精神科医が教える 忘れる技術
岡野憲一郎(著)
/創元社
作品情報
PTSDを引き起こす外傷記憶、恨みや罪悪感、うつ病や強迫神経症、依存や中毒など、あなたの心をいつまでも蝕む、思い出すのもつらい過去や苦しい症状、頭にこびりついた記憶や心をかき乱す感情――こうした「忘れられないこと」を上手に「忘れる」ための具体的な方法をベテラン精神科医が説く。人が遭遇するさまざまな「忘れられない」ケースを紹介するほか、「忘れることができない」メカニズムを脳と心の両面から解き明かす。
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商品情報
- シリーズ
- 精神科医が教える 忘れる技術
- 著者
- 岡野憲一郎
- 出版社
- 創元社
- 書籍発売日
- 2019.01.10
- Reader Store発売日
- 2019.03.08
- ファイルサイズ
- 4.8MB
- ページ数
- 208ページ
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この作品のレビュー
平均 2.8 (8件のレビュー)
-
確かNHKの『100分で名著』の中井久夫のテキストに岡野氏が出てきて(追記:NHKテキストじゃなかった。雨宮処凛の相模原の裁判傍聴の本だと思う。またそのうちに確認してみる)、本を読んでみたくなり図書館…の本を予約、実物を手にして装丁を見たとき、あ、以前借りたけど読む時間が取れずに返した本だ、と気づいた。読みたいと思う本は時がたっても変わらない。だから、本を借りたものの実は読んだことのある本だった、なんてことが頻発する。それを避けるためにもこうやって読書記録を書いているんだけど、一向にそれがなくならないのはどういうことか。
さて。
本書は忘れる技術を伝授するとの主旨で書かれているようだが、精神疾患に関する事例や記述はもちろんのこと、脳の機能や部位ごとの働きについて、またその関連性など脳科学的な記述も多く、とても勉強になる。いろいろな疾患やその状態像を思い浮かべると、納得のいくことが多い。
そしてサヴァン(本書では「サバン」と表記されているが)症候群のページがすこぶる面白い!小脳の萎縮による注意力や集中力の障害、固執傾向、運動機能の障害があり、それはつまり自閉症の人のそのあたりの症状の説明がつく、という件には納得しかない。また第2章でふれられている動物界におけるサヴァン的記憶についての件も、非常に面白い。「なるほど!」しかない。
海馬と扁桃核が外傷記憶の形成にかかわっていることはわかっているが、外傷記憶が「頭の記憶」と「体の記憶」がうまくつながっていないから、という話も、PTSDなどの治療の経過を考えると非常に腑に落ちる。筆者いわく、人は過去の記憶に覆われて生活しているが、それが自分の中で「善玉の記憶」であれば自然と記憶としての存在は無意識化、つまり忘れていく(完全な忘却ではない)。それはきちんと「頭の記憶」と「体の記憶」つまり具体的な体験と感情とが結びついて整理されているからだ、と。外傷体験では、その衝撃が強烈すぎて感情を司る扁桃核が暴走、海馬がうまく働かなくなり、しっかりとした記憶(徐々に薄れていくことのできる記憶)にならない。だからこそ、外傷体験を言語化することによって治療になり得るのだし、語ることによってバラバラだった記憶を忘れていける記憶として整理することができ、癒されていく。つらい記憶も、少しずつ背景的に変わっていくことができるのだろう。
第3章で忘れる技術を「本題」と書いているので、それを伝授したかったのかもしれない。だが、そんなことより、私のように脳科学や精神医学に興味関心のある読者にとっては、第1章第2章がこの上なく興味深い内容だ。しかも平易な言葉で具体的なものを使って比喩で表現されている箇所も多く、大変わかりやすい。「なるほど、そうか」と膝を打つような記述がたくさんあり、たくさんメモを取った。
個人的には、筆者が本題とした「忘れる技術」は、おまけ的位置付けなんだけどな。
そんなわけで、ここ、いるかなあ?と思いつつ読んだ第3章だったが、その忘れる技術の方法の一つとして、相手(恨んでいる相手や加害者)を知る、という手段が紹介されていた。修復的司法がまさにこれだろう。修復的司法も、忘れる(癒す)ために有効な手段であることは間違いない。もっと修復的司法が世に知られ、受け入れられていくといいのに、と改めて思った。
専門的な話題を、わかりやすく過不足なく、でもその分野に興味関心のある読者の知的好奇心をしっかり満足させつつ、同時に、これだけ整然と、かつ内容濃く書ける筆者に感服した次第。
また後で、気になった記述をフレーズのところに書き起こしておこう。
ひとつ残念なのは、こんなに面白いのに評価が今ひとつなこと。タイトルから想像される中身が、ややもすると自己啓発っぽく見えるのかも。それを期待して手にした向きには、期待外れになっちゃうのかな。私としては、忘れる技術どうこうではなくて、忘れる忘れないという側面からとらえ、精神疾患や外傷体験などとの関連から論述した脳の機能に関する本としたほうが、よりこの本を的確に表している気がする。タイトルのせいで、読み手と本書がマッチングできてないとすればもったいない。
そういえば、サヴァン症候群の人物として有名なキム・ピークが存命との記述があった。本書が最初に刊行されたときはそうだったと思うが、現在は彼はもう亡くなっているのではないかな。続きを読む投稿日:2023.03.05
思ってたのと違うものでした。
精神科医の先生がPTSDとかウツ病について書いてある重たい話でした。
後書きにあった、「忘れることの究極の方法は、人は皆別々の考え方をしているという事実を受け入れることか…もしれません」には同意。続きを読む投稿日:2023.05.07
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