この作品のレビュー
平均 3.4 (33件のレビュー)
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ヨーロッパでは、かつて動物裁判が真面目に行われて行われていたことを紹介し、なぜそのようなことが行われるようになったのか、著者が考察を加えた本。
人間に迷惑をかけた動植物が、訴訟され、裁判に呼ばれ、検察…官や被告には弁護士まで登場したようだ。これを真顔でやってたなんて、信じられない話しだが、人間がアニミズムの世界から、合理的な世界に移行していくなかで、畏れていた神々が宿る動植物に対して裁きを行う上では、必要だと考えていた(ようだ)。
ナルホド。
以下は備忘録。
動物裁判は、ヨーロッパにおいて12世紀かそれ以前からみられ、13世紀以降本格化のきざしをみせ、14〜16世紀をピークとし18世紀まで続く。
中世・近世の人たちが法の掟に従属させたのは、動物だけでなく、植物や静物(鐘楼の鐘等)をも裁いた例が散見される。
なぜこのような人間ではないものの裁判が行われたのか?
擬人化したことは考えられるが、異教的アニミズムがその基底にあるとも考えられる。
アニミズムを悪魔化した教会のめざしたのは、動物にとり憑いた悪霊や人間の魂をキリスト教的祓魔式で祓う、という構図をおしつけることであり、そこに異教的慣習とキリスト教との衝突が現出したのだと。
かつては、特定の祭りなどの際には定期的に、「人身御供」が嫉妬深く怒りやすい神々に捧げられ、徐々に動物の犠牲にとってかわられた。そして神々の統括する神秘的な秩序や、秩序回復のための呪術的手段が実効性を失った後、人間世界を守りその条理を自然世界にまで貫徹するために、動植物まで人間同様の裁判にかけられ、処刑ないし破門されたと考えられる。
中世キリスト教にとっては、自然は人間が支配し制御するべきものだったが、動物裁判は、人間の世界を律する法・訴訟手続を自然に適用して、自然を人間の理性や文化の条理に無理矢理おしこむ装置だった。
ところでアニミズムは、神々が特定の自然物に居を構えているとするだけにとどまらず、それらの神々の統括下にある、あらゆる動物・植物・鉱物などにまで、霊が宿っていると考えられていた。
天地自然は、その霊によって生きていて、また一体化しているとされる。人間もその天地自然を統括する法則をまぬがれない。だから、人のほうから自然にはたらきかけるには、それを人間と同一視し、同一にあつかう必要があった。
人間の創造における卓越した地位は、神の法・神の正義の保証のもとに、人間の自然支配を正当化し、人間はその正義を、人と人との関係をすべているものと全く同一の諸原則に従って自然にも適用しなくてはならぬ、との議論を導いた。
動物裁判のうち教会裁判所での悪魔祓い、呪いの言葉を言うものは、アニミズムを前提とし、その神々・諸霊を悪魔化して祓いだすための儀式である、とした。
17・18世紀の科学的合理主義が機械論的自然観を徹底的におしすすめると、(人間の)理性と自然(身体と外界)の区別が、かえってゆるぎないものとなる。自然世界を人間世界に同化させる主観的人間中心主義は、客観的人間中心主義に姿をかえ、こうして、動物裁判は、当初それをささえた機械論的自然観の進展自体によって、消えてゆくのである。
動物裁判とは、正に自然界にたいする独善的な人間中心主義の風靡した時代(13世紀~17世紀)の産物だった。それをイデオロギー的に裏うちしたのは、権力と結びついた人文主義と合理主義である。またその具体的展開をゆるした社会的現実としては、自然を支配・搾取するための不断の戦いがあった、といえるだろう。
12.13世紀に発揚した「合理性」「刑罰」「正義」が、動物にまでやみくもに適用されたのが、動物裁判だったのであろう。続きを読む投稿日:2024.01.28
中世、主にフランスで頻繁に行われていた動物裁判。全く知らなかったことなので大変面白かった(ノートルダムの鐘のあれはそうだったのか!という気づき)自然というものをどう捉えるか、その土地に根ざした宗教観は…どういったものなのか、それによってこのような事象が成り立つ/成り立たないのが興味深い。続きを読む
投稿日:2023.06.28
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