[新訳]留魂録
松浦光修(編訳)
/PHP研究所
作品情報
幕末の激動期、短い生涯を激しく燃やした吉田松陰。その情熱は周囲を動かし、高杉晋作や久坂玄瑞など、維新の中心となる人物を生み出す。本書は、松陰が、獄舎で処刑される前日の夕刻まで、自身の思いを発信し続けた『留魂録』を現代訳し、解説。さらに、『留魂録』以前の手紙や論文の中からも「死生観」をあらわした史料を選び加えた。また、一番弟子ともいえる金子重之助、松陰の処刑後も自らの志を貫き維新を迎えた野村和作に注目し、松陰との関わりを著した。死を恐れることなく、つねに前を向きつつ、死によって、みずからの命が断ち切られるまで、“誠”の心のもとに“私”を“更新” してやまなかった松陰の「死生観」を学ぶ。
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商品情報
- シリーズ
- [新訳]留魂録
- 著者
- 松浦光修
- 出版社
- PHP研究所
- 書籍発売日
- 2011.10.24
- Reader Store発売日
- 2014.06.27
- ファイルサイズ
- 0.8MB
- ページ数
- 360ページ
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この作品のレビュー
平均 4.4 (11件のレビュー)
-
新訳 留魂録
吉田松陰の「死生観」
編:松浦 光修
留魂録:吉田松陰が死刑を目前として、獄中で記した書
「身はたとひ 武蔵の野辺に 朽ちぬとも 留め置かまし 大和魂」
欧米諸国による侵略は、正義…、に反しています
言い換えれば、この場合、それに立ち向かうことは、つまりは正義を守ることになるのです
つまり、攘夷の根底には、正義を守るという考え方があります。
この考え方が、吉田松陰をはじめとする幕末の志士たちの根底にありました
本書は、吉田松陰の死生観をあらわしていると思われる史料を選び、それを現代訳したものです。
行動の人、吉田松陰の軌跡です。彼の詠んだ和歌も味わい深い
気になったことは以下です。
「世の人は よしあしごとも いわばいえ 賤(しず)が誠は 神ぞ知るらん」
世の中には私たちの行動について、ほめる人もあれば、けなす人もいる。言いたい人は何とでも言えばいいのです。私たちの心の中は、ただ神さまだけがしっているから
「かくすれば かくなるものと しりながら 已むに已まれぬ 大和魂」
できることなら、七たび人間に生まれて、国賊を滅ぼしたい
頼山陽の日本外史での、楠木正季のことばである
松陰は松下村塾で、「日本外史」をテキストの1つとして教えているほど、高く評価していました。
私は、ひたすら忠義のために行動しようとしているのに、彼らは、その行動を起こすことによって、どのような成果をあげられるのか、などと、そんなことばかり考えて、結局、何も行動しないところである
松陰にとって、忠義とは行動そのものであって、結果ではない
いつの世も、人は結果を気にしがちなものです。しかし、現代人には、とくにその傾向が強いように思われる
ですから、今の日本人は、発言や行動が、慎重すぎるほど、慎重になってしまったのでしょう
その結果、現代の日本からは、ほんとうの意味での自由がどんどん失われつつあります
今のところ、日本には、、ほそぼそと、ではありますが、言論の自由が保障されています
ですから、幕末の日本のように、何かを言ったから、書いたからなどと、そういうことですぐに投獄されたり処刑されたり暗殺されたりする、というところまでは、まだいたっていません。
しかし、幕末という時代は、何らかの政治的は発言や行動がすぐに自分の死へ直結した時代です
人はよく、天の時、という。しかし、人はあらかじめ、天の時を知ることはできない
それは振り返った時に、はじめて見えてくる
行動を起こしたものが、追憶のなかでのみ、それを知るのである
古今東西、人にとって、嫉妬心 というのは、やっかいなものです。
かねてから、私は、人というものが、罪 を犯す最大の原因の1つは、嫉妬心 ではないかとさえ思っています
松陰が唱えた思想 草莽崛起(そうもうくつき) つまり、民間人が立ち上がって世の中を変えることである
一心不乱になりさえすれば、何ごとに臨んでも、少しも心配することがなくなり、縄で縛られても、投獄されても、処刑場に臨んでも平気になる
禍福は縄のごとし
神へ願ふよりは、身で行ふのがよろしく候
松陰を支えた孟子の言葉
至誠にして動かさざる者は、未だ之れ有らざる也
誠をきわめれば、その力によって動かせないものは、この世に1つもない
「云わずても 君のみは知る 我が心 心の限り 筆も尽くさじ」
「帰らじと 思ひ定めし 旅ならば ひとしほぬるる 涙松かな」
死して不朽の見込あらば、いつでも死ぬべし、生きて大業の見込あらば、いつでも生くべし
死んで自分が、不滅の存在 になる見込みがあるのなら、いつでも死ぬ道を選ぶべきである
生きて自分が、国家の大業をやりとげることができるという見込みがあるのなら、生きる道を選ぶべきである
死友に負(そむ)く者、安(いずく)んぞ、男子と称するに足らんや
死んだ友を裏切るような生き方をする者を、どうして男らしい男とよべるであろうか
待ち得たる 秋のけしきを 今ぞとて 勇ましく鳴く くつわ虫かな
親思ふ 心にまさる 親ごころ けふの音ずれ なんときくらん
棺の蓋がしまったあと、に、のちの世の人々で議論してもらえればいいのではないか、と思っています
極限状態にありながら、どことなく不思議な明るさと透明感がただよう心境、それは、安心立命の境地です
安心とは、仏教の言葉で信仰や実践により到達する心のやすらぎを意味し
立命とは、儒教の言葉で、天が己に賦与したものを、まっとうするという意味になります
松陰は自分の死を一粒のモミにたとえています。私は死んでも、私の志を継ぐ者があらわれれば、それは私が、立派な種モミであったということではないか
むしろ玉となりて砕くるとも、瓦となりて全かるなかれ、
正義や名誉のためならば、死を厭わず、むしろ、宝石が砕けるように散るべきである。決して生きながらえて、価値のない瓦が残りつづけることのないように命を全うすべきでない
日本中の人々の心を、誰もが納得できる一点、に結集するしかありません。その、誰もが納得できる一点、こそが天皇だったのです
吉田松陰の死は、安政6年、1859年10月27日、明治維新を待つこと9年、日本橋伝馬町の獄舎でのことであった
目次
はじめに 『留魂録』の奇跡
第1章 死生を想う
第2章 死生に対す
第3章 死生を悟る
第4章 死生を決す
第5章 死生を定む(『留魂録』上・安政六年十月二十六日)
第6章 死生を分かつ(『留魂録』下・安政六年十月二十六日)
第7章 死生を超えて―わが兄・吉田松陰
おわりに 魂をとどめて
ISBN:9784569800028
出版社:PHP研究所
判型:新書
ページ数:360ページ
定価:950円(本体)
発売日:2011年10月27日第1版第1刷
発売日:2020年03月03日第1版第6刷続きを読む投稿日:2024.01.24
歴史はさっぱりですが、吉田松陰について学ぶ機会があり、もっと彼の人となりや思いを知りたくて読みました。
解説が丁寧で本当に分かりやすく、この本を足がかりに他の本にも手を出して着々と幕末にはまりつつあり…ます。続きを読む投稿日:2022.03.27
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