貸本屋のぼくはマンガに夢中だった
長谷川裕(著)
/草思社
作品情報
昭和30年代、東京で貸本屋をやっていた一家と「ぼく」の物語。
貸本ブームの最中、貧しい町並みの片隅に開いた店は家族で営まれ、娯楽を求めて老若男女さまざまな人びとが足しげく通った。
貸本屋の息子であった著者が浴びるように読みふけった貸本マンガにはどんな世界が広がっていたのか。
つげ義春、水木しげる、白土三平など、貸本マンガ出身の漫画家たちの初期作品の魅力とは?
アナーキーな面白さと猥雑さに満ちたあの時代のマンガの思い出を綴る。
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この作品のレビュー
平均 4.0 (2件のレビュー)
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このレビューはネタバレを含みます
・長谷川裕「貸本屋のぼくはマンガに夢中だった」(草思社文庫)を読んだ。書名通り、筆者がいかにマンガに夢中であつたかが分かる内容の書である。もしかしたら物心つく頃からマンガが身近に大量にあつた人である。そんな恵まれた人の記録であらうか、追想記とでもいふのであらうか、とにかく種々様々なマンガが出てくる。そのかなりの部分を私は知らない。大体、私は貸本屋を知らない。身近に、いや、身近どころか、そのかなり広い周辺にもなかつた。と言つて、具体的にどこに貸本屋があつたと知つてゐたわけでもない。つまりは全く貸本屋を知らないのである。私にとつての貸本屋とは、江戸時代の、大きな荷物を背負つて定期的にやつてくる商売人である。草双紙を持つてきてくれるから結構人気があつた。しかし、これとて書物で読んだ知識でしかない。そんな貸本屋に無知な人間は、ここに出てくるほとんどの本を読みやうがない。その意味で、子供の頃からこのやうにマンガに浸つた生活ができた人は幸福であつたと思ふ。その幸福な人のマンガ論でもあらうか。
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・と書きはしたものの、私におもしろかつたのは1960年代初頭の記述である。例へば、「一九六〇年代初めの渋谷——東横デパートと五島プラネタリウム、東横食堂、東急名画座、そしてなりより大書店の大盛堂。」(180頁)とある。これも、もちろん、私には分からない。それでも最近の渋谷のやうに大きなのがいくつかといふのとは違ふと思へる。かつて私に、今はなき某作家が我が町並みを見て、50年代の東京だと言つてくれた。これと合はせると何となく分かるやうな気がする。さうして次の記述、「東京の町は二年後のオリンピックをひかえ、あちこちで国道が掘り返され、高速道路や地下鉄の工事がはじまっていた。ほとんどの路地がアスファルトで舗装され云々」(223頁)これは私がよく考へる、60年代は民俗の激変期だといふことにつながる。東京がこのやうに大規模な変貌を遂げつつある時、地方からの人々が必要とされたはずである。単純に、人手不足を地方の人で補ふのである。あるいは、東京への憧れが地方の人を吸ひ寄せる。いささか乱暴な言ひ方だが、そのせゐで地方の祭りが廃れ、民俗のさまざまなものが失はれていつた。それはこの東京オリンピックに始まる。そこに付随するものがさまざまな地方の民俗を痛めつけた。かう書くとすべて東京が悪いとなりさうだが、地方の衰退の原因を作つたのは東京に違ひない。それなのに、「私も家族も(中略)どことなくうきうきとしていた。なんてったってオリンピックなのだ。」(225頁)と書いてある。田舎にいても東京のことは分かるが、東京にいては田舎のことは分からない。たぶんかう言ふことなのであらう。しかし、その頃、「店の営業成績が次第に悪化しつつあった」(208頁)らしい。この少し前に「少年マガジン」「少年サンデー」が出てゐた。「薄く小ぎれいで(中略)手に取って見ると、いたって軽く、貸本マンガの単行本のやうな重量感はない。」(238頁)そんなものだが人気があつた。そして「私の慣れ親しんだ無骨な劇画や貸本マンガは数年を経ずして一掃され」(247頁)ていくのである。東京でもオリンピックの頃から、町並みだけでなく人々の生活や民俗にも変化が現れてゐたのであらう。さうして2店のうち1店は店仕舞ひをする。本書はそんな貸本マンガ屋の盛衰記でもある。個人的には終焉の様がおもしろい。田舎の民俗が思ひ出されるからである。私の場合、貸本マンガを知らぬがゆゑにこんな読み方をした。知つてゐる人ならば著者と一緒に興奮するかもしれない。そんな本であつた。投稿日:2019.04.19
貸本屋とは何だったのか!
貸本屋の息子が書いたのだからマンガ家が描いた貸本マンガの側面とは一味違うね。投稿日:2022.07.17
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