地球最後のゾンビ -NIGHT WITH THE LIVING DEAD-
鳩見すた(著者)
,つくぐ(イラスト)
/電撃文庫
作品情報
ともに行くのは笑顔が似合う死者の少女――。これは終末の世界で始まる、夜の旅路の物語。全世界を襲ったゾンビパンデミックから5年後――、人類はほぼ全滅していた。荒廃した東京をひとりさすらう少年ユキトはある日、「死ぬまでにやりたい10のこと」のため北海道を目指し旅をしている少女エコと出会う。いつも笑顔で明るい彼女だが、その正体は他に例のない“ゾンビ化していないゾンビ”だった。彼女の死を見届けるため、人類の敵とふたり旅に出ることにしたユキト。決意を胸に、朝日とともにいざ出発しようとするとエコがかわいく抗議の声を上げた。「ゆっくんは、デリカシーがないなあ。支度はすぐだけど、昼間は出たくないの」 尖った口先が、つまらなそうに続ける。「腐っちゃうから」
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この作品のレビュー
平均 3.7 (4件のレビュー)
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ゾンビ娘。。
ゾンビでなくても良い気がするが・・・。
終末日本を不治の病(ゾンビ)になった少女と旅するお話。
ちょっと丸めすぎたかな。。投稿日:2018.12.31
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このレビューはネタバレを含みます
地球最後のゾンビである少女エコと、少年ユキトのボーイミーツガール・ゾンビラノベ。
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タイトルの『地球最後の男』へのオマージュを始めとする、『28日語…』や『ゾンビランド』等の、数々のゾンビ映画の影響が…随所に感じられており、その手の映画が好きな人が読めば十分に楽しめる一冊となっている。キャラクター造形や出会いなどは王道ラノベのボーイミーツガールを踏襲しており、無垢で明るい少女とやや偏屈な少年というキャラ立ては、万人受けする反面、設定を変えただけなので関係性は他のボーイミーツガールと変わらず、ノリも同じであるため、やや食傷気味な部分もある。ゾンビのトラウマがあるとはいえ、やや暴力的でつっけんどんな主人公はあまり好きにはなれなかった。
しかしエンバーミングを施すことによりかろうじて意識を保っているという腐らない少女エコの秘密は面白く、その秘密が発覚すると同時に否応なく「終わり」への旅路を意識したのは上手いと思う。またゾンビが単なる舞台設定だけでなく、アクシデントの対義語であるインシデントと呼ばれていたり、ゾンビが隣人や死人といった感じで呼ばれていて、ゾンビという呼称を避けられていたり、自殺推奨や出生前虐待という教義を掲げて生存者を襲うパンクスという集団など、ポスト・アポカリプスものとしての練り込みは素晴らしいと思った。ドッグフードで飢えをしのぎつつ、たまに見つけたマシュマロ、いざというときに取っておいたごちそうである金ちゃんラーメンなど、終末メシの描写もよく、電力が貴重品になっているという設定も良い。カブで終末の世界を走る光景も脳裏に浮かぶようだった。
特に白眉なのは「俺達は貧乏くじを引かされた」という作中の言葉で、これはすでに壊れてしまった後の世界の物語である。災害に名が付く前に全ては終わりを告げ、遺された若者の未来に希望はなく、また戦うべき脅威となるゾンビもすでに地上にはいない。
>ユキトたち奪われた世代は前時代でも好況を知らない。彼らはものわかりのいい大人を演じたいのだろうが、それはユキトたちに覚えのなかった劣等感を植え付ける。それなら「今の若者はけしからん!」と、苦労した自分の時代を語ってくれる老人のほうがよっぽどありがたい。「俺たちは誰かに謝って欲しいわけじゃない」「インシデントに見舞われた被害者に、上も下もないよね」「歴史を振り返れば、いつの時代にも『昔はよかった』と愚痴をこぼす人間がいる。あいつらは現状を変える力を持っていないことを嘆いているだけだ。だがどんな時代であれ、結局生き方ってのは自分で見つけなくちゃいけない」
このあたりの言葉はバブルを知らず、政権交代を経験した安定なき世界に生きる若者の言葉の代弁である。すでに世界は壊れているという実感は、僕らよりも若者のほうが強く、ゾンビという設定を通して語りかけてきたのは非常に良かった。ゾンビとの戦いはクライマックスにハイライトのように流れはするが、バトルめいたものはなく、読み手によってはやや退屈に映るかもしれない。しかし敵がいないことこそがこの作品の肝なのである。
終わりは予想の範疇ではあったものの、死ぬ前にやりたいことリストの消化の順番はやや意外だった。悪い人をだしぬくといったリストが展開に関わってくるかと思ったが、むしろ悪人はいなかったのだろう。王道的にまとめた良作である。続きを読む投稿日:2019.05.30
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