿日:2020.08.15
どの短編にも「震災」という要素が何らかのかたちで組み込まれており、書かれた年代を考えると阪神淡路大震災のことに想いを馳せていたのだろうと想像できる。隠喩が隠されているような台詞や展開やモチーフが多く、…オチについても読者に解釈を委ねるような、良く言えば開かれた、悪く言えば不明瞭な終わり方が多い。いや終わり方どころか進行もなんだか曖昧模糊な印象だ。村上春樹らしいと言えばらしいので、こういうのが好きな方には刺さるだろうなと思う。なので一応自分なりにどういう意味なのか考えながら読んだので、一遍ごとの感想も下記に残しておきます。長編『ねじまき鳥クロニクル』や『海辺のカフカ』に近いテーマもあると感じたし、『すずめの戸締まり』に影響を与えた短編も読めたのでそれは収穫でした。おそらくは直接的に書くことを避けることで、震災の恐怖や悲しみを予感のようなかたちで均一化して残す、という意図があるのでしょう。「悲しい」という感情をそのまま描かないことで、より悲しさを伝えることが文学には出来る。そうして見るとこの作品集はまさしく”村上春樹らしい”文学的な短編集だと思います。
「UFOが釧路に降りる」
震災が起き、実家へ帰ってしまった妻。そのまま「二度と会いたくない」と言われ離婚をすることになった夫。彼が運んだ箱のなかに入っていた物が「自分」だったのなら、彼はいまよりさらに空っぽな存在となったということであり、同時に新たにこれから詰め込むことが出来る「生まれたばかりの状態」に戻ったということなのかな。
「アイロンのある風景」
茨城県の海岸沿いに住む女性と、流木で焚き火をする男性との会話の中には震災の記憶が背景としてうっすらとあり、主人公は自分のことを「からっぽ」だと感じている。「UFOが釧路に降りる」と似たテーゼを込めているのだろう。終盤でふたりは”真剣に”死について考え、焚き火が消えたら死ぬことを実行に移そうと言って幕を閉じる。しかし焚き火が消えるということは、寒さで目を覚ますということでもあり、これまた生まれ変わることを意味してるのかなーと思った。
んーでも、「描いたアイロンはアイロンではない」と言ってたし、また別の意味合いもありそう。わからん。
「神の子どもたちはみな踊る」
信仰についての話。あと野球についての話。読みながら『海辺のカフカ』の短編版みたいな内容だと思った。善也が父親らしき男の影を追いかけたのは何のためだったのか、という点がこの話のフックであり、おそらくテーマにも繋がっているのだろう。父親を探すことはイコール神を探すことである。しかし善也が父親(=神)に出会うことはない。彼は神を見失う。母親に性欲を抱くことは罪の象徴ではあるものの、それは同時に父親への嫉妬心から来るものだ。オイディプス症候群。だから父親を見失った瞬間に善也は信仰から解放される。母への葛藤もおそらくあのとき消えたのだろう。そうしてそれまで抱えていた父や母といった”偶像”への信仰は消え去り、野球をすること、踊ること、かえるのように身体を動かすことが、彼にとっての信仰となる。神は外部では無く善也の中にこそ存在しているのだ。時代的にオウム真理教の事件を連想するが、この短編においては、いわゆる「宗教2世」である善也が自身の神を見つけるところまでを描いている。
「タイランド」
失ったものと、固まった心。何故生きていかねばならないのかという問いを経て、そこに意味は無いという答えに行き着く。その答えはひどくありきたりなものだなと感じるけれど、そこに向かうまでの道程が妙に詩的でつい「良いこと言うなあ」という気持ちになりそうになる。でもやっぱりありきたりだし、すこし投げやりだ。
「かえるくん、東京を救う」
『すずめの戸締まり』の元ネタのひとつ、と言われているらしい。話の筋は唐突に現れた2メートルくらいの大きな蛙「かえるくん」にミミズくんによって引き起こされる「地震」を止める手伝いをしてほしいと頼まれた男の顛末を描くというもの。「ミミズくん=地震の象徴」という点や、起こる前に地震を止めるという展開、人の言葉を解する生き物、夢のような場所で解決されるという点、などなど確かに共通項が多いです。
主人公の男は誰からも注目されず、むしろ軽んじられながら40年間生きてきており、しかし誰かを憎むことも、かと言って執着することもなく、たんたんと自分の人生を歩んできた。それはおそらく彼が「どこにでもいる、誰でもない」存在の象徴ということを意味しているのだろう。そして彼のような存在に社会は支えられており、可視化されず、顧みられることも無いレベルの犠牲の上に人々の安心した生活は成り立っているということか。「かえるくん」は夢の中でミミズくんと戦い、地震を止め、震災が起こらなかった「いま」を作り出す。だから「かえるくん」が”損なわれて”しまうのは必然的な流れだ。だってこれは犠牲についての話だから。男は「かえるくん」のことが好きだった。そのような犠牲によって社会が形成されていること。彼らに対する哀悼と慈しみの感情が男の中にはあり、自分の中にその感情があることを見つけ、男は眠りにつく。
『すずめの戸締まり』ではさらにその先の救いを、「自分を抱きしめるのは自分自身であり、常に、すでにその愛は存在している」ということを描こうとしていたと思うのだけど、それはまた別の話。
「蜂蜜パイ」
主人公の職業が小説家であるという点を考慮すると、ダイジェストで人生を見せていく構成は意図的なものだろう。作中でもそれに近い台詞を言っているし、小説を書くこと、短編を書くこと、物語を語ることを作者である村上春樹がやや俯瞰的に見つめて、その意味を咀嚼するように描かれた話、のような気がした。そうしてラストを読むと、自身の人生は語ることによってかたちを変え、より希望のあるものにできる、というとても前向きなテーマが受け取れる。ちょっとポジティブに過ぎる結論であんまり好きではないのだけど、作者が自信にとってのセラピーみたいな意味づけで書いたのだとしたら、これもありか、と思えた。続きを読む投稿日:2024.05.07
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