近代日本の戦争と宗教
小川原正道(著)
/講談社選書メチエ
作品情報
戊辰戦争によって新たな政権が誕生してから、日清戦争・日露戦争の勝利によって対外的な地位を向上させるまで、明治国家のあゆみには、戦争がともなっていた。そうした戦いのなか、神社界、仏教界、キリスト教界は、いかなる反応をみせたのか。従軍布教や軍資金の提供といった積極的な協力姿勢から、反戦論・非戦論をはじめとする、消極的姿勢──、本書は、その実態を描いてみようとするものである。
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商品情報
- シリーズ
- 近代日本の戦争と宗教
- 著者
- 小川原正道
- 出版社
- 講談社
- 掲載誌・レーベル
- 講談社選書メチエ
- 書籍発売日
- 2010.06.10
- Reader Store発売日
- 2016.06.10
- ファイルサイズ
- 0.5MB
- ページ数
- 226ページ
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この作品のレビュー
平均 3.0 (2件のレビュー)
-
このレビューはネタバレを含みます
幕末から日露戦争まで、仏教・神道・キリスト教の各派の戦争「適応」「従属」から何を学ぶか。
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近代日本というドラマを創造するさい、宗教はどのような役割を果たしたのだろうか。戦争という切り口からその歩みを丹念にスケッチしたのが小川原正道『近代日本の戦争と宗教』(講談社選書メチエ、2010年)である。
著者は、『大教院の研究』(慶應義塾大学出版会、2004年)や『西南戦争』(中公新書、2007年)で知られる近代日本の研究者。本書は「新書」以上「専門書」未満といる「メチエ」の一冊だが、なかなか本格的な労作だ。
タイトルの『近代日本の戦争と宗教』の通り、近代日本の歩みとは戦争の歴史にほかならない。そのために産業や社会、そして文化をすべて「動員」してきた歴史といってよい。そしてその全てに関わるのが「宗教」だ。戦争に注目すれば、戊辰戦争から太平洋戦争での破算にいたるまでトピックスは全て「戦争」であることは論を待たないであろう。
さて、本書が注目するのは近代日本「創業期」の明治時代だ。時代を戦前・戦後に区切っても、昭和・大正と明治が特異な点はいくつか存在する。それは対内戦争と体外戦争の両方を経験した時期ということだ。そこに宗教はどのようにかかわるのであろうか。
洋の東西を問わず、宗教は民衆と深い関係にある。近代国家は基本的には宗教への「収斂」を「国家」を否定するものとして退けるのが常であるが、有用である場合、その「化他」の側面と妥協する。
明治最初期の宗教史のインパクトとは何かといえば、廃仏毀釈であろう。「出家」は「在家」としての「国民国家」に不要だし、記紀神話とも中和しない。さまざまな思惑は、当事者に存在する。しかし、影響力の拡大としての「地位の確立」は、「国家の役に立つ」という眼差しへと収斂していく。
そうそう「地位の確立」といえば、思い出すのは、「世界における一等国」。宗教界においてもそのレースが始まるという次第だ(少し強調。
そもそも宗教は時代との交流で「育成」されるものであろうが、時代を撃つものでもある。その交流の経緯から、
「さて、どうするか」
再考させられる一冊である。先に言及したとおり著者は真面目に史料精査に基づく経緯の描写を描写する。その歩みを丁寧に追うことは、宗教「団体」がいかに国家と向き合ったのかをまざまざと見せてくれる。
ハナから協力や支援・迎合を全否定するわけでもないし、沈黙や逃避が善であるわけでもない。しかし、この経緯から何を学ぶのか……というのは考えさせられる。投稿日:2012.04.26
このレビューはネタバレを含みます
戊辰戦争、台湾出兵、西南戦争、日清戦争、日露戦争に対して仏教、神教、そしてキリスト教がどのように対応したのか。特に戊辰戦争での佐幕派だった東・勤王派の西本願寺が競って、新政府軍を支えたことは興味深かっ…たですし、真宗を禁じていた薩摩で真宗を解禁に尽力した田中直哉という人物の悲劇的な最期なども興味があります。)特に興味深かったのは、日露戦争をロシアはキリスト教対非キリスト教の対決とアピールしようとしたことに対して、日本政府・軍・警察を挙げて、熱狂的な反露の国民の迫害から、日本国内のロシア正教会・教会員を保護しようとし、正教会も戦争翼賛の体制をとったとのことです。ニコライ主教も「忠良な日本帝国臣民として国家に奉仕」することを強調していたというのは驚きでした。また日本基督教青年会の本多庸一らが奉仕同志会を催すなど、戦争協賛体制を仏教と競って作っていく中で、矢部喜好のような日本初の良心的兵役拒否者を出し、内村鑑三、柏木義円らの非戦論者が多く出てきたというのは喜ばしいことです。北村透谷も基督教の影響で日本平和会メンバーとして非戦論を主張していたということは知らない情報でした。続きを読む
レビューの続きを読む投稿日:2013.08.18
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