エンゲージメント経営
柴田彰(著)
/日本能率協会マネジメントセンター
作品情報
皆さんは組織で幸せに働けていますか?
ここ日本でも、会社経営の現場で「社員エンゲージメント」という言葉が数年前から聞かれるようになった。日本人にはあまり馴染みが深くないエンゲージメントという言葉と考え方が、日本を代表するような会社にまで浸透してきた背景には、取り巻く競争環境の変化が横たわっている。
国内市場は成熟期を迎え、海外に飛躍の糸口を見出さなければ持続的な成長が不可能になっている。これまでの成長を支えてきた主力事業のビジネスモデルが陳腐化し、コスト構造の改革が急務となっている会社も多く、「目の前の仕事を一所懸命に頑張っていれば会社は成長していく」という時代はとうに終焉を迎えている。
さらに日本における労働市場のオープン化も見逃せない環境変化の一つだ。一昔前であれば転職は異例でネガティブに捉えられることが多かった転職も、今やキャリアアップの大きな機会として人材獲得競争の様相をも呈している。
自分の会社の先行きが見えず、社外には転職の機会が転がっているとなれば、「今の会社を辞めようかな?」と考えてしまうのも自然な成り行きだ。さらに会社の将来に対して期待が持てないまま、かといって会社を移るという決断もできずに、中途半端な気持ちのままで残り続ける会社員も出てきている。明るい将来を描くことができなければ、仕事へのモチベーションも上がらず、当然のことながら生産性も低下してしまう。事実、優秀な社員の離職防止、社員の生産性向上といったテーマが、日本の大企業でも課題としてあげられている。
エンゲージメントは、これらの課題を解決してくれる概念として注目されている。
社員エンゲージメントとは「自分が所属する組織と、自分の仕事に熱意を持って、自発的に貢献しようとする社員の意欲」である。かつて日本で流行した、社員満足度という考え方とは180度異なり、似て非なるものだ。
社員満足度は「社員が会社に満足しているか?」という社員から見た一方向的なものなのに対して、社員エンゲージメントは「会社は社員が期待する事を提供できているか?」「社員が仕事に幸せを感じて意欲的に取り組めているか?」と、会社と社員の双方向的な関係を問うものだ。
幸せな結婚が長続きする要因が「自分が求めるものを相手が実際に提供してくれているかではなく、自分の理想とする相手だという期待を抱き続けられること」であるように、社員エンゲージメントが高い状態というのは、期待を媒介にして会社と社員の間に幸福な関係が築けていることが必要だ。
いま「あなたの会社の社員は幸せに働けていますか?」と聞かれて、自信を持って「もちろん」と答えられる方がどれくらいいるだろうか。
価値観の多様化やダイバーシティーといった言葉が代弁しているように、社員一人ひとりの価値基準や仕事に対する動機を、一昔前のように一律に考えることはもはや不可能である。
会社がさまざまな社員の多様な期待に応え、全員を幸せにして熱意を引き出すのは途方もない企てのようにも思えるが、無理と諦めてしまっては、日本の会社が優秀な社員を引き留め続け、彼らの力を最大限に発揮させることはかなわない。
まさに今、社員エンゲージメントという切り口から、人と組織の関係を見直すべき時に来ているのだ。
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商品情報
- シリーズ
- エンゲージメント経営
- 著者
- 柴田彰
- 出版社
- 日本能率協会マネジメントセンター
- 書籍発売日
- 2018.12.30
- Reader Store発売日
- 2019.02.01
- ファイルサイズ
- 8.1MB
- ページ数
- 264ページ
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平均 4.0 (6件のレビュー)
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第1章:いま、見直すべき人と組織の関係性
1.1.頑張って採用し、手塩にかけて育てた社員が辞めてしまう
1.2.会社は辞めない、しかし意欲が乏しい社員が続出
1.3.社員エンゲージメントが低い日…本の会社
1.4.日本の会社が、社員の幸せを真剣に考えてこなかったわけ
第2章:社員が働くことに幸せを感じる構造
2.1.社員エンゲージメントの高低に影響を与える要素
2.2.手本とすべきグローバル企業との比較を通じて学べること
2.3.何より大事な会社の存在意義
2.4. 正しい方向感を見出せない会社で起こっている、仕事の生産性の低下
2.5.自己実現や成長という淡い幻想
第3章:無意識的に社員の意欲を削いでいる日本の会社
3.1.会社の中に、善と悪が潜んでいる
3.2.管理職のマネジメント力を再考する
3.3.日本の会社が今すぐできること
第4章:「幸せの感じ方は人それぞれ」で終わってしまわないように
4.1.働くことに対する動機を考える
4.2.社員の琴線に触れる仕事の与え方
4.3社員の動機を上書きすることはできるのか?
第5章:人と組織の関係を見直して、社員のエンゲージメントを高める方法
5.1.社員エンゲージメントをリーダーシップ論から捉え直す
5.2.現場のリーダーシップを見つめ直して、社員の意欲を喚起する
5.3.日本の会社が、社員エンゲージメントのコンセプトを自分のものとするために続きを読む投稿日:2022.05.13
以下、引用
●分析結果から、「2~3年先の業績見通しの明るさ」は、さして社員エンゲージメントには影響しないことがわかる。
●優秀な人材を社内に引き留めるのは、単にお金だけではない。もちろん、自社と競…合他社との間に、明確な報酬水準格差があるのであれば、それは大きな問題になりうる。しかし、退職した社員に対する、退職理由の聞き取り調査を行ってみると、お金以外の要因が上がってくるケースが多い。今以上に権限を行使できるポジション、より大きな事業機会、自由に使えるリソースの増加、または会社の掲げる理念への共鳴など、人によってさまざまではあるが、必ずしもお金が転職理由ではないのは間違いない。
●日本の会社は、社員に対して顧客に提供している価値を十分に伝えきれていない。あるいは、顧客目線で見た自社の存在意義が、社員にとっては不明瞭な場合が多いということだ。同時に、十分な成果を上げるための組織体制なり人員が整っていない、そう社員が捉えている。そして、それらの不足感が社員エンゲージメントの低下を招いてしまっている。
●自社が提供できる付加価値、つまり会社の存在意義を日頃から自分たちで考えなければならない。そしてビジネスが成功すれば、自分たちで試行錯誤しながら考え抜いた価値を、相手から認めてもらえたことが実感できる。社員7エンゲージメントを高い水準で維持するための好循環が、総合商社にはビルトインされているのだ。特定の製品を持たないという商社の特殊性はあるものの、自社の提供価値を模索し追求し続ける総合商社の姿勢から、他の会社が学び得る点も多いはずである。
●ここで少し引いた目線から、社員が誇りと熱意を持って働くために、会社の存在意義として社員に理解浸透させなければいけない要素を考察する。結論から先にいうと、「自社の顧客=自社は誰の、どんな役に立っているのか」「自社の個別性(あるいは優位性)=他社ではなく、自社でなければならない理由」、この二つを明確かつ端的に語り切れることが、社員エンゲージメントには大きく効いている。
●いくら上司が、自分の背中を見て学べと言っても、それだけでは部下が意気に感じることはない。上司の方が業務に詳しいからといって、部下がそれだけで上司を尊敬するかというと、そんなこともない。昔のように、率先垂範のみの画一的なスタイルで組織を運営していては、部下の士気を高めることができなくなってきたのだ。しかし、そのことに気づけていない部課長が意外と多い。
●会社のトップである経営者が発するビジョンや戦略などのメッセージは、全社員集会やイントラネットなどで直接的に社員に発信されることもあるが、その多くは直属の組織長である中間管理職を通じて社員に届けられる。会社が大きくなるほど、その傾向が強まるものだ。経営からのメッセージを社員が皆同じレベルで、同じ内容として受け止める、そんなことはまず絶対にないと思って良い。社員によって会社に対する関心も異なれば、仕事の内容も目線も異なる。例えば、経営陣がいくら思いを込めて新しい中期経営計画を社内に発信したとしても、ほとんど興味を示さない社員もいれば、計画の趣旨が理解できない社員だって出てくる。これを社員の責任にするわけにはいかない。中間管理職が間に立って経営からのメッセージを咀嚼し、個々の社員の心に届くよう努力する義務がある。社員の知識や理解が不足していれば補強し、一人ひとりの思考様式に沿った形で情報を伝達しなければならない。それなくしては、どんなに経営が向かうべき道を示して社員を動機付けようと試みても、叶わぬ夢になってしまう。中間管理職は、経営陣からのメッセージの媒介者であるのみでなく、社員の要望や期待を一手に受け止める立場にいる。(中略)管理職には部下からさまざまな内容の要望が上がってくる。(中略)人によって表現の仕方は違えども、社員だれしもが職業人として何らかの期待を持っているものだ。管理職であれば、それを陰に陽に理解する努力も一方で怠ってはならない。
●会社が社員に期待し求めること、社員が希求することは、思うようには符合してくれないということだ。双方の期待が上手く噛み合わなければ、社員が幸せを感じることはなく、社員のエンゲージメントは惨憺たるありさまとなる。そんなことがあってはいけないので、中間管理職の出番となる。管理職は、会社からの期待と社員からの期待のいわば接合点にいる。双方の期待を汲み取って大きな齟齬が出ないように擦り合わせていくという高度な技術が求められるのだ。(略)昔も今も、会社と社員の接点に位置する中間管理職の役割は変わらない。しかし、現在ほど中間管理職の存在価値が問われた時代はなかったはずだ。裏を返せば、それだけ中間管理職のマネジメント力の多寡が、会社の浮沈を左右するようになったからだろう。
●各社で挙がってきている中間管理職に関係する項目を見ると、「①組織のビジョンや戦略的決定についての説明と共有」「②キャリア開発や能力開発の指導」「③仕事に対するフィードバック」「④情緒的なケア」に類型することができる。この四つの類型について上手に出来ている中間管理職をイメージしてみると、世間的に良い上司と言われている人物像にかなり近似している。
●期待の擦り合わせという視点から見ると、社員エンゲージメントを高める上で管理職の調整機能が鍵となるのは、①と②だといえる。
●要するにビジョンや戦略に触れる頻度の多さと、自分の業務との関連性の強さによって、それらに対する感度が決まってくるのである。何もしなければ、頻度と関連性ともに低い社員が4必ず出てきて、そうした社員は会社が伝えたいメッセージを十分に受け止めることができず、エンゲージメントも下がってしまう。それを阻止することができるのは、多くの社員と接点を持つ中間管理職をおいて他にいない。会社のビジョンや戦略について部下に語る頻度を増やすのは、意識さえすればそれほど難しいことではない。
●知識格差と嗜好性(あるいは動機付くポイント)における個人差が、会社のビジョン、戦略決定のような抽象度は高いものに対して、社員が興味の持つ内容の違いを生む。そうだとすると、それらを社員の琴線に触れる形で届けることができるのは誰かといえば、やはり中間管理職しかいない。
●3種の動機(「達成動機」「親和動機」「パワー動機」)のうちで自分は何が強くて何が弱いのかを知っておけば、どんな仕事であれば楽しめるか、どんな仕事で気持ちが萎えてしまうかを、かなりの確度で予測することができる。逆もまた然りで、仕事を与える側の視点に立てば、社員にどんな仕事を与えればモチベーションが上がり、成果を上げるために活き活きと働いてくれるかを見定めることができる。
●社員のモチベーションを喚起しようと思うと、動機種別の強弱に応じて仕事の与え方を変えていかねばならない。仕事の形を個々の動機に合ったものへときめ細やかに整えて、公式な形で与えることができるのは、社員の最も身近に位置している中間管理職ならではの特権だ。続きを読む投稿日:2022.03.06
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