この作品のレビュー
平均 3.9 (10件のレビュー)
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深夜便全14航路の船旅エッセイ。深夜ならではの旅の魅力を語る。
01 青森→函館 02 大洗→苫小牧 03 敦賀→苫小牧東港
04 和歌山→徳島 05 神戸→小豆島(坂手) 06 神戸→新居浜
0…7 直島(宮浦)→宇野 08 柳井→松山 09 徳山→竹田津
10 臼杵→八幡浜 11 宿毛→佐伯 12 博多→対馬(厳原)
13 鹿児島→桜島 14 奄美大島(名瀬)→鹿児島
カラー口絵。本文中に航路等のデータ、モノクロ画像。
引用・参考文献有り。
それは真夜中の午前0時を過ぎた時間。
翌日に時は進み、船も進む・・・深夜航路の時間。
深夜便全14航路(2017年時)の乗船記+αのエッセイ。
仕事を終えてからの移動。近隣の駅からは徒歩で目指し、船へ。
乗船すれば、下船まで静寂の時を過ごす、非日常の空間。
短い時間であっても、長い時間であっても、
自分を、日々の生活を、過去を振り返り、将来への希望を
抱かせる、自分の心との対話を行える、空間。
静かな語り口に載せた言葉は、分かり易く、心に沁みます。
そして、+αが実に良い。見つめる視線にしみじみとします。
消えた集落、深夜空路での帰途、渡し船や渡海船、小さな離島、
無人島、五人宗谷、カブトガニ、ニホンカワウソ、灯台・・・等々。
童話作家・村山籌子の事や、引用されたジミー・リャオの作品等、
読んでみたくなる本もありました。
え、対馬(比田勝)→博多航路で沖ノ島が見えるんだ。乗船したい。続きを読む投稿日:2021.08.13
午前0時を回ってから出航する定期フェリーに乗って旅をし、旅愁を味わうという類いまれなる深夜航路ガイドブック。
紹介されているのは青森-函館、和歌山-徳島、神戸-新居浜、博多-対馬、奄美大島-鹿児島など…、14の深夜フェリーだ。
著者は、それに乗るためにわざわざ東京から飛行機や新幹線を使い航路の起点までやってくる。そこまで来るだけでも疲れるのに、そこから、深夜の船に乗り込み、うつらうつらしながら色々と頭を働かせる。外は漆黒、ただただ静寂の世界。
常人にとっては、海原の景色も楽しめず、ただ寝るだけの旅だが、静寂にひたることで、自身の内面が開かれ、自己対話、内的省察の扉が開かれると著者は語る。
なんかなく、わかる気もするが、この境地に達し、著者の気持ちを実感するには自らも体験するしかないのか知れない。
だが、それぞれの航路の役割、立ち寄る場所や島に纏わる歴史・文化、人との出会いなども紹介され、旅情あふれる紀行文として楽しめる一冊だ。
以下に印象に残った記述をメモしておく。
・函館山の裏手の集落から市街へ、吊り橋を渡りながら出る海岸沿いの人ひとりしか通れない細い道があり、その跡が残っている。
・和歌山-徳島間の南海フェリーは希少な鉄道連絡船
・徳島市の今切川の県営長原渡船は県道219号線の一部となる無料航路
・架橋は車による移動を可能とする反面、日常生活で車を使わない島民にとっては渡し船の方が都合がいい。徒歩で橋を渡るには高低差や距離が生じることもある。
・直島-宇野間は所要時間15分と、深夜航路における最短区間。直島には三菱マテリアルの製錬所がありさ三交代勤務のため、深夜便がある。
・鹿児島-桜島間は15分だが、24時間運航、深夜帯でも60分間隔で運航
薩摩半島と大隅半島を結ぶ輸送の要として、また、救急搬送船としても重要な役割を果たしている。
・桜島から無人化した新島へは、墓参りや不法投棄の監視などのニーズに応えるため、週3日、3往復の定期航路が通じている。
・奄美大島-鹿児島間は429キロを16時間50分かけ、途中、トカラ列島の7島を経由する。出航の8時間前から乗船できる“寛大な船”になっている。
著者が最後に述べているように船舶会社は以下のように構造的な根深い課題も抱えていることも勉強になった。
・架橋を含む高速道路の整備による需要低迷、運賃面での競争激化
・燃料費高騰による経営圧迫
・経営合理化や燃料節約のための減便などによる利便性低下
続きを読む投稿日:2022.01.22
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