この作品のレビュー
平均 4.3 (38件のレビュー)
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本の帯の惹句には『大阪に来た人、大阪を出た人』。大阪へやって来たのは社会学者 岸政彦さん。‘67年名古屋市生まれ、大学入学時に大阪へ。上新庄の下宿を皮切りに以来大阪を転々。大阪を出た人は作家 柴崎友香…さん。‘73年大阪生まれ、約15年前に仕事で大阪を離れ、現在東京在住。
このふたりによる【大阪】をテーマを往復書簡風エッセイ。本書に綴られた大阪は、あくまでもふたりの記憶の断片。そう、極私的大阪アーカイブ。
岸さんは大学生として、ジャズのベーシストとして、バーテンダーとして、バブルに沸く大阪を遊泳。大阪で出会った女性と結婚し、終の住処を手に入れ、この地で死ぬつもりだ…と、語るほど深い愛着を抱くに至っており、大学教員の傍ら自身が暮らした大阪の街を舞台にした大阪弁に溢れた小説を発表。
方や大正区で生まれ育った柴崎さんは中学生ぐらいから持ち前のフットワークの軽さと好奇心の強さが顔を出しMy Osaka Mapは広がりを見せる。その活動譚を固有名詞をもって記憶を天日干しするかのように仔細に語る。ダウンタウン見たさにごった返す心斎橋2丁目劇場前での出待ち、エレファントカシマシのライヴには欠かさず通い、カルト映画を上映しているミニシアターへも足繁く通う。
<ふたりにとっての大阪>
岸さんは…
大阪が好きだ、と言うとき、たぶん私たち
は、大阪で暮らした人生が、その時間が好き
だと言っているのだろう。それは別に、大阪
での私の人生が楽しく幸せなものだった、と
いう意味ではない。ほんとうは、ここにもど
こにも書いていないような辛いことばかりが
あったとしても、私たちはその人生を愛する
ことができる。そして、その人生を過ごした
街を。
柴崎さんは…
テレビ経由のイメージだと大阪はどこの家に
も『おもろいおかん』がいる 、と思われ
る。当然そんなことはなく、大阪は多様な
人々が寄り集まって暮らしている大都市であ
る。『ステレオタイプなイメージの隙間に一
人一人の現実がある。
<ふたりの大阪観を堪能して…>
『サードプレイス〈第三の居場所〉』と『アナザースカイ〈第二の故郷〉』という2つのフレーズが頭に浮かんだ。前者は家庭や職場や学校ではなく、自身を解放できる第三の居場所を指す。後者は生まれ育った街とは異なるインスパイアを受けた場所・土地。岸さんは仕事に行き詰まったり、なにか気晴らしをしたくなると、必ず淀川を歩くという。『淀川の河川敷を宇宙一好きな場所』とも語る。明らかにサード・プレイスである。また、本籍を移すほど大阪に惹かれる岸さんにとってはアナザースカイでもある。
柴崎さんの場合、故郷大阪を離れ、東京への移住を『長期出張』と例える。大阪でしか観ることができないテレビ番組を思い出しながら、東京以外の場所で生まれた文化を語ることができない…と憂える。今のところ東京が『サードプレイス』にも『アナザースカイ』にもなり得てないのは、柴崎友香を育んだ街 大阪という土地の磁力がそうさせるのかな。
岸さんの『あとからやってきた街 大阪』感。柴崎さんの『私がいなくなった 大阪』感。おふたりとも大阪在住歴30年余り。今いる場所と、かつていた場所が『私』を通して交差し、その時折時折の街と時間の呼吸を活写した、激しく読み応えありまくりの一冊。続きを読む投稿日:2021.07.10
このレビューはネタバレを含みます
「散歩は終わらない」がよかった。
レビューの続きを読む
自分に憧れを持つことはできず、あそこで育った自分だったらどうなったかなあと考えることしかないと。
あと、「地元を想像する」の『大阪で生まれ育って、ここが地元だったら、…私は東京あたりの、別の街に逃げていただろう」という文、東京のごみごみした感じがいやで関西に出てきた身としては、そうよな〜としみじみした。
関東で育って環境に向き合ったからこそ、今の自分はここにいるんだろう。続きを読む投稿日:2023.09.24
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