帝国と宗教
島田裕巳(著)
/講談社現代新書
作品情報
ローマ帝国やオスマン帝国、中華帝国やモンゴル帝国にいたるまで、世界の歴史は帝国興亡の軌跡に他ならない。そしてそれは東西の宗教が歩んできた道のりとも重なっている。帝国は領土拡大のため宗教を利用し、宗教は信者獲得のため帝国を利用してきた。「帝国と宗教」という視点から世界史を捉え直す、歴史ファン必読の一冊!
【本書の内容】
第1章 帝国と宗教はどう結びつくのか
第2章 なぜローマ帝国はキリスト教を国教にしたのか
第3章 中華帝国は宗教によって統合されていたのか
第4章 イスラムとモンゴルという二つの帝国
第5章 二つの帝都-ローマとコンスタンティノープル
第6章 オスマン帝国とムガル帝国
第7章 海の帝国から帝国主義へ
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商品情報
- シリーズ
- 帝国と宗教
- 著者
- 島田裕巳
- 出版社
- 講談社
- 掲載誌・レーベル
- 講談社現代新書
- 書籍発売日
- 2023.06.22
- Reader Store発売日
- 2023.06.21
- ファイルサイズ
- 3.4MB
- ページ数
- 224ページ
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この作品のレビュー
平均 3.3 (4件のレビュー)
-
帝国は領土拡大のため宗教を利用し、宗教は信者獲得のため帝国を利用してきた。本書は、この二つの関係性をかつての帝国を示しながら紐解く。しかし、帝国にも宗教にも内在する「拡大性の本能」は何ゆえか。一人で静…かに信仰し、ありのままの領土で満足する国家にはなり得なかったのか。この両者における人間の性欲にも通底する「拡大と支配」の論理が知りたかった。
しかし、書かれるのは来歴とそこに偶発的に発生し、その偶発性を当時の利害関係で構造的に捌いてきた、ある種の連鎖反応のみだ。恐らく、生物のみならず、組織や信仰が拡大本能を持つのは、競合からの支配に対する、ゲーム理論のような状況だ。やらねばやられ、支配される。地域的コンセンサスが社会から世界的コンセンサスへと広がらずには、安心できない。安心できないから、自己拡大が必要となる。人間は、いつだって他人を説得する事に躍起になるし、理想通りに動かぬ他人や構造にストレスを貯めるのは、支配欲ゆえだが、これは同時に防御本能でもある。合わせて、生存本能、という所だろうか。
さて、本著。
大日本帝国の版図が最大に広がったのは、大平洋戦争が始まって間もない1942年で、740万平方キロメートルに及んだ。これはササン朝ペルシアに匹敵する。ローマ帝国の650万やオスマン帝国の520万平方キロメートルよりも大きい。そこまで広がる必要があったのか。これが冒頭の疑問だ。
ー 論語に示された孔子の教えを基盤として、生み出された儒教においては、五常が重視される。五常「仁義礼智信」からなるもので、思いやりの心を持ち、自らの欲望にとらわれず、人間関係を円滑に営み、物事を深く学んで、人の信頼を得なければならないということ。
この教えを組み込みながらも、かくすればかくなるものと知りながら…。世の中大半がそうだ。防御本能が免疫暴走を起こす。そういえば、拡大性はウイルスに近い。ならば、戦争とは、サイトカインストームか。帝国も宗教も戦争を繰り返す。突き詰めるほどに、所詮。続きを読む投稿日:2024.03.24
人類がこの2千年足らずの間に複数の帝国を築き、そして滅亡を繰り返したその背景には、宗教の存在が大きく関わっている。日本には神道があり、古くには仏教やキリスト教が外部から入ってきたが、現代社会に至るまで…日本の統治に宗教が大きく影響したとは言い難い。日本が海を隔て他国との接点が少なく、侵略されにくい位置にあったことが幸いし、宗教の力を借りずとも統制しやすかった事に起因するだろう。海外を見るとどうであろうか。ユーラシア大陸、ヨーロッパと陸続きで遊牧民などが馬を駆り攻め入ってくるような地域においては、支配者が次々と入れ替わり帝国化するに至っては、支配に宗教の力は大いに役立ってきた。
本書は主に世界三大宗教のキリスト教、イスラム教、仏教を中心に帝国化と宗教の関連性について記した本である。特に前の二つについては現在の世界地図を見ていても紛争の背景に大きく存在感を示し、宗教人口も他のそれと比べ圧倒的に多い。それ程まで力を持つ宗教と言えるが、世界史を学んだ方であれば、オスマントルコやら十字軍の遠征やらで知っているキーワードが頻出するので入りやすいだろう。キリスト教においては本書でも詳しく述べられているが、帝国の支配層と教皇の権力争い、互いに力を示しながらも互いを利用するような歴史があり面白い。本書を通してそうした統治と宗教のあり方を学ぶ第一歩として、新書サイズにコンパクトに収められる本書は入りやすいだろう。続きを読む投稿日:2024.02.01
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