六十一歳、免許をとって山暮らし
平野恵理子(著)
/亜紀書房
作品情報
「仮免に合格した日はうれしくて、お赤飯を炊いた」──ますます充実するクルマと、猫と、私の毎日。
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『五十八歳、山の家で猫と暮らす』に続く名エッセイ・第二弾 〉
「その歳で」と言われそうな、還暦の少し前、運転免許を取得した。
最初はおっかなびっくり公道に出ていたが、少しずつ行動範囲は広がり、ホームセンターや道の駅、いままで自転車とご近所さんに頼っていた場所へ、いつでも行ける。
五年を過ぎた山での暮らしは、水の確保と排水と、スズメバチの巣の退治や、書庫づくりと、さらにはじんわり忍び込むコロナ禍と、用事には事欠かない。
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「運転を始めて三年経つのにまだ慣れないし、どうも得意ではない。かといって、運転が嫌でたまらないかというと、そんなこともない。山並みが見渡せる見晴らしのいい道路を走っていると、さすがに気分がいい。とくに、背後にも対向車線にも車のいないときは、心おきなく運転できて、ああ、車の運転も悪くないなあ、と思うのだ」(本文より)
少し不便だからこそ、一日一日が、季節の巡りが、いとおしい。
ますます充実するひとり暮らしを綴る珠玉のエッセイ。
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【目次】
■まえがき
■一………自動車運転免許取得報告
■二………山のインフラストラクチャー
■三………キイロスズメバチ営巣事件
■四………あずさ55号に乗り遅れるな
■五………動物さんこんにちは
■六………発作的真夏の早朝散歩
■七………アイ・ドライブ・マイ・カー
■八………「ヨゲンノトリ」COVID-19@ 小淵沢
■九………花苗を買いに
■十………屋根裏部屋を片付ける
■十一……年越しアバラ骨折り損日記
■あとがき
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商品情報
- シリーズ
- 六十一歳、免許をとって山暮らし
- 著者
- 平野恵理子
- 出版社
- 亜紀書房
- 書籍発売日
- 2023.07.05
- Reader Store発売日
- 2023.07.21
- ファイルサイズ
- 21.3MB
- ページ数
- 256ページ
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この作品のレビュー
平均 3.0 (5件のレビュー)
-
小淵沢で暮らし始めた著者のその後。電動自転車だけの生活は、なかなか大変。意を決して61歳にして免許をとったそうです。そんな著者のコロナ禍前後の日々。大晦日に家の中で転んで肋骨を骨折したというオチ(?)…で終わった。
なれない運転は、くれぐれもお気をつけいただきたい。続きを読む投稿日:2023.08.07
『五十八歳、山の家で猫と暮らす』に続く、平野恵理子さんの山暮らしエッセイ。
この第二弾のタイトルに勝手に親近感を抱いていましたが、免許をめぐるあれこれは本当に親近感。
やる気満々で問い合わせた…ら「今は学生の予約でいっぱいだから4月まで待て」と言われたとか、最初のうちはミラーを見る余裕なんてないから見るふりしているだけだったとか、若い人に「運転怖くないですか」と聞いたら「全然」と即答されたとか、今まで行った一番遠いところはディーラーだとか、ああ、よくわかる。
「どこかで自分が車を運転していることに、いまだに確信を持てていないようなところがある」というのも共感。
ローカルな地名がいっぱいでてきて、20号線から見える崖が「七里岩」だと初めて知りました。
あの高台を列車が走っているので、どこへ行くにも登りと下りが発生するんですが、韮崎を先端とする台地だったと地形図を見て納得。
こういうのって道路を意識するようになって初めて気がつくんですよね。
お節をきっちり手作りしたり、アバラが痛むのに書き初めをするほどお正月教に入信しているのは笑ってしまったが、恵理子さんは結構ちゃんと「ていねいな暮らし」をしている。ご本人にその気負いがないのか、「やってます」感があまりないのがいい。
小淵沢の山村でのひとり暮らしは楽なことではないはずなので、これくらいのマイペースがちょうどいいと思われる。
高原ホテルのヨゲンノトリ甘納豆や、高原スキー場のハーブ市は私も行ってみたい。
以下、引用。
33
今日は若い女性と帰りに送ってもらう車で乗り合いになった。
「運転怖くないですか?」
ときいたら、
「いえ、全然」
と即答されて、さすが若い人は違うなあと思った。彼女が先に降りてから、送迎の運転手さんは、
「でも、多少怖いと思って気をつけて運転していた方が安全ですから」
と慰めてくれたのだった。
36
路上教習に出るとき、先生によっては、
「じゃあドライブに行きましょうか」
と言って出発する。それがこちらの緊張した気持ちを少し和らげてもくれて、ありがたい。とはいえ、そのドライブを楽しむ余裕はこちらには全くないのだが。
62
こんなふうに自分が使っている燃料のことを考えるのも悪くないな、と思うのだ。逆にいえば、いかにこれまで電気ガス水道を、それこそ湯水のように使っていたかということでもある。
76
山の家に住むようになってから、東京に出かけることを「上京」と表現するようになった。実際そんな気分なのだ。緑濃い山村からビルの林立する大都会へ出かけるとなると、前日から「明日は東京だぞ」と少しだけ緊張する。日帰りとはいえ、やはりそこは小旅行なのだ。
109
『ストレイト・ストーリー』、デヴィット・リンチ監督による一九九九年の映画だ。
この映画を見た当時は自分で車の運転をするとは思っていなかったし、ましてや鹿の出るような山の中の道など、と他人事で終わらせていたが、どうして、鹿の闊歩する山村の道を自分の運転する車で走る身の上になろうとは。
110
「シカさん、シカさん、こっちにおいでよ~」
真っ白い世界に凛と立っている鹿は、神々しかった。よかったらうちに来てお茶でも飲んでいってもらいたい気持ちだったが、やはり鹿にも都合があるらしい。
151
こんな年齢になってから免許を取ったので、どこか自分が車を運転していることに、いまだに確信を持てていないようなところはある。こんな自分が運転しているなんてすみません、という気持ちがあるのだ。
183
列車、中央本線で山の家に通っていたころは、韮崎から小淵沢に向かう途中に長く続く岩壁を見るのが楽しみだった。なかなかに迫力のある景観に、「韮崎グランキャニオン」と勝手に名付けて、韮崎駅を過ぎると必ず北側の車窓を熱心に眺めた。本家本元のアメリカはアリゾナ州にある「グランドキャニオン」に遠慮して、「ド」抜きでグランキャニオン。
これは、八ヶ岳から流れてきた岩屑なだれがつくった台地なのだそう。小淵沢のあたりから韮崎まで続くその細長い台地は、韮崎辺で細くなり終わっている。その細く尖った形がニラの葉っぱの先に似ているので、「韮崎」の地名の由来になったのだとか。
その「グランキャニオン」は「七里岩」という名であったことを、道路地図を見るようになってようやく知った。七里岩ラインは、そのグランキャニオンの上をひたすら走る県道一七号線だ。
219
家族そろってのお正月が何よりも幸せだったが、気がつけば一人で年迎えするようになって早や十年。で、一人になってもまだみっちりお正月はしたいと思っている。なにしろお正月教に一人入信しているので。続きを読む投稿日:2024.01.06
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