文系人間のための「AI」論(小学館新書)
高橋透(著)
/小学館新書
作品情報
人間の脳がコンピュータに繋がる日がくる。
連日ニュースになり、世間で話題となっている人工知能(AI=Artificial Intelligence)。その発達はめざましく、囲碁の対局からホテルコンシェルジュ、会社経営まで、人間の仕事を奪いつつある。将来、“ハイパーAI”が登場し、人間の能力を凌ぐ特異点(シンギュラリティー)が訪れると、人間の脳はコンピュータと融合しサイボーグ化せざるをえないという。
学生に大人気の講義を持つ早稲田大学文化構想学部の教授が、最新技術の情報をふまえて、AIのある未来を哲学的立場から考察。AIを通じて、人間の存在意義、これからの人類のあるべき道を考える。
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商品情報
- シリーズ
- 文系人間のための「AI」論(小学館新書)
- 著者
- 高橋透
- 出版社
- 小学館
- 掲載誌・レーベル
- 小学館新書
- 書籍発売日
- 2017.04.01
- Reader Store発売日
- 2017.04.06
- ファイルサイズ
- 5.5MB
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この作品のレビュー
平均 3.8 (5件のレビュー)
-
哲学的な視点で語った人工知能の本。
第2次AIブームの時にはAIが高熱患者の体温を下げるためにどうしたらいいのかという設問に「解熱剤を投与する」という回答と「殺す」という回答を提示したらしい。そういう…結果にいきつくAIってどう実装されたんだろう。ある意味、すごいような。でも、こういう話きくと、AIが暴走する未来とかちょっと怖い気もする。
なお、映画が登場した時に上映された『ラ・シオタ駅への列車の到着』という映画では、蒸気機関車が駅に到着する映像を見て轢かれると思って逃げ出した客もいたんだとか。YouTubeで映像があったので見てみたけど、ただたんにプラットフォームにカメラがおいてあるだけの映像で、しかも白黒で、本当にそんなことがあったのか疑問に思いそうだけど、やっぱり映像なんてものがなかった時代の人にとってはそれだけ衝撃的だったということなんだろうと思う。続きを読む投稿日:2017.06.20
「AIの本質」とは、どの年代で切り取ったとしても「その内容」だけを探っている限り本質に辿り着けない。
結局、AIの本質を知ることは「AIの未来がどうなるのか?」を探すことに尽きると思うのだ。
当面とい…うか数十年単位のレベルで「完全に完成されたAI」が実現することはないだろう。
そもそも「AIに完成はあるのか?」という疑問が残るし、永遠に進歩し続けるとしたら、その進歩に終着点はないことになる。
しかしながら「何年後には、これぐらい進歩しているだろう」という予測は常にある訳で、それはつまり、「今どの時点なのか?」「今後(数年間)どうなりそうか?」を勘案しながら、予測を立てるということになる。
もしくは「何年後には、これぐらい進歩していたい」という単純な研究者側の願望だったりするもするかもしれない。
いずれにしても、未来を予測するためには、過去から学ぶしかなさそうである。
馬車の時代に、自動車が発明された。
その時点で、自動車が街中を走り回る未来を当時の人々は予測できたのだろうか?
結局「AIの未来がどうなるのか?」を突き詰めても、それによって「我々の生活にどう影響するのか?」を正確に予測することは、実際は相当難しいのではないだろうか?
馬車から自動車に置き換わった過去の事例は確かに参考になると思うが、果たしてその置き換えがAIについても全く同じに当てはまるのかは、今の段階では何とも言えない。
やはり、AIに関する様々な情報を広く集め、その情報を多面的に検証していくしかないのだ。
AIの進歩により「自分の職は果たしてAIに奪われるのか?」が一番の関心ごとであるのは間違いないが、話はそんなに単純な事ではないだろう。
一側面で捉えずに、多面的に考えるためにも、「AIとは何なのか?」というシンプルな問いを様々な角度で検証していく必要性があるのだ。
著者も語っているが「AIが何か?」を探ることは、実際「人間の脳とは何か?」を探ることと等しい。
それは、AIが目指す一つの目標が「人類の脳を模倣する」であることからも想像できる。
これは非常に分かりやすい。
「結局、我々は何者なのか?」「我々の意識とは、結局何なのか?」
こういう人間の思考を知ることが、つまり「脳」を知ることであり、自分自身を知ることにも通じる。
それはつまり「哲学の探求」そのものなのである。
とは言え、普段の生活の中で、一般の人々が哲学者のような探求心を持ち「人間とは何か?」を考えることはほとんどないだろう。
結局、我々のような一般人に関心があることは「自分の職はAIに奪われないだろうか?」なので、自身の生活に直結する話なのかどうかが重要となってしまう。
結局AIは、人間(つまり自分)にとって脅威なのか?味方なのか?について考えることとなる。
本書の中で、古代ギリシャのソクラテスやプラトンなどの哲学者についても触れていた。
当時、ようやく「文字」の発明がされた時代。
そしてその「文字」は、当時の最先端テクノロジーだったというのだ。
「情報を紙に文字で書き残す」ということは、記憶デバイスに知識を保存しておくことと同じこと。
これはものすごく画期的な技術革新だったということである。
しかし、当時の人々の反応は二分したという。
知識を保存し、さらに他人とも共有ができるという便利な部分がある一方、その副反応として「人間は考えなくなるのではないか?」と真剣に検討されたらしい。
今でも「スマホで何でも調べられるのに、学校の知識詰め込み型の勉強法に意味があるのか?」と議論されているが、それと内容が似ている。
自動車に乗ってばかりいて歩かなくなると、足腰が弱まるという考え方も同じだ。
ではAIは?
AIは今後益々便利になって、人間の生活の中心になっていくだろう。
そうなればなるほど、人間の能力は本当に退化してしまうのだろうか?
こういう部分も含めて、一部の天才だけにAIを語らせず、もっと一般の人もAIに関して議論した方がよいのではないかと思ってしまう。
過去の歴史を振り返ってみれば、自動車の発明によって、人間の足腰が弱くなったかもしれないが、それでは自動車は悪だったのだろうか?
悪の発明が、現在こんなに我々に便益をもたらす訳がない。
結局は副反応の部分を正しく認識しつつ、便利な新技術を使いこなす方が得策なのだ。
きっとAIという新技術だって同じことが言える
だったら我々が行うことは、AIというものをまず正しく認識することが重要となる。
AIは何が得意で、何が苦手なのか?
AIが人間に及ぼす副反応とは、どんなことが起こり得るだろうか?
やはり、新技術をきちんと勉強し理解し、未知の部分を皆で議論し、単純否定するのではなく、使用方法の最適解を見つけていく。
この姿勢が大事だし、文系だからと言ってAIから距離を置くのではなく、積極的に学ぶ姿勢が必要だということだ。
そういう意味でも、AIに対する心構えや向き合い方について、初心者向けで分かりやすい書籍であったと言える。
未知なものに対し、無知のままでいることは罪である。
自分の身を守るためにも、勉強し続けろということなのだ。
(2023/7/29土)続きを読む投稿日:2023.08.22
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