フレームワークを使いこなすための50問
牧田幸裕(著)
/東洋経済新報社
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以下読書メモ
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フレームワークを使いこなすための50問 なぜ経営戦略は機能しないのか?
■なぜ経営戦略は機能しないのか?
●戦略を正しく「策定」できない
・現状分析が正しくできない(しない)
・施策を正しく策定できない
●戦略を正しく「実行」できない
・経営戦略は他人事
・戦略リテラシーがない
●戦略を「継続」する根性がない
・未来永劫機能する過剰期待
・試行錯誤の根性の欠如
●経営戦略「策定」と「実行」を「継続」できない原因
・経営戦略の策定は、あるタイミングを切り出して、その条件下で何が課題でそれをどう解決すれば良いのかを決定することである。
・しかし、市場も顧客も一定の条件で停止しているものではなく、常に流動している。従って、あるタイミングで決定された戦略が常に機能するものではない。
・一度戦略を策定したからといって、それで終わりではなく、常にアップデートが必要となる。
■フレームワークとは何か?
・フレームワークとは、情報を整理する「枠組み」のことだが、もう一つ重要な意味合いがある。
・それは、「抜け漏れなく、重複なく、全体として網羅的に」情報を整理する枠組みだということだ。だから、フレームワークを活用しなければ、自分の頭で適当に、または、思いつきで事象を整理することになる。
・そうすると、本来であれば検討すべき事象の抜け漏れが生じ、または検討すべき事象を重複させ、分析の前提段階で現状の整理ができない状態になってしまう可能性が非常に高くなる。
■「全社戦略の策定」とは
・1.複数の事業が存在する場合に、それぞれの事業にどのように経営資源を配分するか決定すること
・2.自社の事業領域を決定すること
・3.自社の成長戦略を決定すること
■「経営戦略の策定プロセス」
・1.現状分析
・2.分析結果から戦略を策定
・3.策定された戦略を実行計画に具体化
■全社戦略策定の目的:経営資源の配分・ドメインの決定
・ドメイン決定については、明確なフレームワークは存在しないのだが、以下の3つの要素で検討することが多い
・1.自社のどのような強みを生かし
・2.どのような顧客に
・3.どのような価値を提供するか
■全社戦略策定の目的:成長戦略
・成長戦略の検討の方向性は大きく分けると以下の4つがある
・1.既存の商品・サービスを、既存の市場(顧客)に売れないか
・2.既存の商品・サービスを、新規の市場(顧客)に売れないか
・3.既存の市場(顧客)に、新規の商品・サービスを売れないか
・4.新規の商品・サービスを、新規の市場(顧客)に売れないか
なぜ現状分析は機能しないのか?
・フレームワークを使う目的とタイミングを適切にするには、経営戦略の構造が分からなければならない。
・頭の中に常に経営戦略の構造=地図を描いて欲しい。
・「現状分析」で問題になるポイントは2つある。
・それは、現状分析で「何をすれば良いのか」「どこまでやれば良いのか」が分かっていないということ。
■日本企業の90%は現状分析でつまずいている
■現状分析とは「視点、示唆を提示」すること
・「数値計算のための数値計算や、棒グラフのための棒グラフでは何の足しにもならない。チームメンバーやクライアントに<面白そうじゃないか>と思わせるような、優れた見識や重要な発見をもたらすようなものでないとダメなんだ」
・情報収拾は現状分析を行う上で必要なタスクではあるが、情報収集をしたからといって、それで分析ができるわけではない。収集された情報の意味合いを考え、情報から導き出せる視点、示唆を炙り出し、それをアクションにつなげていくことが現状分析なのである。
・現状分析で事象を整理して、インサイト(洞察)を引き出すことまで行う必要がある。
■なぜ多くの日本企業の現状分析は「分析」にならないのか
●原因1:フレームワークを活用しないから情報整理ができない
・フレームワークを活用せず、自分の頭で適当に、または、思いつきで事象を整理しているがゆえに、本来であれば検討すべき事象の抜け漏れが生じ、検討すべき事象を重複させ、分析の前提段階で現状の整理ができない状態になってしまっているのである。
●原因2:仮説を持たないので、視点や示唆を出せない
・仮説を持つとは、情報を収集する前に「おそらく今回の情報収集で出てくる結論はこうなるだろう」と考えることだ。仮説が持てると「この仮の結論が正しいかどうかを証明するためには、この情報を収集しなければならない」といって、情報収集の対象を絞り込むことができる。
●原因3:限られた情報で意思決定をする勇気を持てない
・ビジネスの現場で必要な情報が全て集まることはなかなか考えにくい。かつ、全て情報を集めようとすると膨大な時間がかかりスピードが遅くなってしまう。戦略立案担当者は限られた情報で意思決定をする勇気を持つ必要がある。
■現状分析のフレームワークの地図
■3C分析で明らかにしたいこと
・自社が突き抜ける方法を考える
●市場
・市場はどう変化しているのか
・市場が変化した結果、かつての成功要因が機能しなくなっているのではないか
・今後その市場で成功する要因は何か
●競合
・市場の変化に対して、競合企業はどのように対応しているのか
・その対応に必要な経営資源(ヒト・モノ・カネ)はどのようなものか
●自社
・市場の変化に対して、自社はどのように対応すべきなのか
・競合企業の対応で参考にできるところは何か
・その対応に必要な経営資源(ヒト・モノ・カネ)はどのようなものか
■市場分析で明らかにしたいこと
■競合分析はどのようなプロセスで行われるのか?
●1.ゲームの結果を明らかにする
・業績の勝ち負けを明らかにし、誰(どの企業)が勝者で、自社は勝者なのか敗者なのかを明らかにする。
・ビジネスにおける勝者、敗者の判断基準は「パフォーマンス」と「効率性」
┗パフォーマンス:売上高、営業利益率、原価率、販売管理比率など
┗効率性:生産性、ROI、ROE、1人あたり売上高、在庫回転率など
●2.勝因、敗因を明らかにする
・「バリューチェーン」のフレームワークを使用する。
■バリューチェーン分析で明らかにしたいことは何で、どのタイミングで必要となるのか?
・パフォーマンスに対して強み、弱みがどういう因果関係で結びついているのかを明らかにすることがバリューチェーン分析の目的となる。
・全体を見ていても比較はできない。構成要素で比較しなければならない。
・競合企業の情報は入りにくい、その結果自社の情報だけで判断しがちになる。
・比較の判断はどうしても自社に甘くなりがちである、自社の能力はシビアに評価しなければならない。
■事業戦略を策定する上で、現状分析フェーズで求められることは大きく分けると3つある
・1.市場の変化を読み取ること。その市場での成功要因は何なのか明らかにすること。
・2.競合企業が、その変化にいかにうまく対応しているのか、または何に対応できていないのか、明らかにすること。
・3.それに対し、自社の対応には何が足りず、自社の改善ポイントが何なのかを明らかにすること。一方で、自社が変化をいち早く読み取り、成功要因を実現し、突き抜けるにはどうしたら良いのか明らかにすること。
・事業戦略を立案する上で必要な「洞察(インサイト)」上記3要件を満たすものであれば良い。この要件が満たされれば、次は自社の変革ポイントを実際に実現していく戦略を策定していくことになり、現状分析はその役割を果たしたことになる。
なぜ戦略策定は機能しないのか?
■せっかく行った分析を活用していない戦略が多い
・1.「現状分析」で明らかになった問題・課題と、解決策である戦略の因果関係を意識していないから。
・2.そもそも「現状分析」が大した分析になっておらず、いきなり戦略を策定せざるを得ないから。
■戦略策定のパターンはどれだけ存在するのか?
・大きく7パターン存在
●ポーターの基本戦略
・1.コストリーダーシップ:市場のマスを対象
・2.差別化:市場のマスを対象
・3.集中:特定市場をターゲット
●コトラーの競争上の4つの地位
・4.リーダー企業
・5.チャレンジャー企業
・6.フォロワー企業
・7.ニッチャー企業
●戦略パターンの基本原則に則り、戦略を立案する
・多くの日本企業は、戦略の基本パターンを無視して戦略を立てている。
・ポーターとコトラーの戦略基本パターンを採用する。
┗ターゲット顧客
┗戦略の基本方針
┗マーケティングの基本方針
なぜ中期経営計画は計画通りに実行されないのか?
■中期経営計画には、どのような構成要素(コンテンツ)が必要となるのか?
※71%の図37をまとめる
●中期経営計画の構成要素1:目標(ゴール)の提示
・定性的目標
・定量的目標(売上、利益)
●中期経営計画の構成要素1:目標達成プロセスの提示
・目標を達成するためには、様々な問題・課題が生じる。そこで、目標を達成するには、今どのような問題・課題があり、何をクリアしなければならないのかを明らかにする必要がある。
┗目標達成への課題・問題
┗目標達成への問題解決策
┗解決策実行の具体的スケジュール
・トヨタ自動車の中期経営計画のように、何を行わなければならないのかが明らかになったら、それを誰が(どの部門が)いつまでに、どういう段取りでどう責任を持ち行っていくのかを明らかにしなければならない。
・解決策実行の具体的なスケジュールを立てることになる。これがワーク・ブレイクダウン・ストラクチャー(WBS)と呼ばれるものだ。
■日本企業の中期経営計画の問題点
・日本企業の中期経営計画を見ると、目標(ゴール)設定はまず間違いなく行われている。ゴールを決めない計画などありえないからだ。しかし、目標の達成プロセスでは問題がある企業が多い。
・まず、目標達成の問題・課題の洗い出しが甘い企業がある。いまだに、目標売上は気合と根性で達成するという雰囲気の中期経営計画を提示している企業もあり、そういう企業は目標を達成するために、何が問題で何が課題なのか明らかにできていない場合が多い。
・次に、問題・課題を明らかにできても、それに対する対処=戦略が明らかになっていない企業は非常に多い。これは、戦略策定の基本パターンが理解できていないこともあるし。それがゆえに場当たり的に問題解決を行なっているからでもある。
・このように、目標達成プロセスの達成手段でつまづいている企業は非常に多い。
・そして、目標達成手段を提示できても、それを実行する計画(スケジュール)を決定していない企業も多い。こうなると、戦略は絶対に機能しない。「やらなければならないこと」を決めても、「誰が、いつまでに、どうやってやるのか」を決めないと、やらなければならないことは絶対に達成されないからだ。
■中期経営計画はなぜ利益拡大と成長の要素を入れなければならないのか?
・上場企業は必ず、日上場企業でも、中期経営計画にはこの要件が必要となる。なぜか?企業の価値を測る指標の1つである株価は以下の構造を持つからだ。
●株価=1株あたりの利益(EPS)×株価収益率(PER)
・企業の価値は、今どれだけ利益を出せるか(1株あたりの利益)と将来どれだけ成長するかという成長率(株価収益率)に依存する。
・中期経営計画を立てる根底には、これから数年間でさらに「企業の価値」を向上させるという目標があるはずであり、そうだとすれば、利益拡大と成長は中期経営計画策定の際に必要な要素となるのだ。
・そこで、利益拡大のための業務効率化の策や、成長のためのM&Aなど具体的なプランが中期経営計画に盛り込まれることになる。
■WBSを策定する際のキモは何か?
・1.タスクの抜け漏れを防ぐこと
・2.妥当なタスク処理期間の設定を行うこと
・3.ゴールの明示を行うこと
■高度化・専門化する業務の進捗・リスク管理法
・部下のプロジェクトマネジャー化を進める対応が機能した。
・部下がプロジェクトマネジャーとして自分の業務を管理し、リスクを明示できるようにした。これにより、部下自身でタスクの抜け漏れを防ぎ、妥当なタスク処理期間の設定ができるようになった。また、部下自身で各タスクのゴールを明示でき、リスク提示の精度も向上した。
・このようにWBSを策定できた後には、WBSのタスクをきちんと実行し、戦略の遂行に寄与できているかどうかの判断、効果検証が必要となる。
■実行結果を次の戦略に「繫げる」ことで戦略の精度は高まる
・戦略の精度を高めるためには、一度策定された戦略という「仮説」の検証を行い、次の戦略に繫げる必要がある。
・そのためには「実行結果ではなく、フィードバックを評価する」こと。
・評価のキモは、以下の4つ。
・1.やるべきこと(WBSで決定したタスク)をやりきったかどうか。
・2.やるべきことをやりきって結果が出たかどうかの因果関係を明らかにできるか。
・3.やるべきことをやりきって結果が出ないならその原因は何か明らかにできるか。
・4.やるべきことをやりきれなかったなら、なぜやりきれなかったのか明らかにできるか。
戦略を機能させるための必須スキル
■戦略立案担当者に求められる4つの力
・1.現状分析力
・2.戦略策定力
・3.戦略実行力
・4.実行継続力
■仮設思考力を強化する
・仮説構築力とは、何かを決定するのに不十分な情報しかない状態で、自分なりの主観を取り入れながら論理を構成し、仮の結論を出す力。
・意思決定勇気力とは、仮説なので本当に正しいかどうか分からない中で、自分を信じ勇気を持って、意思決定を行い行動に移す力だ。
・この2つの力があって初めて、仮説思考力は機能し、スピード感を持った意思決定ができ、戦略策定が行えるようになる。投稿日:2021.02.25
あくまで「フレームワーク」に関連した内容。
「使いこなすためにどうするか」という「問い」の形式で進んでいるが、今一つ共感が持てない部分が多かった。
(50問中で興味ある内容もあったが、正直少数だった)…
事業分析、経営戦略は単純にフレームワークに沿って作成すればそれでOKということは決してない。
フレームワークはあくまで一つの形式であって、それをどうやって使いこなすのかが大事だ。
どういう経験を持った人が、どういう視点で効果的に使うかで、フレームワークの意味は大きく違ってくる。
もしそれが経営戦略を策定するツールだとすれば、果たしてそのツールは誰が持つべきなのか。
使いこなせない人がそのツールを使っても全く意味がないのだ。
ただの机上の空論だ。
もし仮に、その内容が素晴らしいものだとしても、フレームワークが上手く行かない要因。
それは企画立案者と現場実行者が異なるために、大きく温度差があるということだ。
現場は企画者に、企画者は現場に対し双方で「分かってない」と言い合う。
上が考えたことを、現場に押し付けるから、そもそも協力しようとも思わない。
これでは当然にどんなフレームワークがあろうと上手くいくはずがない。
本書ではもちろんこれらのことが指摘されているが、「じゃあどうする」に対して、いきなり根性論(感情論)的な解決策が示される。
「そんなものは熱意を持って説得すべし」
そんなことを言ったところで、簡単に解決できる訳がない。
その点が本書の残念なところなのである。
経営戦略の本は数多ある。MBA取得者だって、日本には何人もいる。
しかし経営が上手く行っていると言える企業は数少ないと感じる。
やはりもっと突っ込んで議論をしなければいけない点だ。
なぜ我々は勝てないのか?この問いに真摯に向き合うしかない。
(2021/6/6)続きを読む投稿日:2021.06.13
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