明治革命・性・文明 政治思想史の冒険
渡辺浩(著)
/東京大学出版会
作品情報
「革命」とセクシュアリティの政治思想史へ
奇跡のように安定していた徳川体制――なぜ僅か4隻の米国船渡来をきっかけに、それが崩壊し、政治・社会・文化の大激動が起こったのか。当時を生きた人々の政治や人生にかかわる考えや思い、さらにジェンダーとセクシュアリティの変動を探る。驚きに満ちた知的冒険の書。東京大学出版会創立70周年記念出版。
【本書「はしがき」より】
本書は、広い意味での政治に関する、「日本」における思想の歴史を論ずる。時期は、徳川の世から、(従来、多くの人によって「明治維新」と呼ばれてきた)大革命を経て、おおむね「明治」の年号が終わる頃までである。主題は、その間の、特に重要で、しかも現代にも示唆的だ、と筆者の考えたものである。但し、その議論の方法と主題の選定は、(筆者の主観では)往々、かなり冒険的である。
方法として特に努めたのは、日本を日本だけを見て論じない、ということである。「日本史」を、西洋や東アジアの異なる歴史をたどっている人々の側からも眺め、双方を比較し、双方に対話させようとしたのである。無論、それは、西洋や中国を基準として日本の「特殊性」をあげつらうということではない。それぞれの個性と、それにもかかわらず実在する共通性の両面を見ようというのである。日本史も、東アジア史の中で眺めるべきだとよく言われる。当然である。しかし、常にそこにとどまっている必要はない。日本史も人類史の一部である。
【主要目次】
はしがき
I 「明治維新」とはいかなる革命か
第一章 「明治維新」論と福沢諭吉
第一節 「明治維新」とは?
第二節 「尊王攘夷」
第三節 ナショナリズム
第四節 割り込み
第五節 「自由」
第二章 アレクシ・ド・トクヴィルと3つの革命――フランス(1789年~)・日本(1867年~)・中国(1911年~)
はじめに
第一節 「一人の王に服従するデモクラティックな人民」 《 Un peuple démocratique soumis à un roi 》
第二節 中国――デモクラティックな社会
第三節 デモクラティックな社会の特徴
第四節 中国の革命(1911年~)
第五節 日本の革命(1867年~)
おわりに
II 外交と道理
第三章 思想問題としての「開国」――日本の場合
はじめに
第一節 「文明人」の悩み
第二節 「日本人」の悩み
第四章 「華夷」と「武威」――「朝鮮国」と「日本国」の相互認識
はじめに
第一節 通信使の目的と「誠信」
第二節 「蛮夷」と軽蔑――朝鮮側の認識
第三節 「慕華」と「属国」――日本側の認識
第四節 破綻の要因
おわりに
III 「性」と権力
第五章 「夫婦有別」と「夫婦相和シ」
第一節 「中能」(なかよく)
第二節 「入込」(いれこみ・いれごみ・いりこみ・いりごみ)
第三節 「不熟」(ふじゅく)
第四節 「相談」(さうだん)
第五節 「護国」(ごこく)
おわりに
第六章 どんな「男」になるべきか――江戸と明治の「男性」理想像
はじめに
第一節 徳川体制
第二節 維新革命へ
第三節 明治の社会と国家
第七章 どんな「女」になれっていうの――江戸と明治の「女性」理想像
はじめに
第一節 徳川体制と「女」
第二節 「文明開化」と「女」
おわりに
IV 儒教と「文明」
第八章 「教」と陰謀――「国体」の一起源
第一節 「機軸」
第二節 「道」
第三節 「だましの手」
第四節 「文明」と「仮面」
第五節 「国民道徳」
第九章 競争と「文明」――日本の場合
第一節 「競争原理」
第二節 徳川の世
第三節 明治の代
第十章 儒教と福沢諭吉
はじめに
第一節 福沢諭吉の儒教批判
第二節 天性・天理・天道
V 対話の試み
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商品情報
- シリーズ
- 明治革命・性・文明
- 著者
- 渡辺浩
- 出版社
- 東京大学出版会
- 書籍発売日
- 2021.07.01
- Reader Store発売日
- 2023.10.13
- ファイルサイズ
- 10.7MB
- ページ数
- 640ページ
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この作品のレビュー
平均 4.7 (4件のレビュー)
-
本書は5部構成。「はしがき」にあるように第Ⅰ部は欧州および中国との比較による「明治維新論」。筆者は明治維新を「革命」と呼ぶ。第Ⅱ部は日本と異国の双方から眺めた徳川外交論。とくに「鎖国」の是非をめぐる…対話と討論が道徳的・思想的問題であり続けたことが、朝鮮と日本の知識人の間での知的交渉から見て取れることが示されている。第Ⅲ部は、政治と「性」の関連について、欧州と中国との比較を通じて検討されている。この第Ⅲ部がもっともボリュームがある。第Ⅳ部は、開国以前の日本での中国思想との仮想対話が、西洋への対応へと結びついていったことが3つの角度、すなわち「教」、競争、「文明」から論じられている。第Ⅴ部は、哲学的・思想的比較の試みとなっている。
本書に収録されている各篇はすでに刊行されたり、講演録に基づいたものであったりと様々ではあるが、碩学ならではの重要な指摘や着眼点が随所にちりばめられており、読者を飽きさせない。とくに「Ⅲ 「性」と権力」はまとまっていて、そこだけ取り出しても新書1冊を優に超えるボリュームと内容がある。
また経済思想史的な観点から言えば、「Ⅳ 儒教と「文明」」の「第9章 競争と「文明」—日本の場合」が示唆に富むことは言うまでもない。著者は、山本常朝、荻生徂徠、海保青陵、西川如見、市井の様々な教訓書、井原西鶴、上田秋成、只野真葛、藤田幽谷、中井履軒らの言を自在に引用し、「徳川日本には、『諸国民の富』のような理論は出現しなかった。しかし、市場競争を道徳と結合させる教訓から、競争を否定した質素で平等な農本主義的ユートピアの構想まで、競争をめぐってこのように多彩な思想が展開していたのである」とまとめつつ、明治に入ってからのウェスタン・インパクトの受け止めを福沢諭吉、神田孝平、加藤弘之、小野梓、中江兆民、佐田介石、陸羯南、徳富蘇峰、(注も含めれば、田口卯吉や三宅雪嶺、長谷川如是閑らも)などに言及し、概説する。これだけで日本経済思想史の教科書が書けてしまいそうな内容である。
もちろん概説しつつ知的刺激を存分に与えてくれる書でもある。続く「第10章 儒教と福沢諭吉」では福沢の有名な「独立自尊」論を取り上げ、「強い主体性を備えた個人が出発点である」という考え方は朱子学と福沢の考えに共通するものだという小室正紀先生の指摘を引きつつ(p.538)強調し、かつ丸山真男の「議論の本位」論(『文明論之概略』)を間違いだと切って捨て、「議論の本当の位、真の値打ちを明らかにし、確定するにはどうすればよいか、即ち「至善」にして「一」なる「定則」に到達するにはどうすればよいか、を扱」っているのだと喝破している(p.547)。
じっくりと再読したい本である。続きを読む投稿日:2021.11.17
烏兎の庭 第七部 5.3.24
http://www5e.biglobe.ne.jp/~utouto/uto07/diary/d2405.html#0503投稿日:2024.05.02
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