信長
小室直樹(著)
/ビジネス社
作品情報
織田信長の「楽市楽座」は、流通システムの飛躍的拡大のために絶大な威力を発揮した。流通システムが発達し自由競争市場が成立するに連れ、独占資本下でも自由市場の方が儲けが大きいと感ずるようになる。すると「独占資本家」も次第に「楽市楽座」を支持するようになった。そして日本は全く別の国に生まれ変わった。本書では、桶狭間の役、本能寺の変での信長と兵の行動を分析することで、信長の世界史的意味を示した。
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この作品のレビュー
平均 3.5 (8件のレビュー)
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このレビューはネタバレを含みます
【紹介】
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信長なくして近代なし。「天下布武」を目指す信長の行動様式には伝統主義のしがらみを刷新し、日本近代化のために目的合理の精神を日本に植え付けようとする世界史上の役割、すなわち世界精神がみられた。古今東西の古典を参照し、比叡山焼き討ち、楽市楽座、桶狭間の戦い、兵農分離、本能寺の変を、小室氏独自の社会学的視点から読み直すことで、読者は全く新しい信長解釈に瞠目させられるだろう。
【評価】
レビュワーは歴史に詳しくもなく、信長についても恥ずかしながら一般的知識しかなく、いやそもそも歴史学という学問自体に明るくない。本書で参照されている徳富蘇峰の『近世日本国民史』、参謀本部編『大日本戦史』や太田牛一の『信長公記』も読んだ事はない。従って本書をその歴史解釈を軸に評価する事は出来ない。ただ、著者小室先生の主張は然もありなんと、大変面白く読む事が出来た。
本書は歴史上、論争的な問題をも扱っている。例えば、本能寺の変直前の明智光秀が腹心に信長への謀反を打ち明ける会談において。歴史家によって若干の食い違いがある事に触れつつ、歴史的な細目の穿鑿より行動様式の分析こそが大事であるとしているからだ(p82)。従って、本書の視点は歴史を社会学的に再構成されたものとして読まれるべきだろう。他にも、桶狭間の戦いに見る、善照寺から中島砦に向かった信長の常軌を逸した行動が論争的であるという。
小室先生は織田信長を世界史のなかで位置づけ、近代化をなすべく日本に遣わされた存在と主張する。あくまで大事なのは、信長本人ではなく信長のやろうとしたことであるとの立場から、信長の政策が近代化の端緒を開いたとして高く評価する。歴史家であればいずれの政策も不十分であったと解すであろう兵農分離や楽市楽座などをいかに革新的政策で近代化のために不可欠であったかを分かり易く示している。小室先生独自の解釈を交え、学際的に読み解く姿勢は、学者が陥り易い門閥、学閥の壁を突き破ろうとする生き様にいたく感銘を受ける。
<以下ネタばれ>
例えば、兵農分離は当時完成しつつあった農民兵と大名との「農民共同体」を壊し、大名や武士のの権力基盤を農民から切り離すのに役立った。これは幕藩体制下でにみられた「お国替え」のように諸大名を官僚化することに繋がり、引いては廃藩置県を比較的スムーズに実行し得る為に不可欠であった。また、この兵農分離によって信長は伝統主義(伝統的共同体)から除かれた無頼漢などから人材抜擢、傭兵部隊を作り上げた。彼ら傭兵はある種、英国の囲い込み政策時における労働者のごとく、近代的なエトスを以て、桶狭間の戦いで活躍した。
その桶狭間の戦いは、筆者によると通説の「迂回奇襲説」は間違いで、強襲と解釈するべきだという—歴史家や軍人は『信長公記』の突飛で説明の付かない信長の行動についての記述を意図的に論理的に説明出来るように曲げていると主張する。そして、運命を僕にした奇蹟だという。
桶狭間の戦いは「分捕なすべからず。打捨てになすべし。」(『信長公記』)にみるように、今川義元の頸を取る事だけを目的した戦であり、前近代的な略奪、強奪という「私闘の積み重ね」としての戦闘からの画期的転換であった。「軍に勝ちぬれば、此の場へ乗りたる者は、家の面目、末代の高名たるべし。ただ励むべし」(『信長公記』)を取り上げ、筆者は桶狭間の戦を、戦争における各自の役割を徹頭徹尾重視した近代戦争の萌芽的戦いと解し、信長をナポレオンやモルトケと並べる。
さらに信長は死の間際まで世界精神としての使命を全うした。本能寺の変は、戦国「武士道」を抽象化、絶対化した。「旧主人に仕えた如き忠義を以て新主人に仕える」を恥としない浮気な行動様式であった戦国「武士道」が絶対的忠誠にまで高められた。社会的階級の違いから来る差別規範を越え—すなわち腹心から馬夫まで—主君のために玉砕する勤王の精神にまで高めた出来事であった。また信長の死に様は信長のカリスマ性をもっとも保存する形の死であり、秀吉に意志を継ぐ世界史上の重要な事件であったとする。投稿日:2011.12.25
小室直樹の信長論。
戦国時代の武士は強い武将に着く風見鶏だったが、信長の家臣団は、信長という空気に支配され忠誠を誓った家臣団だった。これは日本軍に繋がる。
桶狭間は奇襲ではなく、正面切っての強襲であっ…た。奇襲、ミラクルに頼ることがなく、合理的戦争方法に徹した。
信長は傭兵制度を初めて導入した。
なるほど。信長は日本資本主義の元祖であったというのが本書の中心の論。小室本はいろいろ読んでますが、本書も論が明快で読み応えあり。続きを読む投稿日:2021.03.07
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