この作品のレビュー
平均 4.0 (2件のレビュー)
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なんで文芸評論家が、政治を語るのかと思ってたんだが、そうか、文学は思想そのもの。日本文学を評論すること自体が思想、政治理念につながるわけだ。
常々考えている、そもそも日本とは何か、どこへ向かうべきか…をきちんと考えられていない状況を語る。
アカデミズムとマスコミを左巻きに席巻されている状況では、「日本」は喪われる他ない。
そこから、取り戻して行くしかない。
その一歩を踏み出されるようだが、果たして。
それにしても、正仮名遣いは思ったより読みづらくはなかったのだが、対談に使われるのは正直きつい。続きを読む投稿日:2021.05.19
本書は保守思想の解説でもなければ思想史的な研究でもない。保守思想のエッセンスについて著者の立場が簡潔に述べられてはいるが、あくまで「危機に瀕する日本の現実をどう救うかに関する、実行可能なヴィジョンとプ…ラン」を打ち出した実践の書である。福田恆存が典型だが、これまで日本の保守は「主義」を忌避することで、ある種の節度を保ってきた。著者は敢えてその矩を越えて「保守主義者」を宣言する。ここには現代保守の危機的状況への深い憂慮と失地回復に向けたただならぬ覚悟が滲んでいる。もはや保守的な心構えを悠長に説いていても何ら現実を変えられない。それほど事態は深刻なのだ。このことは現代日本の保守の敗北の歴史を素描した第一部を読めば納得する。硬直的なイデオロギーにまみれた言論の閉塞状況を打破するには保守も政治的な行動を躊躇するわけにはいかない。著者のこの闘いに万感の思いを込めてエールを送る。だが、著者も自覚しているだろうが、これはそんな簡単なことではない。
著者が守ろうとするのは一義的には「良き日本」であろう。「良き日本」とは何かにもよるが、おそらく著者が考える「良き日本」を守るには「強い国家」(国家権力の物理的な強弱ではなく国家意思の強弱を指す)が必須だというのが著者の見立てだ。だからこそ国家戦略を論じた第二部が書かれたのだろう。だが「良き日本」とそれを守る「強い国家」は時に相互に補完し合うが、時に相矛盾する。「強い国家」たるために、ことによっては「良き日本」と決別せねばならない。反近代を貫くには近代主義者でなければならぬという、かの『近代の超克』で下村寅太郎が投げかけた問いにここで直面する。これは本書のもう一つのテーマである第三部の「文化保守主義」にも関わってくる。政治的保守主義を実効あらしむるには「文化保守主義」という「ミッシングリンク」を回復しなければならぬというのはその通りだが、「文化保守主義」と「政治的保守主義」も、ある点では相互に補完し、別の点では矛盾する。このジレンマにどう立ち向かうのか。
ここで改めて保守とは何かが問われるだろう。著者は言う。「変化を取るか、現状維持を取るか、また、仮に変化を取るにせよ、どの範囲までそれを認め、どこから先では変化を認めず、しかも何ゆゑ変化を認めないのか、いわば保守的な思考の原点はここにある。」これは近代保守の鼻祖バークの保守思想の核心だと言ってもいいが、日本の保守に決定的に欠けているのはこの自覚である。(ちなみに小林秀雄はこのことを本能的に理解していたはずだし、もっとも知的に理解していたのは意外にも丸山眞男だ。)しかも事態はさらに複雑である。バークは自らを「保守主義者」ではなく「漸進主義者」と見做したが、著者も言うように、保守の基盤そのものが解体してしまった現代日本では「漸進主義」はもはや有効でなく、ある種のラディカリズム、謂わば保守革命が求められる。保守は生き延びるために自らを否定しなければならぬ。であればそもそも保守が守ろうとしていたのは何であったか?保守革命という殆ど語義矛盾とでも言うべきこの隘路を突破しなければ、保守の再生はない。いばらの道であることはもとより覚悟の上だろう。著者の今後に期待したい。続きを読む投稿日:2023.12.30
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