古代史おさらい帖 ──考古学・古代学課題ノート
森浩一(著)
/ちくま学芸文庫
作品情報
考古学的な知見と、『日本書紀』『古事記』などの文献資料を織り合わせてはじめて、古代の真の姿が浮かび上がる。この考えから「古代学」を提唱する学界の重鎮が、古代の読み解き方を根本から問い直し、「土地」「年代」「人」の見方をめぐって、具体的かつ革新的な方策を提案する。「土地」の見方では変貌する河内と摂津から国生み神話の鍵などを考察。「年代」の見方では銅鏡の「年代」や「暦」を通して、古代人が時間をどう記述したかを探る。「人」の見方では、倭人=「呉の太伯」の後裔伝承の重要性などを提議。未解明の謎の数々や、古の人びとの心に想いを馳せながら、古代史を総ざらいで生きる入門書。
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この作品のレビュー
平均 3.3 (3件のレビュー)
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森浩一氏は私の様に市井において考古学を始めた者には、非常に親しい学者先生である。とは言っても、一度も会ったことはない。会わずに先年お亡くなりになった。しかし、いわゆる考古学の一般書は非常に多く、少しは…考古学に興味を持った人間は一冊や二冊はぶち当たることになる。
文献史学にも造詣が深くて、そちらから古代史にやって来た人とも交流があり、一言でいえば間口が広い。それでいて、下手な歴史学者がよくやる様な古事記の記述を理もなく弥生時代に当てはめるようなことはしない。文献史学と考古学を結ぶ貴重な学者だった。
また、「考古学は地域に勇気を与える」という信念の元に地域の学問を興して広めた。その功績は大きい。
その御大が「ぼくの古代史関係最後になるだろう書物」という自覚でかいたのが、コレである。言い残したことは、ビデオで「森浩一の古代」全12巻として出ているらしいが、書物としてはコレになるらしい。
かなり言いたい放題を言っている感はあるが、最後と思えば許せる。
私としては、邪馬台国九州説には与しないが、狗奴国と熊襲との連続性の指摘には考える処があった。また、古事記を編纂した太安万侶のせっかく出土した墓誌が被葬者の住所、位と勲功、姓名、卒した日、葬った日などだけしかかいていない素っ気ない文章だという処に「史家」としてのこの上ない気品を見た気がして、ちょっと気になって来た。
2014年8月9日読了続きを読む投稿日:2014.08.16
子供の頃から考古学が好きで、若い時分には森先生が編集された「日本の古代」シリーズを読み漁ったもの。
暦などの時間の記述や文字が日本に定着していった過程など一歩一歩進めていく記述。景初三年とあるだけで…、卑弥呼の鏡などと騒ぐ輩と対局にある。
引用。
「倭人伝」に一度だけみえる「邪馬台国」は晋に遣使した女王台与(トヨ)の国であり、ヤマトでの大型前方古墳の出現からみても、その頃にはヤマトの国造りの基礎は終わっていたとみている。
近畿圏の国造りと邪馬台国は別の事象と考えれば良いだけなのである。倭国から魏や晋への航路を考えたら邪馬台国は九州であろうし、狗奴国と交戦状態にあったことを考えれば更に確かだろう。森先生の主題はそんな自明のことに無い。そもそも邪馬台国は幾つかの女王国の一つで、その時点で卑弥呼は既に亡くなった過去の王でしかない。むしろ、クマソについて多くページを割かれている。ガラス製の玉璧から東シナ海横断ルートでの江南との結びつきなど認識を改めさせられた。中国の学者と語り、また中央と違う地方の歴史を明らかにしようとする姿勢。学者や歴史家も大古墳や銅鏡の数でそれを大勢力と誤解しているという。先生は本当のプロの学者だと思う。
河内王朝の土木工事で土地が生る。今でも西成、東成の名が残る。巨大古墳を築くだけじゃなかった。大阪には古代の痕跡はあまり無いと思っていたので、面白かった。(大阪に単身赴任中の身なので。)
高津宮ってどこだろう。
今日もNHKのアナウンサーが「卑弥呼の墓と云われる箸墓古墳と同時代の‥」などと喋ってる。邪馬台国が近畿に無いと沽券に関わると思うのか、強烈なプロパガンダがあって、こういう結果が齎された。
そして今、書店の古代史の棚を見ると、殆どが思い付きと妄想のトンデモ本ばかり。
森先生が逝去されて、一体、誰を頼って本を読めばよいのだろうか。続きを読む投稿日:2015.12.22
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