やさしい女・白夜
ドストエフスキー(著)
,井桁貞義(訳)
/講談社文芸文庫
この作品のレビュー
平均 3.6 (10件のレビュー)
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フョードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキーの中編2編です。
どちらも男性から女性への愛をテーマにしていますが、「愛すること」への苦悩が滲み出た作品になっています。しかし、男性目線から言えば、これはむ…しろ「面倒な女」「性悪女」に「問題あり」なのではないだろうか。(←わっ、ブーイングは赦してください。(笑))ドストエフスキーさん、あんまり「女」でいい目にあってこなかったのか?(笑)
とはいえ、『やさしい女』はまず男が悪い!(笑)中年であるにもかかわらず、金に物を言わせ少女と結婚したはいいが(羨ましい!わっ、ブーイングは赦してください。(笑))、その妻への本当の愛を内に秘めたまま伝えることもせず、不倫→駆け落ちの一歩手前まで年若き妻を追いこんでしまっています。そしてその後、夫がしめす妻への犬のような従順ぶり。妻は妻で、「やさしさ」を通り越して、夫の質屋という職業、そして、かつて士官であった頃の決闘からの逃げ腰事件を軽蔑しており、そうした嘲笑や不倫事件が夫を卑屈にさせた面もあります。しかし、妻はその「やさしさ」が故に(?)不倫の過去を苦悩しており、夫のしめす重たすぎる「愛」をもはや受け入れることができなくなった時、妻がとった行動はそれしかなかった・・・。
この作品は、その最後の時から遡って夫が回想する形式であり、そのたどたどしい思いのたけをぶちまけるような文体は、夫の後悔と茫然とした様子を如何なく顕わし、読者へその「愛の重さ」もストレートに伝えてくれます。重たすぎる「愛」。なかなかさじ加減が難しい感情だけに、身につまされるテーマではありますが、ドストエフスキーはこの中篇の中で惨めな男を通して見事に文学表現として昇華させているといえるでしょう。
一方、『白夜』のヒロイン、ナースチェンカは結果としていえば「性悪女」ですね。(笑)しかし、主人公の夢想男(!)が勝手に横恋慕していたという見方もありますが・・・。(笑)主人公の夢想男(!)は、ある晩出会ったナースチェンカと毎夜のようにお互いの話をするうちに、ナースチェンカの恋の橋渡しをする羽目になってしまった・・・。そして、その結末とは・・・。一回ひねりのオチもなかなか面白い作品に仕上がっていると思います。これまでの夢想した過去の語りようと、ナースチェンカの過去の語りようを対比させるかのような語り口の違いは、性格から状況まで一気に読者にさらけ出す、卓越した著者の描写力といってよいでしょう。ただ、「話します、話します」と言って一向に話が進まない会話や(笑)、「神よ」とさかんに言いまわされる常套句には少々疲れた部分もありますが(笑)、ロシア的(!)な会話の妙もたっぷり味わえる文体になっているのではないかとも思います。少し現実感がない描写もたびたびあるのですが、やはりそれも「白夜」のなせるわざなのでしょうね。(笑)
夢想と愛ゆえの盲目が産んだひとときの「愛」。ある意味、使い古されたテーマであるともいえますが、ドストエフスキーが幻想的雰囲気の中で描く「愛」の語りがとてもよい作品になっています。
あれっ!?、こうしてみると、やっぱり男の方に「問題あり」なのか?(笑)続きを読む投稿日:2014.02.16
このレビューはネタバレを含みます
『やさしい女』は、41歳の質屋の男が小金にものをいわせて16歳の少女と結婚するものの、ある日自殺されてしまい、死体を目の前にいろいろと回想する話。
レビューの続きを読む
この男、自分はえらくて妻や女を無意識に下にみてて、…その癖なにも喋らなくても相手が自分を理解してくれるはずだし、愛してくれているはずとかいう謎の思い込みがすごくて、序盤の方何回も「うわ…きっっつ…」って言っちゃった。
ずっと無口を通してたとおもったら、急に感情迸りまくって妻に跪いてキスしたりするもんだから、感情表現が下手くそか…ってなった。
他人の気持ちわからなさすぎるし、俺が俺がの場面が多い。
でもラスト妻が自殺するシーンからはなんだか泣けた。
ここから情景の描写が特にすごい気がする。
お互いの関係性が歪な状態でも構わないからただ生きてほしかったって思ってもらえたなら幸せだったのかもしれないけど、でもそれは相手が生きているときに時間をかけて態度と言葉で示さなきゃなにひとつ伝わらなかったんだと思うよ…。
私は妻の気持ちがよくわかる部分もあったし、短くまとまっていて読みやすいので、ドストエフスキーの作品の中ではかなり好きな方だった。
『白夜』は以前別の短編集で読んだことがあるけど、最後のどんでん返し(?)が悲しい結末に繋がるけど、なぜかむしろ清々しいような気持ちにもなれるのでこれも好き。続きを読む投稿日:2023.03.01
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