男子観察録
ヤマザキマリ(著)
/幻冬舎文庫
この作品のレビュー
平均 3.5 (10件のレビュー)
-
ヤマザキマリさんが男性という異性に対して求めてしまうもの…
「力強さ」や「頼りがい」…みたいな答えでは当然ない(笑)
~一見、何の合理性も必然性もないことについて考え込んでおり、空気の読めない行動をと…ってしまう、それが実は男性の最も魅力的な姿なのではないか~
なるほど
何かに夢中になってしまう少年がそのまま大人になっちゃったね…のようなイメージだろうか
皆さんはいかがですか?
私は「マニアックさ」かなぁ…
さて本書は身近な男性から有名人、はたまた二次元の世界まで幅広い男性をご紹介してくださる
そして鋭い観察力と個性あふれる分析が面白い
ちなみに身近なところではお祖父様や編集長
有名どころではスティーブ・ジョブズ、水木しげる、山下達郎、ボッティチェリなど
ちょっとご紹介
■ノッポさん
~このようになくても、誰も困らないものであろうものを、いかなる素材からも素晴らしい造形物を作り上げる
こういう人がいてくれたら、毎日が楽しくなるだろうな。
どうでもいいことに一生懸命になっている変だけど、かわいい中年男~
さらに
~すばらしい創作物をゴン太が意味不明な動機でつぶし破壊しても、結局寛大に許してしまう白い器の持ち主~
ということで母性をくすぐられるようだ
しかしノッポさんなんて思いつきます?
そりゃみんなノッポさんもゴン太くんも大好きだけど…
■トム(トムとジェリーのトムです)
~人間でいうと、日常の使命感や義務に疲れたダメなおっさん
しかし金儲けの手段に結びつかないすぐれたエンジニアである
マニアックさと頭の良さがなくてはこうはいかない
またクラッシックピアノの名手(そういえば指揮者もやっていた)
アヒルの赤ちゃんにママと間違えられたときのトム
愛情の深さと母性を感じた(うんうん)~
まさかのトムですよ
もう目の付けどころが違う!
トムをこんな目でみて分析したことなんてなかったわ
言われてみれば納得
ちなみにトムを演じてもらいたい俳優ニコラスケイジとのことなのだが、
トムに見立てたニコラスケイジの絵がかなりキモい
(ファンの方すみません)
いえ、決してニコラスケイジが嫌いではないが、あれはトムとニコラスケイジが嫌いになっちゃいそうだよぉ…
というわけで気軽に読めるエッセイで楽しめた
チェ・ゲバラの漫画をいつか描いてみたいとあったので実に楽しみである
空海のことも気になるなあ…続きを読む投稿日:2023.08.29
漫画家ヤマザキマリさんの好きな男たち。ハドリアヌス帝(76年−138年)もいれば、奥村編集長という漫画業界の名物編集者なる人(テルマエロマエの担当者でもあった)もいれば、トムとジェリーのトムまでいる…。
裏表紙の紹介文など読むと「真の男らしさが見えてくる」「新男性論」などとあるので、「男とは…」「男はなぜ…なのか」というような論をぶっちゃうのかなと半ばハラハラ半ば期待したが、あくまで「極私的目線で」(とも書いてあった)の観察録であり、各人への思い入れや、男性に対する個人的な嗜好を熱く語ることこそあれ、傲慢さを感じさせるような“男性論”はなく、良かった。
ヤマザキマリさんは、テレビでは「舌鋒鋭い」みたいな印象があったが、今回初めて読んだ彼女の文章は硬質ではありながらも攻撃性は一切ない。美術や芸術全般に対する知識や感性が専門的で深いことはもちろんながら、何より惹かれたのは彼女のボーダーレスなものの考え方だ。今後も機会があればこの人の書いた文章を読んでいきたいと思った。漫画も。
以下、その他備忘メモ。
・十八代目中村勘三郎(1955-2012)。この人の魅力を伝える文章はたくさんあるが、ヤマザキマリさんによるこれは至高。しかも無駄がない。
・戸田得志郎(1895-1988)。ヤマザキマリさんの母方の祖父。「人生はね、自分がラッキーだと思う程、楽しいもんなんだよ」。ラストの似顔絵、かっこいい。
・スティーブ・ジョブズ(1955-2011)。古代ローマ皇帝ハドリアヌスと並べての次のような語りが面白かった。正確な引用ではないが適当に縮めて書く→「男性は本来社会的な適応性を巧みに操れる生き物ではないと思っている私にとって、二人とも、人間関係を上手くやりくりする事よりも、建築やデバイスの開発といった創造に全力を注いだ人。この創造性が、後に単なる捩くれた酷い人という扱いになるのか、捩くれた酷い人だけど天才で凄かった、となるのかを分けるポイントなのかもしれない」。男性論はないと言ったがこれくらいの差し挟みはある。この差し挟み含め、深く納得してしまった。この調子で女子観察録も書いてほしい。
・デルス・ウザーラ。「人間は(中略)自然の織りなす掟に逆らう事なく生きていれば、無意識のうちに道理にかなった倫理観や、優しさが備わるものなのだという事を、私はこの老人の生き様によって知った。デルス・ウザーラは地球という惑星に一切の負担も迷惑も掛けず生きている、とても希有な人間なのだ。」→まるで『大江戸リサイクル事情』じゃないか(注・最近読んだ本)。それはともかく、ヤマザキマリさんの名付けエピソードとしても味わい深い。
・空海(774-835)。留学したもの同士としての共感、尊敬があるらしい。スーダンのアブディンさんのことも思い出した(『わが盲想』)。空海、って名前もカッコ良すぎるしだいぶ昔の人だし宗教者だし字も上手いし何でもできたスーパーマンみたいで、かなりもやっとした教科書上の人物としか思っていなかったが、これを読んで初めて興味がわいた。確か司馬遼太郎が何か書いていたはず。続きを読む投稿日:2023.05.04
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