移民の宴 日本に移り住んだ外国人の不思議な食生活
高野秀行(著)
/講談社文庫
作品情報
日本に住む二百万を超える外国人たちは、日頃いったい何を食べているのか? 「誰も行かない所に行き、誰も書かない事を書く」がモットーの著者は、伝手をたどり食卓に潜入していく。ベリーダンサーのイラン人、南三陸町のフィリピン女性、盲目のスーダン人一家……。国内の「秘境」で著者が見たものとは?
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商品情報
- 著者
- 高野秀行
- ジャンル
- 教養 - ノンフィクション・ドキュメンタリー
- 出版社
- 講談社
- 掲載誌・レーベル
- 講談社文庫
- 書籍発売日
- 2015.09.15
- Reader Store発売日
- 2015.10.16
- ファイルサイズ
- 43.5MB
- ページ数
- 416ページ
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この作品のレビュー
平均 3.8 (40件のレビュー)
-
高野秀行さんの本を読んだのはこれで10冊目。高野ファンを公言して3年。早くあと10冊(著書の約2/3)は読みたい。それでだいたいその人の全貌がわかると私は思っている。本書は高野秀行の「視野と方向性」が…わかる好著だった。
東日本大震災の直前、高野さんは日本に207万人もいるという在日外国人の「ふつうの姿」を知ろうと、食事風景の取材を始める。それまでの約20数年間、高野さんはアジアや各地の辺鄙な場所に行っては冒険と地域の人々と交流をしてきた。普通の姿を知るならば、食べているところが1番である、と私も旅をして覚えがある。その時に人は他所行きの服を脱ぐのである。ただし、高野さんには他人には無い能力がある。それまでに培ってきた人の懐に飛び込む会話術と語学力、そしてアジア新聞役員だったときの情報収集力である。
雑誌の連載ということもあって、本来なら深掘りするべき発言や行動もサラッと流してはいるが、重要な一言も食べながら聴けたようだ。
高野さんと一緒に、私も様々な外国の「ふつうの姿」に出会ってゆく。
以下、気に入ったところ。気になったところ。
(ぐだぐだと長くなっています。想いがあっち行ったりこっち行ったりして、上手くまとまらなかった)
⚫︎イランは黒いベールで覆われている。そのベールをパッと剥がすと、色鮮やかで繊細で人間味あふれた世界が広がっているのである。
⚫︎南三陸町ではフィリピン人が最も多く15人いた。9人が家を流され、1人が行方不明。悲しいこともいっぱいあったのに久しぶりのフィリピン料理パーティーに集った女性たちの明るいこと。コミュニティが機能している。
「美しいものは何もかも流された。」「残ったのは私だけ。1番美しいものが残った」
⚫︎題名の「移民」とは「日本に移り住んだ外国人」という意味で使っているが、この言葉をネガティブに捉える人もいる。アジアでは反発は少なく、ヨーロッパ人には拒否する人もいる。最大の政治問題だから敏感になっているのだろう。
⚫︎以前、他の本のレビューで「中国人は冷めたご飯を嫌うからオニギリがないのだ」と書いたら「でも弁当はあるのではないか」と質問された。此処で解決した。中国人が冷めた弁当を嫌いというのは徹底されていた。学校の教室には「保温器」が置いていたのである。(←中国・韓国のコンビニにも弁当はあるが、必ずレンチンするのだろう。そういえば台湾の駅弁は決して11時前には売り出さないし、時には列車の中で販売していた。インドの弁当も午前10時ごろ嫁さんが作って、それを職場まで運ぶ職業があり、それがテーマの映画もあった)←冷めても美味しい弁当というコンセプトは、もしかしたら世界で日本のみなのかもしれない。
⚫︎ムスリムが最も日本人と共存しにくいのは、一日5回の礼拝でも、ベールの義務でもなくて、食べ物の禁忌(例えば豚‥‥調味料に入ってもダメ)だろう。(←先日、イオンのエレベーター横の陰で午後5時過ぎ、ベールを被った女性が敷物を敷いて北西を向いて礼拝をしていた。凄いと思った)魚の方が規制が少ないので、ムスリムは寿司好きが多いらしい。
⚫︎ 「日本人は神様いないでしょ?だから壁にぶつかったときにダメになっちゃう。自殺しちゃう。僕たちは神様いるから、壁にぶつかってもなんとかなるって思えるんだよ」あるムスリムはそう言った。←在日外国人の敬虔な信者は無宗教の日本人をそう評価しているのかもしれない。事実は、そうとは言えないとのだけど、ちょっと見には説得力ある。
⚫︎ロシア聖教の生活を初めて知る。古式かしこきキリスト教という感じ。
⚫︎「ボルシチは作るのに三、四時間かかる」「で、作ったら毎日食べるのに、日本人は次の日に別のものを食べたがる。三日目くらいが1番美味しいのに」←外国人は日本食が簡単だと複数外国が言う。曰く魚を焼くだけ、納豆や豆腐刺身はそのまま、しかし、毎日品を変えてつくるとは思っていない。これは見事な文化の違いである。←高野さんは更に、「日本人は外国の食べ物を日本式に作り変える」と指摘する。日本式ローストビーフ、日本式カレー‥‥。「本質を変える暇があったら目先を変えたい」。正に!これこそ、加藤周一のいう雑種文化が正に現代も生き生きと根づいている証だろう。
⚫︎「ロシア人というだけで仕事がない」「日本語の一級検定を持っていても、ミニストップでもユニクロでもネイルサロンでも雇ってくれない」←今は少し事情が変わっているかもしれない。
⚫︎「ニュース見ても分かると思うけど、朝鮮族は普段はおとなしくしていても、カッとなると激しいんですよ」←この辺りは、私は思い当たるところがたくさんあるけど、日本人は、特に嫌韓の人たちは理解しようとしない。
⚫︎ 「キューリもトマトも味がしない。『なんだ、こりゃ?』って思いましたね。私は実家では近くの畑から取り立ての野菜を食べてましたから、なおさらです」(朝鮮族の男の言葉)←最近学んだが、朝鮮族系中国人のいたところは満州であり、そこは地球の中で土地が肥沃な地域である。野菜の味が変わって当然かもしれない。
⚫︎高野さんは2012年の単行本後書きで、「外国人差別は激減した」と書いたが、2015年の文庫版後書きで「間違いだった」「今は自賛史観、手前味噌史観が大流行りだ」と嘆く。←その間に何が起きたかというと、別に世の中が変わったわけでなくて、オリンピックが決まったからだろうと、私は推測する。「日本人は成熟したなんで書いたが、全然まだだった」と高野さんは書く。←この意見に対しても、Amazonレビュアーの中には社会学者の論文の不備を突くかのようなことを指摘して、高野秀明は偏っている、と攻撃していた。高野秀明は単なる旅ライターに過ぎない。自分の体験してきたことに、感想を書いているのに過ぎないのに、何を息巻いているのかと、私は思った。しかも、高野さんの意見は目先のことに惑わされない。本質をついていることが、多いとさえ、私は思うのである。
続きを読む投稿日:2021.11.08
外国から日本に移住した人たちは普段どんなものを食べているのか。全国の町に溶け込みながら、食を通じて日本と生まれ故郷を行き来する人びとに取材したルポルタージュ。
本文に入る前に口絵の写真を見ているだ…けでお腹が空く。著者は執筆当時主夫になったばかりで料理の心得がなかったらしく、料理の詳しいレシピが紹介されていないのが惜しい。
取材期間中に東日本大震災が起こり、それが全体を通して大きなトピックになっていく。つてを辿って疎開したり自国に一時帰国する人も多いなか、フィリピン人女性たちが残る東北の漁師町に食材を持っていく章の明るさは泣けてくるほどだ。文化の違いや差別的な視線を乗り越え、長い時間をかけて家族や隣人たちとの関係を築いてきた彼女たちは、家が倒壊しても自分の居場所はここだと言い切る。
それと対極のエピソードもある。中国生まれの朝鮮人マッサージ師は「日本はラク」だという。中国に移住した移民2世だった彼にとって、漢族との軋轢に苦しめられてきた中国よりもしがらみのない日本が気楽だった。
著者は取材を申し込んで各人のソウルフード的な料理を作ってもらうのだが、自分で「ラーメンとカレーは日本の国民食」なんてことを言いながらブラジル人が作るペルー料理に首を傾げ、"らしさ"を求める人間心理を見つめているのが面白い。こんなにいろんなところへ旅している人でもステレオタイプから逃れるのは難しいんだなぁ。続きを読む投稿日:2024.03.22
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