謎の平安前期―桓武天皇から『源氏物語』誕生までの200年
榎村寛之(著)
/中公新書
作品情報
電子版は本文中の写真を多数カラー写真に差し替えて掲載。
平安遷都(794年)に始まる200年は激変の時代だった。律令国家は大きな政府から小さな政府へと変わり、豊かになった。その富はどこへ行ったのか? 奈良時代宮廷を支えた女官たちはどこへ行ったのか? 新しく生まれた摂関家とはなにか? 桓武天皇・在原業平・菅原道真・藤原基経らの超個性的メンバー、斎宮女御・中宮定子・紫式部ら綺羅星の女性たちが織り成すドラマとは? 「この国のかたち」を決めた平安前期のすべてが明かされる。
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商品情報
- 著者
- 榎村寛之
- 出版社
- 中央公論新社
- 掲載誌・レーベル
- 中公新書
- 書籍発売日
- 2023.12.25
- Reader Store発売日
- 2023.12.20
- ファイルサイズ
- 14.9MB
- ページ数
- 304ページ
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この作品のレビュー
平均 3.6 (10件のレビュー)
-
書店で目次を開き面白そうと思い購入。以下にまず目次を記します。
はじめにー平安時代は一つの時代なのか?/序章 平安時代前期二〇〇年に何が起こったのか/第1章 すべては桓武天皇の行き当たりばっかりから…始まった/第2章 貴族と文人はライバルだった/第3章 宮廷女性は政治の中心にいた/第4章 男性天皇の継承の始まりと「護送船団」の誕生/第5章 内親王が結婚できなくなった/第6章 斎宮・斎院・斎女は政治と切り離せない/第7章 文徳天皇という「時代」を考えた/第8章 紀貫之という男から平安文学が面白い理由を考えた/第9章 『源氏物語』の時代がやってきた/第10章 平安前期二〇〇年の行きついたところ
平安時代というと、煌びやかな王朝文化が花開いた割合安定した時代というイメージがあるが、なんとも漠然としており自分な中ではっきりとしたイメージが持てない。平安時代ってほぼ400年続いているわけですが、それすらあまり意識しておらずこの時代を描いた歴史小説をあまり読んでないのもあって、なんとなく安定したいい時代くらいの認識しかなかった。
で、本書だが、目次を紹介させていただいたが、中々面白げな章題が並んでいる。いざ読むと歯応えがあり、夥しい人名の渦の中で理解が進まず途中からは斜め読みになってしまった。それでも、第10章に辿り着き、ここに著者の言いたい事はコンパクトに集約されていた。
一番の驚きは、女性の地位が奈良時代に比べて、大きく低下していると著者が認めていること。宮中(政治)の中で能力のある女性の活躍する場が減ったことが、サロン化された後宮の中で花開き、女流文学の隆盛に寄与しているという見立て。現実に紫式部も和泉式部、清少納言も本名すら伝わってないと言う。日本の女性問題には長い長い歴史があるんですね。
参考文献も沢山紹介されているのも親切だが、果たして自分の理解出来る本がどれくらいあるだろうか。続きを読む投稿日:2024.03.24
[図書館]
読了:2024/5/4
たぶん応天の門つながりで予約したやつ…。
応天の門とか他作品で人物の人となりが頭に入ってる部分「第四章 男性天皇の継承の始まりと「護送船団」の誕生」などは頭に入…ってきやすいが、安和の変の説明p. 123「清和源氏の源満仲の「冷泉天皇に代わり、皇弟為平親王を擁立しようとする謀反計画がある」と言う密告が、為平の妻の父である、左大臣源高明に飛び火して、ついに高明太宰府左遷に至る大事件に発展したものである。(中略)(源高明は師輔の妻の同母弟かつ師輔の女婿であり)準摂関家とも言える立場だったが、師輔が右大臣在位中に五十二歳で亡くなり、その後援を失った後は、為平親王の外戚となることをかえって警戒されたのである。」のあたりは出てくる名前が多過ぎ(本当は師輔の妻や娘の名前も一文中に全部書いてある)て一読では頭に入らなかった…知ってる人なら分かるんだろうけど。もうちょい家系図を小まめに入れてほしかったかも。
p. 105「良房は清和の外戚となるため、その異母兄で文徳も期待していた惟喬親王を排除し、幼い清和を傀儡として皇位につけた、とよく言われるが、意外に見落とされているのは、清和が父系でも母系でも嵯峨の曾孫だと言うことである。言うまでもなく、父系では嵯峨-仁明-文徳-清和だが、母系でも嵯峨-源潔姫-藤原明子-清和なのである。このように清和は他の皇族より優れた出自で、その母の明子は準皇族的な立場なので、清和即位後にすぐに皇太后となる。そして父の良房が、単なる外戚ではなく、天皇を中心に据えた父系母系集団の最年長者として、この集団指導体制を牽引する。つまり嵯峨上皇と同じ立場になる。良房は嵯峨の遺産を最大限活用して、文句の出ない形で自らの地位を固めたのである。」
→母系でも〜のところは言われてみれば確かに、と言った感じだった。良房には子が明子しかいないのは、天皇の娘を正妻にもらった(異例中の異例)結果、側室を置くことが出来なかったから、というのも言われてみればそうだよなぁ、となった。
p. 114 「不運なことに基経は寛平三年(八九一)に死去してしまった。ここで気づいて欲しいのは、基経家というものがまだなかった、ということだ。基経は長良の子から、いわば養子のような形で、良房に引き抜かれた。(略)そして義房は基経とその妹の高子に後事を託したのだが、高子とは陽成廃位に至る仲違いをしてしまった。基経は孤独な最高権力者だった。」
→応天の門で一番好きな基経なのでここの文にはグッときた。続きを読む投稿日:2024.05.04
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