この作品のレビュー
平均 4.5 (15件のレビュー)
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教えから学びへ
教育にとって一番大切なこと
著:汐見 稔幸
紙版
河出新書 035
行き詰まっている教育をどう改革するか、その方法が、「教え」から「学び」へです
教師が教えるのではなく、生徒が自ら…が学ぶ これが本書のメッセージです
気になったのは以下です
■なぜ、いま教育がいきづまっているのか
・「学び」は学校でのみ身につけられるようなものではなく、一生続く営みです
・科学技術は、人間の生活を改善するものではなかったのか
・自然などの環境を考慮しなかった日本の科学技術、それを支えてきた人材、そして、そのような人たちを育ててきた理科教育には、根本において何か欠けていたのではなにかと考え始めました
・19世紀になると、学問はさらに専門分化が進みます
科学は、科に分かれた学問という意味の言葉です
分化したものは、再び統合していくことが必要です
しかし、近代の学問においては、統合が忘れ去られていました
■「教え」の教育から「学び」の教育へ
・教師が子どもたちに啓蒙する教育の時代は終わった
・時代の変化が速くなればなるほど、世代による感覚のズレが大きくなり、年長者の経験は古く役に立たないものになっていきます
・優秀な職員には次のような特徴があることがわかりました
文化の違いがあっても、それを踏まえた上で相手の真意を聞くことができる
対立している人を含めて、尊厳をもって他者を前向きに励ますことができる
・そして、人間関係において、お互いの影響力やそれぞれの政治的立場を素早く理解でき、リーガルリテラシが高い
・3つのR(読む、書く、計算力)と、4つのC(批判的思考力、コミュニケーション、協調性、創造性)が必要である
・当事者を大事にするという考え方は、日本でも独自に生まれています
・科学というのは1つのものの考え方にすぎない
・ある仮説をもってしか、ものは見えない
・発想はグローバルに世界規模で考え、行動はローカルに住んでいる地域や身の回りでできるところから実践していく グローカルという
・ダイバーシティーとは、多様であることこそが、豊かである、という考え方です
・インクルージョンとは、多様性を尊重し合い、共に成長することを意味します
■「学び」と「教養」
・わかるの3つのレベル
①言葉・名前を知る
②その対象の属性を知る、属性とは備わっている性質や特徴のことです
③現象の背景にある法則に気づく
・能力とは、IQ,語彙、言語処理速度、学ぶ能力、成し遂げる能力、可能性を最大に発揮する能力です
・3つの教養論
①教養とは、分化した知識をつなげて、つながりのある知識にすること
②教養とは、感心の発展的システムをもっていること、いろんなものに関心をもちアンテナを立てる
③教養とは、全体との関係で自分や自分の知識を位置づけること 知識を何度も反芻し、消化して、他の知識と合体していくこと
・教育というのは、学ぶ意思のある人が師と仰ぐ人を見つけ、「どうぞ教えてください」とお願いするところから始まります
・「学び」が苦痛なものになってしまったのは、本来の学びのあり方から逸脱した強制的なシステムができたことが原因です
■「学び」は体験から始まる
・対話とは、自分の考えを言葉にし、相手の考えを言葉で聞くことで、お互いの違いや共通するもの、どこまで一致しているのかを共に探すやり取りです
冷静な意見表明、論点整理など高度な知性が必要です
・読書は、とにかくたくさん読めばいいというものでも、知識や情報を抜き取るためにするものでもありません
・読書によって鍛えられるのは、さまざまな思考の力です
・相手を深く理解するためには、たとえ自分の土俵や発想の仕方と相手のそれらが全く違うとしても、その人の語りの世界にまず入ることが必要です
・自分の土俵にたったままで、相手の土俵を理解するのは不可能です。本当に理解しようと思うなら、その人の土俵にこちらが身を寄せる必要があります
・そして、その上で、もう一度自分の土俵に戻る
・相手の土俵と自分の土俵を往来するうちに、だんだんと自分の土俵が大きくなっていきます
・相手から学び、同時に自分を失わない
・相手から学び、同時に自分が豊かに大きくなっていく、それが「信じて疑う」という読み方です
・人間の促成栽培はできません、早く熟せば、早く腐る
■「学び」を支えるための教育
・自分のものとなった知識を実際に使うためには、新しいスキルを身につけることも必要です
・自分が何をわかっていて、何がわからないのか、をはっきりさせていくことも必要です
・人が編み出したメソッドをそのまま受け入れても自分自身のスキルは高まりません。必要なメソッドは自分で考えるのが一番です
・大事なのは自分なりの計画を持つことです
・子どもが学ぶということは、それを知ろうと夢中になることです、そのようなときに学ぶは深まります
・熱中し没頭する時間をつくる
■「学び」は続くよ、どこまでも
・全ては仮説にすぎない
・学びが起こるきっかけは、問いです
目次
はじめに
第1章 なぜ、いま教育がいきづまっているのか
第2章 「教え」の教育から「学び」の教育へ
第3章 「学び」と「教養」
第4章 「学び」は体験から始まる
第5章 「学び」を支えるための教育
第6章 「学び」は続くよ、どこまでも
参考文献一覧
ISBN:9784309631363
出版社:河出書房新社
判型:新書
ページ数:256ページ
定価:890円(本体)
発売日:2021年07月30日初版発行
発売日:2022年01月30日2刷発行続きを読む投稿日:2024.04.25
受験の課題図書として読みました。新書は初めてで読む前は手を付けにくい印象がありましたが、分かりやすく、これからの教育についてよく考えさせられる良い本でした。
投稿日:2024.01.19
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