囁く影
ジョン・ディクスン・カー(著)
,斎藤 数衛(訳)
/ハヤカワ・ミステリ文庫
作品情報
パリ郊外の古塔で奇妙な事件が起きた。だれもいないはずの塔の頂で、土地の富豪が刺殺死体で発見されたのだ。警察は自殺と断定したが、世間は吸血鬼の仕業と噂した。数年後、ロンドンで当の事件を調査していた歴史学者の妹が何者かに襲われ、瀕死の状態に陥った。なにかが“囁く”と呟きながら。霧の街に跳梁するのは血に飢えた吸血鬼か、狡猾な殺人鬼か?吸血鬼伝説と不可能犯罪が織りなす巨匠得意の怪奇譚。改訳決定版。
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商品情報
- シリーズ
- 囁く影
- 著者
- ジョン・ディクスン・カー, 斎藤 数衛
- ジャンル
- 小説 - ミステリー・サスペンス・ハードボイルド
- 出版社
- 早川書房
- 掲載誌・レーベル
- ハヤカワ・ミステリ文庫
- 書籍発売日
- 1981.06.26
- Reader Store発売日
- 2015.05.11
- ファイルサイズ
- 0.3MB
- ページ数
- 344ページ
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この作品のレビュー
平均 3.5 (4件のレビュー)
-
このレビューはネタバレを含みます
5-
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導入部はやや唐突で、何が起こっているのか、何が起ころうとしているのかを把握するのに苦労させられる。何だかよくわからないまま、結局はリゴー教授の“6年前の事件の話”に引き込まれざるを得なくなるのだが、それはそれで良いのかもしれない。何しろそれ以降は、著者の卓越したストーリーテリングで、最後まで目が離せないことになる。真相が明かされるシーンでは、バラバラになっていたピースが、ピタピタとはまり込んでいく様が目に浮かぶようで、感嘆するほかない。
トリックについても、過去の事件の真相についてはさして驚きはないが、現在の事件の方は“おお、なるほど!”と膝を打つほどで、とても感心させられる。
吸血鬼だ何だと騒がれる怪奇要素については、添え物程度と考えて良い。結局は、不可思議な出来事に遭遇した村人Aが「ありゃ幽霊の仕業ぢゃ!天狗様ぢゃ!河童ぢゃ!」と喚いているのと大差ない。ただし著者の巧みな筆致によってその怪し気な雰囲気は増幅されている。
人間関係にご都合主義的な要素はあるものの、巧みなストーリーテリング、秀逸なプロット、驚きのトリック、意外な犯人、そして戦後という時代背景など、様々な要素が渾然一体となり、かつ絶妙なバランスで成立している本作は著者の傑作の一つと言って差し支えないだろう。
ただ、そもそもフェル博士は“何故”マイルズを〈殺人クラブ〉に招待したのだろう? 〈殺人クラブ〉は通常、会員以外は講演者しかゲストに呼ばないというし、その日はリゴー教授が講演をする予定だった。フェル博士はリゴー教授の話をマイルズに聴かせたかったのだろうか、何のために? マイルズが所用でたまたまロンドンに来ていて、単に会いたかったから? だったらわざわざ〈殺人クラブ〉でなくても良いだろう。わからない。どこかにそのことに関する記述があっただろうか。ありそうなところをざっと読み返してみたが見つけられなかった。(ちなみに“リゴー教授の話を聴かせたかった”説を突き詰めていくといろいろと妄想できて楽しい。)
まあマイルズがそこを訪れなければ話は始まらないので、プロットのためにはそれは必然、故に理由まで気にしなくても良い、という気もしなくもないのだが、やはりどうにも腑に落ちない。投稿日:2012.11.14
結局、この物語で語りたかった事は何だろう?
不可能状況、不可解状況を作り出すためにわざわざ登場人物達を歪曲したような感が強く、興醒めした。物語を語るのなら、例え登場人物に通常考えられないような奇癖、性…格を持たせても、納得できるような描写、説明が必要である。現実にありえない事でもそれを思いつき、理論立てた作者の力量に感嘆するのだが、本作にはそれが皆無である。
だから真相を明かされても、ご都合的だと思われ、カタルシスがないのだ。
あ~、とても残念だ。続きを読む投稿日:2019.05.28
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