加害者家族バッシング 世間学から考える
佐藤直樹(著)
/ボイジャー
作品情報
なぜ日本では加害者家族が責められるのか?
欧米(特にキリスト教国)では、加害者家族がバッシングされることはあり得ない。何故、日本では加害者の家族が世間からバッシングを受け、時には自死に至るまで責められるのか。本書では世間学の観点に立ち、加害者家族へのバッシングの構造を、①「世間」の構造、②なぜ、〈近代家族〉が定着しなかったか、③なぜ、犯罪率が低いのか、④なぜ、自殺率が高いのか、という角度から解き明かし、その背後にある、ニッポンの「世間」の閉塞感・息苦しさ・生きづらさを解除するための手がかりを探る。
【目次】
はじめに——なぜ、加害者家族問題なのか
第1章 ニッポンにしかない「世間」——世間学の概要
第2章 親(家)は責任を取れ——ニッポンにおける〈近代家族〉の不在
第3章 安全・安心の国ニッポン——同調圧力のつよさとケガレ
第4章 死んでお詫びします——「高度な自己規制」の異様さ
おわりに——「自分は自分。他人は他人」と考える
【著者】
佐藤直樹
1951年、仙台市生まれ。新潟大学人文学部法学科卒。新潟大学大学院修士課程修了。
九州大学大学院博士後期課程単位取得退学。
1999年、「日本世間学会」創立、初代代表幹事。九州工業大学名誉教授。
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商品情報
- シリーズ
- 加害者家族バッシング 世間学から考える
- 著者
- 佐藤直樹
- 出版社
- ボイジャー
- 書籍発売日
- 2020.04.20
- Reader Store発売日
- 2020.10.02
- ファイルサイズ
- 0.9MB
- ページ数
- 192ページ
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この作品のレビュー
平均 4.0 (3件のレビュー)
-
このレビューはネタバレを含みます
そもそもこの本に興味を持ち、読もうとする人とはどんな人なのか?と考えた。
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犯罪、刑罰、量刑、事件や経済格差などの大きな社会問題、差別や村八分的な深刻な世間体の問題、一般的な家庭には発生しないような誰にも相談も解決もできないような深刻な家族の問題…
そのようなところに目を向けずに暮らせている大多数の人にはまず関心すら向けられない領域の話なのではと思った。
社会がなく世間がある、世界と日本の社会のはっきりとした違い、日本という国の同調圧力の異様さ、そして人間の尊厳がなくなってしまった現在の日本、謝罪の場には神がいると言えてしまう日本人独特の感性。
キーワードが多く、引用も多く納得させられる話が多かった。ただ、同じようなことを短い文体の中で何度が繰り返す言い回しが多く感じられ、もう少しすっきりとした文章に出来たのではと思われる個所が最初から最後まで散見された。人によっては読みにくさを感じるかなと思った。
読後改めて本書のテーマについて考えてみた。けれど、関心がそもそも低いことや現状様々な格差によって人々のストレスや不満のはけ口がより弱いところに向かい続けていくことを考えると、著者の言う「高度な自己規制」から自由になるということは日本という国では残念ながらこれから先もほぼないだろうと思う。
この本のテーマには何の関心も持たない、気にもとめない、考えたこともないというような人。本書に出てくるような「加害者家族はバッシングして謝罪させて孤立させて何なら死んでも構わない」と匿名で心置きなく正義だとその行動を信じて行うような、そういう人にこそ読んでもらうべき一冊なのは皮肉なことに確かだと思った。
…そういう人にはここに書かれてることの意味自体通じないかもしれませんけども。投稿日:2023.08.15
犯罪者本人だけでなくその家族や縁者まで非難されたり村八分のようになったり、謝罪したり引っ越しや退職など生活を変えざるをえないようなことになる構図って、日本だとそれこそよくあること。だけど、犯罪を犯した…わけでもないのに家族というだけでバッシングを受けるって本当はおかしい。
この本ではそういう不条理な事例をいろいろ読めるかなという問題意識はありつつもちょっと野次馬的な思いで読み始めたんだけど、副題の「世間学から考える」というのを見落としていた。副題の示すとおりで、日本に空気のように存在する「世間」という同調・同質をそれとなく強いるものが、加害者家族を苦しい立場に追いやることのおかしさを指摘している。
書中では、世間体のために、世間を取り繕うために、何だかおかしなことになっている日本の姿が示唆される。たとえば、日本の犯罪件数は減っているが、強盗や放火が減少した一方、殺人や強制性交は増えている(p.78)とか。日本の殺人事件の特徴として、全体の55%が親族間で起きており、その割合は上昇傾向(p.78)とか。
1998~2008年の間、自殺者は3万2000人前後で推移している一方、「非犯罪死体」に分類される数は増え続けているが、このなかには確実に自殺者が含まれているはずで、統計上の自殺者数が意図的に操作されているのではないか(p.158)とか。
また、常々気になっていることに、若年や婚外で産んだ嬰児を殺して捕まる女性のことがある。一人で妊娠できるわけないじゃん。そんな切羽詰まった状況に追い込んだ不実な男性(嬰児の父親)がいるはずなのに、女性ばかり咎められるのっておかしいと思っているんだけど、本書によればそういった女性は情状酌量され執行猶予とかになることも多いよう。人ひとり殺したのだからそれはそれでおかしいんだけど、親が子どもを思うあまり殺すというストーリーに寛容なのがこの国で(それは、男性側を罪に問えないことの裏返しとして女性の罪も軽めになるということなのかもしれない)、そのように家族を一体的にみる世間が加害者家族バッシングにつながっているというわけ。
何でもかんでも世間のせいにしすぎって感じもややするけど、世間なるものがたとえ加害者家族にならなくても、私たちの生活を何だかおかしく不便・不可解なものにしている大きな要因ではあるだろう。欧米ではそういった例がほとんど見られないということからも、底なしのぬるま湯のような世間の怖さ、日本のおかしさを感じる。続きを読む投稿日:2021.05.08
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