人魚に嘘はつけない
半田畔(著)
,武梨えり(イラスト)
/一迅社
作品情報
海町、高校二年生、夏。漁師の親父が溺れている「何か」を助けて行方不明になったあの日、浜辺にひとりの少女が打ち上げられた。太ももから一体化した足。黒光りするウロコ。銀色の尾――それは地上に憧れ、溺れた人魚の少女だった。走れない陸上部の幼馴染、シオ。波にのれないサーファーの親友、ウミ。そして、親父の死を受け入れられない、おれ。海に帰れなくなった人魚・ユーユとの出会いが、あの忘れられない夏の始まりだった。『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』の七月隆文氏が激賞した、感動の青春ストーリー。
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この作品のレビュー
平均 2.5 (2件のレビュー)
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一迅社文庫大賞審査員特別賞受賞作
漁師をしていた父が、沖で誰かを助けようとして遭難し、助けられた(らしい)人魚の少女が浜に打ち上げられているのを主人公能の高校生潮月が拾って家に連れ帰る。
人魚ユーユ…は陸上では人間の姿になり、日本語が話せ、中途半端に陸上世界の知識を持っていて、匂いで人が嘘をついているかを見分け(嗅ぎ分け?)られるのだが、口が悪く、潮月とけんかすると腕から無制限にクラゲを出してぶつける特技もある。
ユーユは潮月の幼なじみや友人とすんなり打ち解け、夏の間楽しく過ごすのだが、潮月たちは、ユーユによって自分や仲間の「本当の気持ち」に気づかされて成長し、やがて自分の未来を選び取っていく。
ふざけ半分のような書きっぷりだが、純粋な青春小説としては成功している。続きを読む投稿日:2017.12.01
そろそろ慣れた。
設定はいいものの、それを活かしきれていないというよくあるタイプの作品。
どの登場人物も掘り下げが浅い。
主人公のアサは父親の死を気にしなさすぎ。
ユーユが忘れさせてくれていたって…ことなのだと思うが、もう少しその描写があっていいと思う。
シオとウミの抱えている悩みがどちらもスポーツでの挫折なのでエピソードが似すぎ。
それにそもそもの悩みが定番すぎてひねりがない。
そしてこういう問題の解決には、ユーユの人間とは違う視点が役に立ったりするものだが、あまりユーユの存在が必要なさそうな解決を見せる。
その方法もずいぶんあっさりしている。
そしてこの二人のエピソードでは、それぞれの一人称視点も描かれて物語が進むが、一人称視点でこれしかキャラクターの内面を描くことができないのははっきり言って実力不足。
そもそも二人のエピソードは人魚の物語上あまり重要性が高くないので、二人の視点をバッサリ削って、アサの視点から問題の解決を目指せばよかった。
ユーユは人魚としてのアイデンティティがあまり伝わってこなかった。
シオとウミの一人称視点を書くくらいなら、ユーユの一人称視点が読みたかった。
それに「忘れない夏」にするには、お祭りとか夏のイベントがあっさりしすぎ。
それどころか、回想で花火大会とかスイカ割りをしたと書いてあるが、そのエピソードの描写が全くない。
これでは全く感情移入できない。
「楽しかった夏の思い出」の描写をしないのはさすがにセンスがない。
ラストの船のシーンはよかった。
せっかくのファンタジーなのだから、これくらいロマンチックでいい。
ただ、別れシーンに関しては、もっと盛り上げるべきだとも、あっさりしているからいいのだとも思う。
しかし、クラゲの正体を知った瞬間にアサが走り出して台無し。
少しくらい別れの余韻に浸ってほしい。
エピローグもちょっと節操ないというか陳腐。
なんでもハッピーエンドにすればいいってものじゃない。
蛇足。
「人魚に嘘はつけない」のタイトル回収もてっきり泣き所で来ると思っていたのに、使いどころを間違っている。
文章はたまに日本語がおかしい。
誤りではないのだが、わかりづらいというかリズム感が悪いというか。
人魚の髪の描写はよかった。
繰り返しが多く、紙以外の描写は大したことなかったが、「宝石を溶かして塗ったよう」という表現は奇麗だと思った。
登場人物たちの会話は、おそらく「軽快なやり取り」を狙っているのだと思うが、ただの暴言の応酬でちっともおもしろくない。続きを読む投稿日:2020.10.07
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