新しい時代のお金の教科書
山口揚平(著)
/ちくまプリマー新書
作品情報
お金はこれからどうなるのか? お金の歴史とその仕組み、そして変化、未来まで、スッキリ解説します! ▲お金の起源は、物々交換ではなく動かせない石だった?/▲通貨の価値は信用×汎用というシンプルな方程式で測れる/▲国家、技術、経済、社会の変化が、お金を変化させる/▲新しい時代、お金についての10の習慣を意識する
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商品情報
- シリーズ
- 新しい時代のお金の教科書
- 著者
- 山口揚平
- 出版社
- 筑摩書房
- 掲載誌・レーベル
- ちくまプリマー新書
- 書籍発売日
- 2017.12.10
- Reader Store発売日
- 2017.12.10
- ファイルサイズ
- 6.7MB
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この作品のレビュー
平均 3.7 (32件のレビュー)
-
2017年12月に発行されたこの本。
私が読んだ2022年には、2017年よりも、だいぶ世の中、経済の動きが変わってしまった気がする。
それでも、今のところ仮想通貨バブルは継続している。著者が話す仮想…通貨の終焉はそのうちに訪れるのだろうか?
この本は、いわゆる「貯金だけじゃだめ、積立NISAで投信買いなさい」みたいな指南本ではない。
お金の歴史と、今後についての筆者の見解が書かれた本。興味深く読んだ。
著者は、将来的にお金はなくなり、信用がお金に取って代わる…と言う。
そうなると、税金はどうなるんだろう?お金以外で取り立てる事が可能なんだろうか?という疑問が湧いた。
もしかしたら、国家(税金を徴収する者)自体が破綻すると言う意味が込められているのだろうか。
「信用で飯を食う」というと、昔ながらのお中元お歳暮などの贈り物文化を思い出した。世話になってる、頼りにしてる、という意味合いで贈られるものは、その人の信用を表している気がする。
若い世代、特に都会暮らしの人の間では、お中元お歳暮文化は浸透してない。若い世代は、確かに衣服にお金をかけず、IKEAのコットントート持って、ユニクロでも良いという人も多いかもしれない。でも逆にお金かけたいところにお金をかける(推し活とか)。それに、若い人全員がカジュアルを好んでいるのではなく、若い人の中にも、良いスーツ着て良い車に乗ってこそ得られる羨望を求めてる、つまり、お金を必要としている人だって一定数存在する。
逆に、年配者や地方暮らしの人は、仕事で得た信用で次の仕事のお誘いがあったり、口コミやネットワークで広がっていく世界を生きていると思う。年配者や地方が時代の最先端とは思わないけど、筆者が言うところの将来の世界というのは、都会の若者より、地方の年配者の方が、当てはまっているような、信用が物を言う世界を生きているとも言えるのではないか?と思ったりしたよ。
将来=時代の最先端、と思いがちだけど、意外にも将来は、今で言う年配者や地方暮らしの文化的なところにシフトしていくのかな。
私は、お金!お金!の暮らしはしたくない。生きてくのに支障がなければ、余分なお金はなくて良いかなと思ってる。身軽に生きていたいのだ。
他方で、同級生の中では、タワマンに住んで外車乗って…をステータスに置いてる人もいる。
後者にとっての「信用」とは、つまり「お金」でしかないと思うのだ。
何がいいたいのかというと、「信用」とは、多様な意味を持つ。お金によって作られる信用もあるし、お金があるから得られる信用もある。
そういう多様な価値基準の中で、一律の価値をもつもの、一律の信用をもつものとして誕生したのが「お金」だ。
「信用」とは一義的なものではない以上、信用がお金に取って代わり、お金がなくなる、というのは、現実的に想像ができないな…と私は思った。
他方で、将来的にお金がなくなれば良いという筆者の考え方は、一定程度支持ができる。
お金がなくなれば、お金をめぐる様々な犯罪(振り込め詐欺とか、給付金詐欺とか)、そんなことにアイデアを出して頭使うなら、もっと社会貢献しようよって思うような犯罪が減るのではないか、と思うからだ。
そう考えると、本当に「お金」って罪な存在ですね。続きを読む投稿日:2022.06.19
本書はお金の歴史を振り返るところから始まる。
驚いたのは、近年の研究ではお金の起源が、物々交換ではなく、信用と記帳のシステムであったと説明されているとのことだ。
(なんだが、「今は鎌倉幕府成立は119…2年じゃないんだってね」と言われた気分。)
ヤップ島の巨石貨幣フェイは、持ち運ぶのではなく、そこに取引したものを刻み込んで記帳した。
これが貨幣の起源の一つだというのだ。
つまり、ビットコインのような形態が、すでに古代社会にあったということになる。
お金の「信用」を保証するのが、君主から国家に移り、やがて企業や個人になっていく。
このあたりは経済がグローバル化し、国家がすでにそれを統制できなくなっている現状、ビットコインをはじめとする仮想通貨が出てきた流れと符合する。
この十数年来、私たちが目にしてきたものだ。
しかし、筆者は、仮想通貨も過渡期の形態で、いずれはなくなると考えている。
その代わりになるのは、「時間通貨」なるものだという。
21世紀になり、人々は物質にではなく、承認に価値をおくようになった。
モノからコトへ、財の形態が変わり、人々が時間を資源として経済活動をするようになる、というのだ。
そして、記帳技術の発展で、やりとりにお金が不要になり、人々が求めるものでもある信用をツールに取引するようになる、ということらしい。
が、このあたりからが、若干飲み込みにくい。
こちらの頭が、現状のシステムに凝り固まっているせいもあるのだろうが。
筆者の、資本主義が貨幣の力で世の中のあらゆるものを文脈から切り離し、均質化したことへの批判意識は共感できる。
そのアンチテーゼとして、すべての人に与えられている時間を価値とすると考えたいのも、受け入れてみたい気もする。
(ただ、筆者の言うように時間がすべての人に平等に与えられているとは思えない。)
2017年の刊行時に本書を読んだなら、もっと共感したかもしれない。
でも、その後、パンデミックの世の中になった。
そして、ウクライナ侵攻を見ていると、人間の生存に物質が必要で、それを軽視することはできないことを再確認させられる。
筆者に言わせれば、それすら、一時的な揺り戻しなのか?
刑務所でタバコが通貨となるように、今のウクライナでも人々のつながりで経済が動いている、のか?
理想的な形で時間経済を享受できる人と、資本主義経済の世界に取り残される人に二極化していくのではないか、と考えるのはあまりにも悲観的すぎるのだろうか。続きを読む投稿日:2022.04.17
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